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ハーレムの子どもはクリスチャン? イスラム教徒?
先週、5年生の息子が学校からコロンビア大学の見学に行った際、保護者ボランティアとして同行した。

コロンビア大学には来訪者のツアーガイドを担当する学生がいる。私たちのグループには音楽専攻で、卒業後は院に進んで音楽で博士号を取りたいという学生が付いてくれた。彼女に率いられてのキャンパス内ツアーで古くてきれいなチャペルに立ち寄った際、子どもたちの宗教や民族のバラエティを垣間みる瞬間があった。

※ニューヨーク市内の小学校のほとんどは5年生まで。息子たちは6月に卒業して9月から中学生になる。入学時期と誕生月の切り方が日本とは異なり、6月時点では5年生は10歳と11歳が半数ずつ。息子の学校はチャータースクールと呼ばれる半官半民のような学校なので留年があり、12歳の子どもも少し混じっている。



コロンビア大学のブレスレット。同大学の多様性を表している。



チャペルの前に立った時、プエルトリコ系の少年S君が「カトリック教会だね」と言った。実のところ、そのチャペルは教派を問わない"Nondenominational"と呼ばれるものだったけれど、内装は確かにカトリック風だった。息子の学校の生徒の大半は黒人。信仰の篤さは家庭や個々人によってそれぞれなれど、キリスト教プロテスタントが多い。ただしプエルトリコ系などラティーノの生徒も3割くらいいて、彼らの多くはキリスト教カトリック。以前、S君のお父さんに「ブロンクスの教会の聖歌隊に参加しているから、一度聴きに来て」と言われたことがある。

保護者ボランティアは生徒5人ずつの監視役になっていて、私の担当する生徒の一人、H君がチャペルの中に入らず、入り口脇に立っていた。「中に入らないの?」と声を掛けたら、彼はこう答えた。

「居心地が良くない。ボクはイスラム教徒だから」

「そっか。じゃ、入らなくていいけど、この音楽はどう?」と聞いてみた。ちょうど荘厳なオルガンの演奏が始まっていたから。すると好奇心が湧いたらしく、H君は中に入って演奏を聴きながら、高いドーム状の天井を見上げていた。

クラスには他にもイスラム教徒の生徒が何人かいる。西アフリカ諸国からの移民二世の子どもたちで、スカーフを被っている女の子、クフィという帽子を被っている男の子もいる。その子たちは特に気にする風でもなく、全員がチャペルの中にいた。

クフィを被っているJ君も私のグループだったので、チャペルから出て来た時、入り口のポスターを指しながら、「このチャペルはいろんな人が使ってるんだね」と声を掛けてみた。ポスターには多彩な人種や民族の人が10人近く写っていた。そのうちの1人がターバンを巻いたシーク教徒の男性で、J君はなぜか自分の双子の弟に「見て、この人、ほら!」と見せていた。一緒にいた西アフリカ系の女の子は、やはりポスターに写っている黒人女性のDialloという名前を見て、「アフリカの名前だ!」と嬉しそうに指差した。

ハーレムの住人の多数派はアメリカ生まれのキリスト教プロテスタントの黒人。400年前に奴隷としてアフリカから連れて来られた人々の子孫だ。けれど今のハーレムは西アフリカからの移民、カリブ海からの移民、カトリック教徒、イスラム教徒、スペイン語話者、最近では中東系やアジア系も含め、かなりの多様性がある。彼らマイノリティの子どもたちは、自分がハーレムというマイノリティ・コミュニティの中でさらにマイノリティであることを認識している。だから自分と同じグループに属する他者を見ると親近感を持つ。

アメリカの複雑な構造。人種的、民族的、宗教的マイノリティ社会の中に存在する、さらなるマイノリティたち。



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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 13:05
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Poor Door 〜 プアとリッチは別のドア


日本でも報道されたらしい、ニューヨークのリッチとプアで入り口を分けたマンション。新築のマンションに意図的に高所得者と低所得者を入居させ、ただし入り口は別、館内のジムなども高所得者しか使えないという処置に、非難の声が上がったのだ。


こちらでは低所得者用の入り口が「Poor Door」と呼ばれ、揶揄されている。本来の名称は「Affordable Entrance」(手頃な価格の入り口)と言うらしいからなかなか笑えたが、Poor Doorを使う当人たちにはシャレになっていない。入り口はひとつにするべきである。






その理由の前に背景説明を。このマンションはニューヨーク市と民間開発業者の共同事業。開発業者側には低所得者を入れることで税制上の優遇が、市側には低所得者への住宅供給というメリットがある。ニューヨーク市、特にハーレムやブロンクス、ブルックリンの低所得者地区(=マイノリティ地区)では異なる所得層を同じ賃貸アパートに混ぜて入居させることを何年も前から進めている。もっとも、場所が場所だけに今回のPoor Doorマンションのように高所得者は含まれておらず、超低所得と低所得の2階層、物件によっては中流も含めた3階層を混ぜる。入居応募の時点でそれぞれ年収枠を定め、家賃を変える。そうしないとゲトーとはいえ新築または改装物件なので家賃が上がり、低所得者は住めない。


所得階層を意図的に混ぜるのは、低所得者専用物件には弊害があるからだ。戦後に大量に作られた通称プロジェクトと呼ばれる公団アパートの大失敗をみれば分かる。低所得者だけを集めると、そこは犯罪を筆頭に貧困による弊害が次々と積み重なる場所となり、改善することがほとんど無理となる。なぜなら貧困のライフスタイルがそこでの基準となり、貧困のメンタリティが定着する。子どもたちはそのライフスタイルとメンタリティだけを見て育ち、中流以上の生活を知る機会のないまま、自分はプアだという絶対的な自覚を持って大人になる。その意識を払拭するのはとても難しい。


今回のPoor Doorがダメなのは、そこが理由だ。ちょっと想像してみると分かる。低所得者である自分が、本来なら有り得ないきれいな新築物件に住めるとあって応募し、当たって入居してみると、「あなたは貧乏だから、お金持ちとは別の入り口を使ってください」と言われる。マンションの入り口。毎日毎日一日に少なくとも2度、人によっては一生使う入り口。そこで「貧乏人」とカテゴライズされ、目視できる形で他人からも認識され、自身も再確認させられ続けるのだ。最悪のケースはやはり子どもだ。「どうしてあの入り口から入れないの? あの子は使ってるよ」 この問いに答えられる大人はいないだろう。これが人間の自尊心に影響しないわけはない。開発業者と市行政は1960年代まで南部にあった「白人専用ドア」「黒人専用ドア」が今はもう廃止されていることを忘れたのだろうか。


先日、ミズーリ州のファーガソンで起った暴動も、18歳の黒人少年マイケル・ブラウンが白人警官に射殺されたことで起ったわけだが、背景には長年に亘る白人警官から黒人低所得住人たちへの執拗な嫌がらせと抑圧があった。住人の積み重なったフラストレーションが射殺をきっかけに爆発したのだった。今のニューヨークでPoor Doorが理由で暴動が起るとはもちろん思わない。けれど優位者から下位者への同根のメンタリティがそこに見て取れる。Poor Doorは低所得マイノリティを静かに、しかし執拗に叩き続けるハンマーに成り得るのである。


※アメリカでは物件の高級度に関係なく、賃貸はアパートメント、分譲はコンドと言いますが、この記事では日本流に表記しました


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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 20:15
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カンター共和党院内総務の敗北〜ヒスパニック、黒人、ユダヤ系

昨日のヴァージニア州下院議員選の共和党予備選で、党ナンバー2で院内総務のエリック・カンター下院議員が、まさかの敗北を帰した。勝ったのはティーパーティー(茶会党)のデイヴィッド・ブラット候補。公職には就いたことのない、経済学の教授だ。メディアも共和党も、そして民主党も上を下への大騒ぎとなった。明けて今日も騒ぎは続き、つい先ほど、カンター議員が院内総務のポジションを辞すとの速報があった。



カンター敗北の理由はメディアも分析できておらず、諸説挙げながらも正直に「よく分からない」としている。



大手メディアに分からないことが私ごときに分かるわけもないのだけれど、それでも言えるのは、「何事につけ、アメリカは人種問題を抜きには語れない」という部分。



カンター議員はゴリゴリの保守派。中絶絶対反対、同性婚絶対反対、オバマケア絶対反対、生活保護削減etc.,…ヴァージニア州の共和党有権者はこれでも満足できず、超保守候補を選んだ。争点となったのは移民政策らしい。ニューヨークにいるとヴァージニアでの予備選の詳しい内容などあまり分からないのだが、ブラット候補はカンター議員が移民法改革を進めていたことを激しく攻撃したとのこと。



現在、米国内に不法滞在者は推定1100万人いるとされ、ブッシュ時代からずっと放置されてきた。オバマ大統領も景気回復やイラク戦争・アフガン戦争で手一杯。やっと手を付け始めても共和党からの反撃に遭い、なかなか進めることが出来ずにいる。それでも2年ほど前、「子どもの頃、親に連れられ不法に国境を越えてきた若者たち」に罪は無いと、彼らにまず滞在許可を出す策を始めた。とはいえその策は不完全で、カンター議員は改革法を同じ路線を進めてきた。1100万人もの不法滞在者を放置し続けるのは国として無理があり過ぎるし、全員を原則どおり本国へ強制送還するのは業量的、経済的な理由で不可能。だから本音はアンチ移民であっても何かしらの手を打たなければならないし、政治家としては増え続けるヒスパニック票を確保する必要もある。



ところが共和党の中でも極右のグループは、とにもかくにも不法移民を受け入れたがらない。この辺り、理屈ではなく、もう本能的に他者、部外者、マイノリティの自国への流入を恐れているように見える。



共和党の一般有権者がここまで移民、マイノリティを嫌う理由の根底には、実はオバマ大統領の存在がある。自国の総領が「黒人」であることを、6年経ってもまだ受け入れられない人々の煮えたぎる怒り。「I want my country back.」私の国を取り戻したい=以前の素晴らしい状態に戻したい この思いが彼らを超保守、極右に寄せている。



そして、カンター議員自身がユダヤ系であることも敗北要因のひとつかもしれない。現在、下院にユダヤ系議員はカンターのみ。ナンバー2の院内総務まで上り詰め、次はユダヤ系初の下院議長になると目されていた。私自身は、カンターは将来は大統領選出馬も視野に入れていたのではないかと思う。もし当選すれば、もちろん史上初のユダヤ系大統領だ。逆に言えば、ユダヤ系は各界に優秀な人材を豊富に持ちながら、いまだ政界のトップには立てずに、いや、立たせてもらえずにいる。なんと“黒人に先を越されてしまった”のである。アメリカのアンチ・ユダヤを物語る現象だ。ちなみにカンター議員を打ち負かしたブラット候補は、非常に熱心なクリスチャンである。



ヒスパニック、黒人、ユダヤ系。



カンター議員の敗北は、恐らくもっと多くの要因が複雑に絡み合ってのことだと思う。しかし、そこには人種問題も確実に含まれているのである。







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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 04:59
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黒人はなぜオバマ大統領を支持し続けるのか〜あれから6年。あれから400年。

オバマ大統領支持率 黒人88% 白人34%
(2014/5/5-11)www.gallup.com


数日前、天気のよい日にハーレムのメインストリート125丁目を歩いた。アダム・クレイトン・パウエルJr.ブールバードとの角に広場があり(昔、マルコムXが街頭演説した場所)、そこを『マイ・プレジデント・イズ・ブラック』を聴きながら歩いた。ヤング・ジージーのオリジナル版ではなく、ジェイ・Zのリミックス版だ。


2008年11月4日。オバマ大統領が初当選した日、この広場にはジャンボトロンが設置され、たくさんの人が詰め掛けていた。夜11時に「オバマ当確」の報が出されると、人々は叫び、踊り、ドラムを叩きながら広場を出てストリートを埋め尽くし、交通をも遮断した。私は自宅で夫とテレビの開票速報を見ていた。当確の瞬間、近所の家々から歓喜の叫びが聞こえた。チャンネルをニューヨークのローカルニュース局に変えると125丁目の喧噪が中継されていて、友人カップルがこれ以上はないほどハッピーな顔で写っていた。


『マイ・プレジデント・イズ・ブラック』のオリジナル版は、ヤング・ジージーのアルバム『リセッション』(=不況)に収録されている。2008年9月2日、リーマン・ショックの2週間前にリリースされた作品だ。大統領選は民主党と共和党の候補がそれぞれオバマとジョン・マケインに決まり、1対1の攻防戦となっていた時期。


オリジナル版のリリックではヤング・ジージーとナズが「オレの大統領はブラック、オレのランボ(ルギーニ)はブルー/札束はライト・グリーン、ジョーダンはライト・グレー」と色で遊ぶと同時に「母ちゃんは家にいねぇし、父ちゃんは今もムショだ」「オレたちはブッシュに強奪されたし」と、黒人社会の変わらない窮状を訴えている。そんな中、史上初の黒人大統領の誕生を夢見ながらも「(大統領選に)勝つとも、負けるとも、引き分けるとも言えないが」と不安を見せ、けれど「おまえはすでにホーミー(仲間)だ、オレたちは祝福するよ」と、すでに胸をいっぱいにしているのである。この純情振りに、なんだか涙が出る。


私が聴いていたジェイ・Zのバージョンはオバマの当選後に書かれている。ジェイも「オレの大統領はブラック」だが、ランボルギーニではなく「オレのメイバックも同じ(ブラック)だ」で、ついでに「札束はダーク・グリーン、ポルシェはライト・グレー」と、スニーカーじゃなくて車をたくさん持ってんだよ、とよく分からない自慢が入っている。それはともかく「で、オレはD.C.に向っている」と大統領就任式参列に続く。「オレの大統領はブラックだが、彼の家は真っ白(ホワイトハウス)だ」


この後もリリックはジェイ・Zらしからぬ開けっぴろげな高揚感に満ちている。


「ヘロー、ミス・アメリカ。ヘイ、美人のお嬢さん(どちらももちろん妻のことである)、
赤白青の旗をオレに向って振ってくれよ、ベイビー
オレがこんなことを言うなんて考えたこともなかった」


もう憚るところなしの、愛国心炸裂だ。アメリカの白人と黒人はどちらもアメリカ人であり、どちらも愛国心は強いが、その種類と表し方に大きな違いがある。けれどここでのジェイは、もうそんなことはどうでもいいのである。それくらい嬉しかったのだ。


ジェイ・Zは黒人史にも触れている。ここはさすがに巧い。


「ローザ・パークスは(バスに)座った。だからキング牧師は歩けた(マーチした)
キング牧師が歩いたから、オバマはrun(立候補)できた
バラク・オバマがrun したから、すべての子どもたちが(空を)飛べるんだ
だからオレは翼を広げる。空でオレに逢えるさ」


Jay-Z My President Is Black (D.C.-mix)

常にクールなジェイ・Zまでが、ここまで手放しで有頂天になったあの瞬間から6年。今やオバマの窮状は大変なものだ。そもそもブッシュからリーマン・ショック、イラク戦争を背負わされての就任。本人はイバラの道を覚悟していた。しかし、想像を絶したのは共和党の「何がなんでも黒人大統領潰し」だった。彼らはバラク・オバマを、一人の人間バラク・オバマとすら認識していない。就いてはいけない地位に何故だか就いてしまった“黒人”であり、是が非でも引き摺り下ろさなければならない“黒人”なのだ。


けれどHey, 黒人たちはオバマの登場を400年も我慢強く待ったのだ。たかだか6年ですべてが上手くいくとは思っていない。オバマが蒔いた種は将来必ず花開き、実を結ぶ。


Barack Obama ran so all the children could fly.
バラク・オバマが大統領になったから、すべての子どもが羽ばたけるんだ。





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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 15:41
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NBA/LAクリッパーズ経営者の黒人差別発言
4月27日、日曜日。LAクリッパーズの選手はゴールデン・ステート・ウォリアーズとの試合において、クリッパーズのロゴの入ったシューティング・シャツをコート中央に脱ぎ捨て、赤いシャツを裏返しに着てチーム・ロゴの無い状態でウォーミングアップを行った。同チームのオーナー、ドン・スターリングの黒人差別発言への無言の抗議だった。スターリングは試合に姿を見せなかった。

(その映像)


ことの発端は、オーナー、ドン・スターリングの恋人であるV・スティヴィアノがマジック・ジョンソンと写真を撮ったこと。それについてのスターリングとスティヴィアノの電話での会話が録音され、公開されたのだ。以下はその内容。


V・スティヴィアノ(右)がインスタグラムにアップしたマジック・ジョンソンとの写真。


スティヴィアノがマジック・ジョンソンと撮った写真をインスタグラムにアップしたことについてスターリングが気分を害し、「黒人と寝てもいいし、家に連れ込んでもいい、何でもやりたいことをやれ。しかし、それを世間に公表するな「彼を私のゲームに連れてくるな」と声を荒げる。スティヴィアノが「私もメキシコ系と黒人のミックス」「あなたのチームのほとんどはアフリカン・アメリカン」だと抗議すると、スターリングは「私が彼らに衣服、食料、車、家を与えた」「誰が試合を開催している。私か?彼らか」と激高。さらに「イスラエルでは黒人は犬のように扱われる」とも。スティヴィアノが「あなたはユダヤ系なのだから、人種差別を理解しているでしょう?」と問うと、「これは差別ではない。バスケットボールの試合に特定の人物と共に来たくないというのは差別ではない」


録音は1時間分あるとされ、うち9分を聞いた限り、スティヴィアノがスターリングの人種観を執拗に非難している。スターリングは自分は人種差別主義者ではなく、世間には人種による線引きや住み分けがあり(スターリングはそれを“文化”と呼んでいる)、スティヴィアノがその文化を理解していないとレクチャー。スターリングへの非難を止めないスティヴィアノに対し、議論に疲れたスターリングが「言い合いはもう止めよう」と懇願する瞬間もあるが、やがて憤り、上記の人種差別発言を繰り出している。


この発言に対し、多数のNBA選手、元選手、その他の黒人セレブ、一般のバスケ・ファンが抗議のコメントを発している。


マイケル・ジョーダン
「NBAチームのオーナーとして、同じチーム・オーナーのこのように不快かつ侮辱的な視点に、明らかな嫌悪を感じている。元選手としては、完全に怒りを感じている。スターリング氏が発したとされるレイシズムと憎悪はNBA、他のどんな場所に於いてもあってはならない」


マジック・ジョンソン(抜粋、意訳)
「スターリングとは個人的な交流もあり、それほど親しいわけではないが友情もあったと思っていた。私は彼を尊敬していたし、彼も私に敬意を払っていると思っていたが、そうではなかった。スターリングの発言は私を個人的に傷付けたというより、全アフリカン・アメリカンを傷付けるものだ。正面切って自分は人種差別主義者だ、お前が嫌いだと言われれば、それはそれで尊敬もするが、笑顔を見せておきながら」


マジック・ジョンソンはインタビューで上記を、もの静かに淡々と語ったが、その心情は察して余有る。その世界でもっとも優れた業績を残した人物の一人であっても、黒人であるという理由で、やはりこうした扱いを受けるのだ。しかも、全選手の大方を黒人が占める業界に於いての話だ。オーナーが黒人選手をキャッシュ・カウ(金蔓)としか看做していないことの証明だ。マジック・ジョンソンは、スターリングはチームを売却べきだとも語っている。


さらにオバマ大統領まで、訪問先のマレーシアでの首相との共同記者会見でこの件について記者より質問を受け、以下のように厳しく応えている。


「無知な人間が自らの無知さを喧伝する時、こちらは何もする必要はない。ただ、喋らせるだけだ」「アメリカ合衆国は人種、奴隷制、人種隔離の歴史と闘い続ける。差別の傷跡はまだそこにある」


今回の件、スターリングとスティヴィアノの痴話ゲンカの成れの果てという見方もされている。スターリングがスティヴィアノにかなりの資産を使い、または与え、それを巡ってスターリングの妻がスティヴィアノを訴えるという背景があるからだ。ちなみにスターリングは過去にも人種差別行為によって物議を醸し、訴訟も起こされている人物だ。


NBAファンは次のLAクリッパーズの試合の観戦ボイコットを訴えている。NBAは件の捜査を行うことを表明した。


追記:
4月29日、NBAコミッショナーはドン・スターリングのNBA永久追放と250万ドルの罰金を発表。オーナーにチームの売却を強制する法的権限はないが、売却を働きかけるとのこと。






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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 22:43
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オバマ大統領来日:人種差別コラージュ
オバマ大統領が日本を訪れる。アジア歴訪の初日23日から二泊三日。22日午後はまだ西海岸ワシントン州にいて、40人以上が亡くなった大規模な地滑り災害の追悼および被災者への励ましを行っている。おそらくそれが済み次第、エアフォース・ワンに飛び乗るのだろう。


さて、今回の来日の重要な対談項目はTPPであり、日本のネットにはすでにオバマ大統領の来日を牽制するものが見られる。日本にとって大きな懸案事項であり、これは当然のこと。気になったのは、政策批判と人種差別の混同だ。


naverまとめ
#皆でオバマ来日に備えようぜの反米クラスタが怖すぎてオバマが帰るレベル



上記にアップされている写真やイラストの多くは戦艦隊やプーチン・ロシア大統領、またはバズーカ砲を抱えたシュワルツネッガーなどで、要はオバマ大統領を威嚇する他愛のないジョーク。それなりに楽しめる。



ところが何枚かKKK(クー・クラックス・クラン)の写真が含まれている。まとめのタイトルに添えられたアイコンもKKKのメンバーに囲まれ、なぜかにこやかにワイングラスを掲げるアフロヘアの黒人青年だ。



これらの写真、アップした当人はどれほどKKKと、アメリカでのKKKのポジションを理解しているのかと訝う。日本でも映画などによって「白い頭巾を被った黒人差別主義者のグループ」と知られてはいるが、そこ止まりではないだろうか。こうした写真を黒人にあえて見せる行為の意味するところは分かっていないように感じる。もちろん、オバマ大統領自身は日本のサイトを見ることなど無いにしても。



夜中にこんな集団がいきなり自宅を襲い、自分と家族を脅し、殺す。
「でも、こんなのもうやってないでしょ、昔の話でしょ」
確かにこうした衣装と道具立てで黒人を襲うことはもうない(と思う)。しかし、KKKは今も存在するし、トレイヴォン・マーティンの件を持ち出すまでもなく、黒人は今も黒人であるというだけの理由で殺される可能性のある国なのだ。

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ホワイトハウスは公表しないが、オバマ大統領と家族が人種差別主義者からどれほどの脅迫を受けているかは想像するまでもない。一時は減っていた人種差別団体が、オバマ大統領の当選後に増えているというデータもある。


アメリカでは様々なアンチ・オバマ、アンチ黒人のコラージュやメッセージが人種差別主義者によって作られてはメールで回覧されたり、ネットにアップされる。以下はそのうちの数点。



2009年、カリフォルニア州Los Alamitosの市長が複数の友人に配信した写真。ホワイトハウスの庭がスイカ畑と化している。スイカは“黒人の好物”として黒人ステレオタイプ画によく使われる。市長はうっかり黒人女性にもこのコラージュを送り、そこから火が点いて辞職のハメに。


(写真はここをクリック)
「ホワイトハウスに白人(の大統領)を戻せ」 2012年の大統領選時に共和党候補ミット・ロムニーの支持者が着ていたTシャツ。ロムニー陣営は「関わりはない」とコメント。




ネット上で拡散したコラージュ。ここにもスイカ、 フライドチキンと“黒人の好物”が描かれ、「神よ、選挙キャンペーンするのはもちろん大好きです!」が黒人英語で書かれている。作者不明。



カリフォルニア州のティーパーティ・メンバーが「オバマが出生証明証を出さないのが何故か分かったでしょ」のコメントを添えて仲間にメールした写真。黒人をサルに例えるのは昔から差別の常套手段であり、したがって悪意のない場合もタブー。制作者はメールした理由を聞かれ、「私はレイシストじゃないわ!ジョークよ!」と返答。2009年。


以上、いずれも政策への反論ではなく、黒人が黒人であるという、ただその一点のみを揶揄したもの。相手が自国の大統領であろうが関係なく、すべては作り手の“白人であること”の優位性に基づいている。……が、実は逆に作り手のレベルの低さを露呈しており、しかも当人たちはそれに気付いていないお粗末さ。公職者に至っては自身のクビを絞めることになるとも気付かず、結果的に辞職や謝罪に追い込まれているのである。


唯一の救いは、オバマ大統領が初当選した2008年前後は大量に作られたこうした低劣な人種差別コラージュが、作り手もさすがに飽きたのか、最近ではかなり数が減っていること。




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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 14:36
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ヒップホップ殺人事件〜カーステがうるさいと射殺された17歳

危険な黒人の子どもたち

昨日、ツイッターで #DangerousBlackKids(危険な黒人の子どもたち)のハッシュタグが付いたものをいくつかRTした。

●ピンクのリボンを付けた女の赤ちゃんと、よちよち歩きの男の子が芝生の庭でカートに乗っている写真に「若い黒人の犯罪者が逃亡のための車に乗っている、気を付けろ!」

●ドレスアップした10代の女の子の写真に「疑わしい!真珠のネックレスもアイホンもバッグも盗んだものに違いない!」

●バイオリンを演奏中の小学生の男の子の写真に「私の息子がうるさいサグ・ミュージックを演奏している」

これはアメリカで黒人の子を持つ親たちが「大音量の音楽(ラウドミュージック)殺人事件」に抗議して始めたものだ。

#DangerousBlackKids の写真を紹介する記事
Black Twitter Shows Off The #DangerousBlackKids America Should Fear

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ラウドミュージック殺人事件


2012年11月23日。フロリダ州ジャクソンヴィルのガソリンスタンド。4人の黒人ティーンエイジャーが乗った車と、当時45歳の白人男性の車が隣り合わせに駐車。若者たちがカーステで鳴らしていたヒップホップに対し、男性が「うるさい」とクレームを付けたことから口論となり、銃を取り出した男性は車内の4人に向って10発を発砲。ジョーダン・デイヴィス(当時17歳)が死亡し、他の3人は負傷。犯人のマイケル・ダンは、ガソリンスタンドの売店で買い物中だった婚約者を連れて現場を後にし、翌日、宿泊中のモーテルで逮捕。



"サグ・ミュージック"がうるさいと射殺されたジョーダン・デイヴィス(当時17歳)

犯人は裁判で「ティーンエイジャーがショットガンを持っているように見えた」と証言したが、若者たちの車から銃器は発見されていない。しかし、フロリダ州には「Stand Your Ground Law」と呼ばれる自己防衛法があり、自身の身に危険が迫っていると「思う」だけで殺傷能力のある武器を使うことが可能。同じくフロリダ州で起ったトレイヴォン・マーティン事件(*)で争点となったのも、この法律だった。

*黒人の高校生トレイヴォン・マーティンが雨の日にキャンディとジュースを買うためにコンビニに出掛けた帰途、フードをかぶっていたために自称自警団のジョージ・ジマーマンに「あやしい」と射殺された事件。ジマーマンは無罪となった


今回の「ラウドミュージック殺人事件」(犯人はヒップホップを“サグ・ミュージック”と呼んだ)の裁判が先週結審した。ジョーダン・デイヴィスへの殺人罪については陪審員が判決を下すことが出来ず、無効裁判となってしまった。Stand Your Ground法は、たとえ相手が武器を持っていなくとも、本人が「銃を持っているように見えた」、もしくは持っていたのがたとえ鉛筆やチョコレートバーであったとしても「銃に見えた」から「身の危険を感じた」と言えば、それが嘘であると証明することはほとんど出来ないからだ。ただし、負傷させた3人への殺人未遂罪では有罪となり、懲役60年(1人につき20年)となった。若者たちは負傷しながらも車を発進させ、犯人は走り去る車に向ってさらに数発を発射。これが自己防衛ではなく、殺意であったと看做されたためだと言う。


殺人罪を免れたマイケル・ダン


犯人の年齢がすでに47歳であることから懲役60年は実質上の終身刑にも成り得るが、丸腰の17歳の黒人少年を「音楽がうるさい」という理由で射殺した人間が殺人罪を免れた事実は重い。被害者ジョーダン・デイヴィスの両親だけでなく、黒人の子を持つすべての親が、トレイヴォン・マーティン事件に次いで「またか」とショックを受けた。トレイヴォンやジョーダンに起ったことが明日、あさって、来年、3年後、10年後に我が子にも起こり得るのだ。最初に挙げた #DangerousBlackKids のハッシュタグと写真は、そうした親たちが、どうしようもない怒りに哀しくも辛いユーモアをまぶした、せめてもの抗議の策なのだ。

同時にフロリダ州では今、Stand Your Ground法の改正が叫ばれている。



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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 18:37
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トレイヴォン・マーティン
author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 15:22
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We the People
NY在住の写真家で友人の柳川詩乃さんがプロジェクト(低所得者用公団)に住む人々を写し、ジャーナリストのリコ・ワシントンによるインタビューを添えた写真展 We the People をブロンクスにて開催中。


We the People サイト


We the People
詩乃ちゃんと、彼女が撮影したオル・ダラ(ジャズ・ミュージシャンでNASの父親)のポートレイト。オル・ダラはとても “セクシー” な人だったそうw

プロジェクトに住む一般の人々に混じって、かつてプロジェクトに住んでいたネルソン・ジョージなどの写真も。


自身もプロジェクトの出身で音楽ジャーナリストのリコ・ワシントンによるインタビューもとても面白く、じっくり読めるよう本になることを願ってやみません。
author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 13:41
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コネチカット乱射事件〜メディアが書けないこと
 今回の乱射事件によって、アメリカの銃規制法はついに変わると思う。少なくとも、今回の事件で犯人が使ったアサルト・ライフルと呼ばれる殺傷能力の高い大型銃の一般への販売が禁じられることになるだろう。


 これまで、どんな事件事故があっても銃規制法改正の動きは出なかったアメリカだが、乱射のあった金曜日以来、報道を見ていて2回、「今度は変わる」と確信した瞬間があった。


 * * * * * * * * * * * * * * * 


 ひとつは、30年以上の経歴を持つ検死官が、「私は一般の人ほど繊細ではないが、今回は最悪だった」と記者会見で語った時。後にウエブサイトの記事を見ると、声を詰まらせた瞬間もあったようだ。


 被害者は全員、本来は戦場向けに開発されたアサルト・ライフルで撃たれている。しかも全員が複数発撃たれ、中には11発の弾丸を打ち込まれた遺体もあったとのこと。


 ここに犯人が使ったBushmaster というアサルト・ライフルの射撃練習風景のビデオを上げておく。

ビデオ:攻撃ライフル:ブッシュマスター.223 5.56mm 射撃練習風景



 このライフルで6〜7歳の子どもたちの小さな体が何発も撃たれたら、遺体はどんな状態になるだろうか。今日の新聞には、ある母親は事件から2日経ち、ようやく幼い息子の遺体と対面できたとあった。その際、遺体の首から下を覆っている布をめくらないように警告を受けたともあった。もし、顔を撃たれた犠牲者がいたとしたら、一体、どうなっているのだろう。


 遺族の気持ちを考えると、幼い子どもの遺体を公開するなどあり得ないことだ。しかし、販売を法によって禁じるために、何らかの方法によって、アサルト・ライフルの破壊力を一般に知らせるべきだと考える。


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 今回は銃規制法が変わると確信したもうひとつの瞬間は、被害者の子どもたちの写真を見た時。


 現場は郊外の裕福な街であり、被害者の多数は白人だった。中にひとり、ブロンドに大きな青い目をした女の子がいる。エミリーという名だ。写真はエミリーが大きな目でじっと正面を見つめ、見る者に強い印象を与えるものだった。新聞社のデザイナーもそれを分かっていたと見え、エミリーの写真が最も大きく掲載されていた。

Emily ParkerRest in peace, Emilie.

リンク → 犠牲者の写真


 この事件が黒人地区やヒスパニック地区、もしくはチャイナタウンで起こっていたとしたら。


 子どもは人種にかかかわらず、皆、可愛い。6〜7歳児20人もの犠牲者の写真を見れば誰もが涙する。けれどマイノリティの子どもたちであれば、世間の涙はあっと言う間に渇き、そのまま忘れられてしまう。


 一般的に人間は、自分の身内に強い愛着を抱く。家族や恋人、友人や同僚などだ。アメリカの場合、その次にくるのが「同じ人種/エスニック」だ。対象がまったくの他人の場合、自分と異なる人種より、同じ人種に親近感を持つ。逆に言えば、自分と異なる人種やエスニックには自然と距離感を覚える。


 近年、アメリカはマイノリティが急激に増えているとはいえ、全人口の64%は白人であり、議員や大企業の要職など、社会的な力を持つポジションは白人が圧倒的多数を占める。つまり、彼らが「自分の身内に凄惨な事件が起こった」と感じない限り、アクションは起きない。さらに事件現場が貧困地区であれば、「そういう場所だから仕方ない」といった見離しもある。


 これがアメリカの現実だ。


 エミリーを含む20人の子どもたちが、銃規制法を変えるために天の采配によって殺されたなどとは決して思わない。けれどあの子どもたちが残してくれたものを、私たちは最大限有効に使わなければならない。


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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 15:56
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