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マイノリティは "トランプ大統領" を信用しない 〜選挙から一夜明けて
マイノリティは "トランプ大統領" を信用しない 〜選挙から一夜明けて


トランプの勝利演説の冒頭:今、アメリカは分断による傷を縫い合わせる時です。ひとつにならなければなりません。(中略)これまで私を支持しなかった人々、ほんの少数の人々ですが(観衆の笑い)、あなたがたの導きと助けを得たいのです。共に働き、我々の偉大な国をひとつにするために。

当選するや否や、いきなり「大統領らしい」演説となった。今後、トランプはこれまでのような、あからさまな女性/ラティーノ/イスラム教徒/黒人/障害者……への差別発言を控えるだろう。しかし、これまで散々傷付けられてきたマイノリティたちは一夜明けて急に掌を返したように「ひとつになりましょう」と言われても、トランプを信じることなど到底、出来ない。

トランプが大統領として機能し、これ以上の摩擦を避け、アメリカを偉大にしたいのであれば、トランプ自身がマイノリティを人間として扱う真摯な対応策を施行しなければならない。



ドキュメンタリー映画『トランプ・ランド』のマイケル・ムーア監督がトランプ勝利予知の記事を今年の夏に書いている。内容は驚愕の精度だ。

「ドナルド・トランプが大統領になる5つの理由を教えよう」

だが、天才マイケル・ムーアですら見逃しているポイントがある。人種問題だ。ムーアも「投票の列/貧しい黒人とかヒスパニックの地域だったら/うまく投票できないようにつくられている」「怒れる白人、最後の抵抗/俺たちに指図してきた黒人の男に8年間耐えなきゃいけなかったのに〜」と書いてはいるが、記事は製造業の衰退、低賃金/失業にあえぐ労働者の心情によりポイントを置いている。

他の多くの評論家や有権者も言うように、今回の件、これまで陽の目を見ること無く苦労ばかりを強いられてきた「労働者」の存在は非常に大きい。だが、彼らの怒りの底にはアメリカの人種問題が根深く横たわっている。労働者だけでなく、アメリカという国は「黒人の男に8年間も指図される」ことに耐えられなかった。それを当人が意識していたにせよ、無意識だったにせよ。



今回の一連の騒動はそこが出発点となっている。8年前の “史上初の黒人大統領” の誕生だ。そこに他の様々な問題が複雑に絡み合い、雪だるま式に膨れ上がった。しかし、人種問題はマジョリティ側にはなかなか見えない。昨夜、CNNのコメンテイター、ヴァン・ジョーンズの涙ぐみながらのコメントが話題となった。

「(差別主義者が大統領になったことを)子どもにどう説明するのか」

このコメントに対し、ある白人コメンテイターが「人種問題ばかり言っていても仕方ない」という主旨の返答をした。その時のジョーンズの「これほど言っても通じないのか」という絶望の表情。アメリカの黒人差別はいまだに「死」にすらつながっているという事実にマジョリティ側は気付かない。



以下はある黒人男性のインスタグラム。写真は「一筋の光もない暗闇」。今後の4年間を静かに忍耐強くサバイバルする決意が書き添えられている。

「これからの4年間、恐れはしても善良であるために邪悪さも憎しみもなく歩き通す」



黒人だけではない。ヒスパニック、イスラム教徒たちも戦々恐々としている。イスラム教徒の幼稚園児が他の子どもに虐められたという記述もすでに見掛けた。



NBAのスーパースター、レブロン・ジェームズも同様の思いを抱き、しかし望みを捨てずにインスタグラムにケンドリック・ラマー『オールライト』をアップし、以下のコメントを添えている。

「親とリーダーたち、どうか子どもたちに、こんなことになった今も子どもたち自身がより良い世界に変えられると教えてほしい!」

選挙翌日の今日、カリフォルニア州の複数の高校から大量の生徒がトランプへの抗議のためにウォークアウトした。同州には親や家族、もしくは自分自身が不法滞在者であり、問答無用の強制送還による家族離散が起こり得るヒスパニックの生徒が少なからずいる。今、全米の不法滞在者は推定1,100万人。



これはシカゴのある学校の教室に貼られたメッセージ。

親愛なる滞在資格のない生徒へ、この教室には壁はないよ
親愛なるメキシカンの生徒へ、君たちはレイプ犯でも麻薬密売人でもない
親愛なる黒人の生徒へ、この教室では君たちの命も大切だ
親愛なる女生徒へ、男は君の身体をつかんだり出来ない
親愛なるムスリムの生徒へ、君たちはテロリストなんかじゃない


子どもたちはすでに始めている。
この国はオールライトだ。
そう信じたい。


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ヒューマン・バラク・オバマ
第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」
第2回:バラク・オバマは「黒人」なのか〜人種ミックスの孤独
第3回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために
第4回:“二重国籍疑惑”の大統領候補たち〜「生まれつきのアメリカ人」とは?
第5回:ドナルド・トランプを大統領にしてはいけない理由
第6回:大統領はクリスチャン〜米国大統領選と宗教





ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
ワシントンハイツ・ツアー(スペイン語の街 "In the Heights"はここで生まれた!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 08:44
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ブラックカルチャー的ワシントンD.C.旅行記

 

ブラックカルチャー的
ワシントンD.C.旅行記

オバマ大統領の在任中に息子を連れて行こう!と親子3人で訪れたワシントンD.C.
私と夫は10年振り、息子は7歳の時にホワイトハウスのイースターイベントに参加しているので5年振り。けれどその時は幼過ぎて場所の意味を理解しておらず。と言うわけで行ってきました、歴史を巡るワシントンD.C.ツアー。

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ベンズ・チリ・ボウル

ファンキー!


チリドッグ。この日のBGMはオージェイズ For The Love of Money


我らが大統領と、多分消したいけれど消せないレイアウトなので保存されているヒト



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アフリカン・アメリカン南北戦争博物館



黒人兵士の歴史について語ってくれた館員





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グラフィティ












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ホワイトハウスと、ホワイトハウス・ビジター・センター



ビジターセンターはホワイトハウスに関するミニ博物館。ホワイトハウスについてのミニドキュメンタリー映画もあって面白い


ホワイトハウスが奴隷と移民の「手」によって建てられた歴史を描いた絵本。絵も美しい



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キング牧師メモリアル





周囲にキング牧師の言葉がたくさん彫られている



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リンカーン・メモリアル



リンカーン大統領が南北戦争終結直前におこなった演説
「全人口の8分の1は黒人奴隷であった」



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チャイナタウン

実質的にはもう中華街ではなく、若者たちのショッピングエリア


ミュージシャンやヒップホップダンサーなど、ストリートパフォーマーも多い



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アメリカ合衆国議事堂





ワシントン記念塔




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アフリカン・アメリカン博物館

今月24日にオープンなので訪れられず。残念。次回!



アメリカの歴史、黒人の歴史がしみじみと、でも楽しく染み込んでくる街、ワシントンD.C. とても好きな都市。また訪れます。

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ヒューマン・バラク・オバマ
第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」


ヒューマン・バラク・オバマ
第2回:バラク・オバマは「黒人」なのか〜人種ミックスの孤独


ヒューマン・バラク・オバマ
第3回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために


ヒューマン・バラク・オバマ
第4回:“二重国籍疑惑”の大統領候補たち〜「生まれつきのアメリカ人」とは?



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)

 

author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 05:50
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Black is Beautiful 〜黒人の美を再考〜アルビノ・白斑の黒人モデル

Black is Beautiful 〜黒人の美を再考〜アルビノ・白班の黒人モデル

昨夜のVMA(MTVビデオ・ミュージック・アワード)で各賞を総なめにしたビヨンセが、ふたりの黒人ファッションモデルを会場に招待していた。ウィニー・ハーロウとエイヴァ・クラーク。共にビヨンセの「レモネード」に出演している。ウィニーは尋常性白斑、まだ少女のエイヴァはアルビノだ。

 

グレイのドレスがウィニー・ハーロウ
ブロンドの少女がエイヴァ・クラーク

尋常性白斑は皮膚の色素が抜け、身体のあちこちに白斑が現れる症状。どの人種にも起こるが、地の肌の色が濃いほど目立つ。ハーレムなど黒人地区では時々見掛けるが白斑の位置やサイズなど症状は様々。メイクアップで補正する人、そのままの人がいる。中には顔全体に広がってもはや「斑」ではなく、黒人だがそもそも肌の色が極端に薄いのだろうと思える人も。

アルビノは生まれつき全身の色素が極度に少ない、または無い症状。これもどの人種にも存在するが、やはり黒人社会では他者との比較から相当に目立つ。

黒人運動が盛んになった1960年代に「Black is Beautiful」というスローガンが生まれた。それまで白人側から美しくないとされ、黒人自身もそう思い込まされていた濃い肌の色、縮れた髪など黒人特有の外観を美しいと主張するものだ。

ビヨンセは黒人だが肌の色が薄め。常にブロンドに近い色のウィッグやヘアエクステンションを使い、黒髪でメディアに登場することはめったにない。以前、ストレートのブロンドヘアで肌の色を実際以上に明るく撮影したコスメの広告写真が黒人女性たちから「私たちをリプレゼントしていない」と批判されたことがる。一方、ビヨンセの娘のブルーアイヴィーはいつも地毛のままで黒人幼女特有のブレイズスタイルに編むことすらせず、やはり黒人女性たちから「母親なんだから、もっときちんとさせなさい」と批判を浴びた時期がある。

黒人の美しさとは何を指すのだろうか。黒人特有の外観を指すのだとすれば、ミルクのように白い肌、ブロンドの髪、ブルーグリーンの瞳を持つエイヴァはその範疇から外れる。チョコレートブラウンのスムーズな肌を指すのだとすれば、顔も含めて身体中に白斑のあるウィニーも規格外となる。しかしウィニーもエイヴァも黒人であり、十二分に美しい。

「Black」と「Beautiful」それぞれの言葉の意味を、ビヨンセは考え続けているのかもしれない。ーendー



ヒューマン・バラク・オバマ
第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」


ヒューマン・バラク・オバマ
第2回:バラク・オバマは「黒人」なのか〜人種ミックスの孤独


ヒューマン・バラク・オバマ
第3回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
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スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)

 

author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 08:50
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映画『KICKS』〜スニーカーと銃:ゲトーの青春

映画『KICKS』

 〜スニーカーと銃:ゲトーの青春

 

ハーレムに拠点を置く ImageNation という名の映画オーガニゼーションがある。ブラックムービーをハーレム内のアートスペースで上映したり、屋外上映会を企画運営などしている。その ImageNation 主宰の『KICKS』という新作映画のスクリーニングがマジック・ジョンソン・シアターというハーレムにあるシネコンで行われた。

 

『KICKS』は今年4月のトライベッカ・フィルム・フェスティバルでオープニング・プレミアとして上映されて好評を得、アメリカでは9月9日より一般公開となる。今回のスクリーニングはそれに先駆けてのもので、「口コミでこの映画を広めてもらうためだから、面白かったら回りの人に伝えてね」と主宰者のMoikgantsi Kgamaさんが言ったので、レビューを書いてみる。

 

(ネタバレ注意)

 

『KICKS』とはスニーカーのこと。若者のスラング。


カリフォルニアのベイエリアに住む高校生のブランドンはジョーダンのスニーカーが欲しくてたまらない。友だちは皆、履いている。親友のリコとアルバートも履いている。破れた古いスニーカーなんて履いているのは自分だけ。ジョーダンが欲しくて、欲しくて、欲しくてたまらない。けれど貧しいブランドンには手が出ない。


ブランドンと親友たちはゲトーではごく普通のティーンエイジャーだ。NワードやBワードを連発し、女の子といちゃつき、バスケをし、マリファナを吸い、コンビニで飲み物くらいは万引きするけれど、それ以上の大それたことはしない。そんなブランドンだからスニーカーを盗むことなど出来ず、道端でキャンディを売って資金を貯める。


やがてブランドンはついに念願のジョーダンを手に入れるが、初めて履いたその日に地元のサグのフラコに盗られてしまう。銃を持ち、情け容赦のないフラコに楯突くことは出来ず、涙を流しながらジョーダンを手放すブランドン。


15歳にしては小柄で童顔だから中学生くらいにしか見えず、性格も奥手で大人しいブランドンだが、あのジョーダンだけは諦められない。思い詰めたブランドンが取ったジョーダン奪回の手段とは……


「KICKS」トレイラー



前半の粗筋を書くと、とても単純な物語に思える。実際、シンプルなストーリーなのだが、時々“宇宙飛行士”が表れる。シングルマザーらしきブランドンの母親は一度も登場しない。部屋に置かれた写真立てに、にこやかに笑う母親と幼いブランドンの写真があるのみ。母親との不仲を表す描写は何もない。母親は単に仕事で忙しく、ブランドンと時間を共にすることが出来ないのだと思わせる。兄弟姉妹も登場しない。ひとりっ子なのだろう。ブランドンは孤独なのだ。そんなブランドンの心象風景としての宇宙飛行士。もしかすると幼い頃に宇宙飛行士に憧れ、宇宙飛行士になりたいと思っていたのかもしれない。白い宇宙服を着て、ヘルメットで顔が見えない宇宙飛行士はブランドンが独りの時にだけ表れる。


後半の粗筋は書かないが、この映画は「努力してスニーカーを買ったブランドン」と「銃で脅してスニーカーを奪ったフラコ」による勧善懲悪物語ではない。ブランドンにもダークサイドがある。フラコにも愛情がある。途中で登場するブランドンの刑務所帰りの叔父にも驚くほど異なる2つの顔がある。


しかし劇中で起こる出来事は、彼らがゲトーに暮していなければ、そもそもこんなことにはなっていなかっただろうと思われることばかりだ。ゲトーの全ての土台となっている貧困。日常に当たり前に存在する暴力。マチズモ。家庭崩壊。そこからくる愛情の歪み。それら全ての背景にある、しかしこの映画では直接は描かれない人種問題。ゲトーではそれをサバイバルしなければ文字どおり、死んでしまうのだ。


そんな人生を登場人物たちは当たり前のことと受け止め、実はひょうひょうと生きていく。サバイバル出来ずに死んだ者もいる。けれど生き残った若者たちはサバイバルをラッキーに思い、タフになった自分を誇りに思い、そして、以前と同様に生き続けるのだ。
 

『KICKS』

監督: ジャスティン・ティッピング
ブランドン:ジャーキング・ギルロイ(新人)
★ Nas, E-40, Jay Z, 2Pacなどの曲が使われ、象徴的なリリックの一節が画面に写し出されるのもお楽しみ

 




ヒューマン・バラク・オバマ
第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」


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第2回:バラク・オバマは「黒人」なのか〜人種ミックスの孤独


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第3回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)

author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 17:03
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連邦議事堂のインターンはメラニン色素で決まる〜マイノリティは資格なし?

 

連邦議事堂のインターンはメラニン色素で決まる〜マイノリティは資格なし?

 

 

今日、7月18日、オハイオ州で共和党の全国大会が始まった。この大会で正式にドナルド・トランプが共和党の大統領候補、マイク・ペンス(現インディアナ州知事)が副大統領候補に指名される。

 


過去2週間に全米各地で警官による黒人男性射殺、元米兵の黒人男性による警官射殺が4件も起り、共和党の全国大会はかつてないほどの緊張感に包まれている。オハイオ州には「オープンキャリー法」があり、装填した銃を他者に見えるように携帯することが合法。つまり大型銃を肩にかけてスーパーマーケットで買物をすることも許される。

 


言うまでもなくトランプはマイノリティの多くから支持をされないどころか、激しく嫌われており、一方、白人至上主義者はトランプを支持。党大会の会場周辺に集うトランプ支持派、アンチ・トランプ派がいともたやすく人種対立に結びつく可能性がある。その双方が全員ではないにせよ銃を所持するわけで、警備をおこなう警察もさらなるプレッシャーにさらされている。

 


 


この党大会の2日前、下院議長のポール・ライアンがインスタグラムにアップした1枚の写真が大きな批判を浴びている。

 


この夏、ワシントンD.C.の連邦議事堂(国会議事堂)でインターンとなる若者たちとライアンのセルフィー、自撮り写真だ。

 

 

 

 

今のアメリカでこの写真を見て驚かないわけにはいかない。この原稿を書いている時点で6,500ものコメントが書き込まれている。

 

「白人の海」(何かが大量にあることを "the sea of ~" と言う)


「冗談だろ?」


「共和党の反映」


「(インターンの資格に)メラニン色素以外に求められるものは無いのか?」


「これが全員黒人だったら問題になるだろう」

 


下院議長のライアンが共和党であることと、インターンたちの支持政党がどれほどリンクしているかは不明。しかし、国政に強い関心を持つ若者が貴重な経験を得られる場をマイノリティに提供せず、それを前回の大統領選に立候補すらした下院議長が臆することなく公表している。特に黒人と警官の射殺事件が続き、人種問題が非常な緊張状態にある今、である。

 


ライアンは「ポリティカリー・コレクトネス」としてマイノリティも採用する、仮にこの写真の中にマイノリティが1人か2人でも含まれているなら(最後部にアジア系男性?)、自分に近い場所に座らせるなどの配慮を一切おこなっていない。そうした配慮がマイノリティの若者を勇気付け、来年インターンに応募するきっかけになるかもしれないのだ。しかし、アメリカ合衆国下院議長という国政のトップにある人物は、人種的マイノリティの国政参加を望んでいない。

 

 

一枚の写真が、アメリカの人種問題の根深さをかくも雄弁に物語っているのである。

 

 

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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 06:49
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「ブラック・ライヴズ・マター」という言葉は何を意味するのか

2016/07/12

 

「ブラック・ライヴズ・マター」という言葉は何を意味するのか

 


今、アメリカで大きな社会現象となっている「ブラック・ライヴズ・マター」運動。ブラック・ライヴズ・マター Black Lives Matter とは一体、何を意味するのか。

 


ブラック・ライヴズ・マターは 4年前、当時17歳の黒人少年トレイヴォン・マーティンが自称自警団の男性に射殺された事件を発端に生まれた運動であり、以後、黒人が警官に殺害されるたびに全米各地で大規模なデモを行っている。

 


そして先週。アメリカにとって非常に辛く厳しい一週間だった。7月5日にルイジアナ州、翌6日にミネソタ州で黒人男性が警官に射殺された。たちまち全米で抗議デモが展開され、7日のテキサス州でのデモ中に警官5人が「スナイパー」によって射殺される事件が起きたのだ。犯人は米軍退役兵の黒人男性だったが、ブラック・ライヴズ・マターとは無関係だった。

 


過去に起きた警察による黒人殺害事件それぞれの詳細、ブラック・ライヴズ・マターの活動形態についてはこれまでに雑誌の記事、ブログ、ツイッターに書いてきた。今回は日本語には馴染みにくい「ブラック・ライヴズ・マター」Black Lives Matterという言葉そのものと、その周辺事情について書いてみる。

 


 


この「ブラック・ライヴズ・マター」というフレーズが日本で浸透しにくいのは、かつての黒人運動の象徴であった「ブラック・パワー!」と違い、英語のままだと意味が分からない、分かりやすい直訳もできないことではないかと思う。


Black Lives Matterは直訳すると「黒人の命 “は” 大切」となるが、これでは本当の意味と背景が分からない。この言葉が表しているのは、「これまで人種差別と白人特権により白人の生命のみが尊重され、黒人はいとも容易く殺されてきたが、黒人の生命 “も”また、同等に大切なものだ」という主張だ。

 


 


ところがアメリカにも「黒人たちが『黒人の命 “こそ” 大切』と主張している」と解釈し、「黒人の命 “だけ” を取り立てて重要とするのは逆差別」「全ての人種の命が等しく大切であり、つまり"All Lives Matter"だ」との声がある。この類いの発言は黒人が置かれてきた、今も置かれている位置を理解しない層の口から出ることが多い。

 


警官たちもブラック・ライヴズ・マターという言葉を嫌う。ブラック・ライヴズ・マター運動の目的は「警察暴力」という構造的な現象への抗議だが、デモ現場ではデモ参加者が警官にカースワードを投げ付け、中指を立てることもある。デモを阻止しようとする警官隊と参加者がぶつかり、双方に身体的な危険も付きまとう。そして今回、警官12人が狙い撃ちされ、5人が亡くなるという最悪の事態が起ってしまった。

 


このように銃社会アメリカでの警官は文字どおりに命Lifeを賭けた仕事であり、彼らとってもLivesという言葉は非常に重い。そこでブラック・ライヴズ・マターへの対抗として生み出されたのが「ブルー・ライヴズ・マター」Blue Lives Matter、「警官の命も尊重されて然るべき」というフレーズだ。アメリカでは青blueは警察を象徴する色なのだ。

 

 

Black Lives Matter

 

All Lives Matter

 

Blue Lives Matter

 


三者三様の歴史と生活背景と思考。
それらの折衷点を、アメリカは模索し続けていくことになる。

 

 

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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 01:05
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BETアワード 2016 ラッパーは移民の子? 〜No移民、Noブラックミュージック

BETアワード 2016
あのラッパーも移民?
〜No移民、Noブラックミュージック

 

 

2016/06/27

 

 


昨夜のBETアワードはまさにプリンス祭だった。3時間半のショーで5組も追悼パフォーマンスがあったのだから。その詳細はここでは書かないけれど、ショーをつらつらと眺めながら、「あー、“移民の子”がたくさんいるなぁ」と思った。

 


奇しくもイギリスのEU離脱で世界中が盛り上がり、「移民が増え過ぎたからだ」説がTLに流れてきたり、アメリカもオバマ大統領の不法移民救済案が最高裁で却下されたり、そもそもトランプのムスリム移民禁止案ぶち上げもあったりで、ずっと移民のことを考えていたからだ。(だから昨日もドミニカ移民のことを書いたばかりだし)

 


マックスウェル(母:ハイチ移民、父:プエルトリコ系)
ファット・ジョー(プエルトリコ系、キューバ系)
フレンチ・モンタナ(モロッコ生まれ)
フューチャー(両親:ハイチ系)
DJカリード(両親:パレスチナ移民)
シーラ・E(母:アフリカン・アメリカン、父:メキシコ系)

 


気付いただけでもこれだけ。実際はもっともっといるはずだけれど。

 


ファット・ジョーはスペイン語話者。フレンチ・モンタナはアラビア語とフランス語を話すイスラム教徒。DJカリードもイスラム教徒。マックスウェルはアメリカ黒人奴隷の子孫ではないことになる。シーラ・Eも半分ラティーノ。

 


こうした人々がアメリカのBET(ブラック・エンターテインメント・テレヴィジョン)の祭典に重要なパフォーマーとして出演しているのだ。

 


(プエルトリコは米領なのでプエルトリコ系は法的には移民ではないけれど、スペイン語話者、多くは貧しさから米国本土に移住と、移民とよく似た背景を持つ)

 


・・・・・・・・・・・・

 


いわゆるブラックミュージック・シーンには移民の子だけでなく、自身が外国で生まれ、後にアメリカに移住した移民ミュージシャンもたくさんいる。

 


ヒップホップの始祖たちを見よ。

 


DJクール・ハーク(ジャマイカ生まれ)
グランドマスター・フラッシュ(バルバドス生まれ)
ダグ・E・フレッシュ(バルバドス生まれ)
スリック・リック(ロンドン生まれ)

 


ペパ(ソルトン・ペパ)(ジャマイカ生まれ)
ワイクリフ・ジョン(ハイチ生まれ)
イモータル・テクニーク(ペルー生まれ)

 


近年の有名どころでは
ニッキー・ミナージ(トリニダード生まれ)

 


エイコンはセネガル人の両親からアメリカで生まれながらも、子ども時代をセネガルで過ごしている。

 


ちなみにリアーナはバルバドス人。子どもの時期に親と共に移住したパターンではなく、シンガーとして見初められてアメリカへ来てデビューした人。ドレイクはカナダで芸能人として成功し、アメリカでも活動を始めたカナダ人。

 


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移民は全米どこにでもいるけれど、ニューヨーク市は特にその割合が高い。人口の36%が外国生まれで、つまり残り64%がアメリカ生まれなわけだけれど、そのうち移民が生んだ子の割合はどれほどなのだろう。今回のBETアワードには登場しなかったけれどハーレムを仕切るディプロマッツもキャムロン以外は大体皆カリブ海系だし、再結成?最活動?するクイーンズ出身のGユニットもそう。やはりハーレムのA$APロッキーだってお父さんはバルバドス人。カリブ海系の一大本拠地ブルックリンともなれば、もう。

 


白人の芸能人にだって移民はたくさんいる。例えばキッスのジーン・シモンズ(イスラエル生まれ)、俳優のミラ・ニクス(ウクライナ生まれ)、キーファー・サザーランド(英国生まれのカナダ人)などなど。

 


政界・財界・メディア・アカデミック界にも移民や移民の子はたくさんいる。その最たる存在はキッシンジャー、オルブライトの2人の元アメリカ合衆国・国務長官だろう。国の最高機密と外交を外国生まれの移民が仕切っていたのだ。

 


どの分野に於いても一流の移民たちはアメリカ人として活躍している。その作品や活動振りから他国の血、他国の文化を引き継いでいるとは分からない人のほうが多いかもしれない。けれど移民はいくらアメリカナイズされても何かしら“アメリカ”とは異なる独自のフレイバーや価値観を持っている。それがアメリカとうまくブレンドされた時に、新しいアメリカン・カルチャーが生み出されるのだ。この現象こそが、まさにアメリカなのである。

 


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世界各国で移民規制がかまびすしい昨今。私もすべての移民を無条件で受け入れろ、今いる違法滞在者を全て合法にせよなどと言っているわけではない。けれどアメリカに移民や移民の子がいなければ、アメリカという国は成り立たない。物理的な存在はできても、とてもつまらない国になってしまう。

 


移民とアメリカ。非常に重要で、難しくて、繊細なこの問題をどう手掛けて行くのか。これは移民の国アメリカ合衆国が、永遠に抱えていかざるを得ない課題だが、もはやアメリカだけの話ではなく、世界どの国でも同様なのだろう。

 

 

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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 20:40
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レミー・マ 復活!〜 Black Love 〜 結婚する黒人のサイファー

昨夜のBETヒップホップ・アワードのサイファーにレミー・マが登場した。6年間の刑務所暮しを経ての復活だった。獄中結婚した夫でラッパーのパプースと共に「ブラック・ラヴ」を謳った。


レミー・マ&パプース「Black Love」

※クリックすると聴けます

レミー・マはブロンクスのプロジェクト(低所得者用公団アパート)出身。同郷のビッグ・パンに見初められ、やがてファット・ジョーのテラー・スクワッドに参加し、2004年の夏に「リーン・バック」をビルボードのシングル・チャートHot 100で3週連続1位の大ヒットとした。

しかし2007年の夏、「金を盗った」と女友だちを撃ち、重症を負わせる。翌年3月に有罪、懲役8年となり、服役。2ヶ月後の5月にフィアンセのパプースと刑務所内にて結婚。そして今年8月、6年の服役を経て出所。

入所時、レミーにはすでに息子がおり、パプースは獄中のレミーを支えると同時に自分の子ではない息子ジェイソンを育ててきた。この2人が「ブラック・ラヴ」〜セレブ黒人“夫婦”のリストをサイファーしたのだ。

パプース「ウィル・スミス」
レミー「ジェイダ(ピンケット・スミス)」


メロ(カーメロ・アンソニー)
ララ(アンソニー)

マンデラ
ウィニー

スウィズ
アリシア

2パック
アフィニ(母親)

T.I.
タイニー

バラク
ミシェル

ドウェイン・ウェイド
ガブリエル(ユニオン)

ニック
マライア

ウィズ
アンバー

マーティン(キング牧師)
コレッタ

ビギー
ヴォレッタ(母親)

ジェイ・Z
ビヨンセ

カニエ
キム・K

パプース
レミー


That's Black Love!

レミーはゲットー出身の苦労人かつ非常に短気でケンカっ早い。10年ほど前、「ヒップホップで高校中退を防ぐ」という内容のパネル・ディスカッションを観覧した時、壇上になぜかレミーもいて、当時の教員組合長と口論なったのを目撃した。 「私は中退だけど、友だちの中でいちばん稼いでるわよ!」

それからほどなくして、先の銃撃事件を起こした。「あんたに預けた3000ドルが無くなった!」と至近距離から友人の腹を撃ち、もだえ苦しむ友人を気にもかけず、友人のバッグの中を探ったと言う。

そんなハードコア・ゲトーなレミーが結婚したのだ。そして、結婚しているセレブ・カップルのリストをサイファーし、そこに自分と夫の名を加えた。

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若い黒人の婚姻率はとても低い。黒人社会はシングルマザーが圧倒的に多く、黒人の子どものうち母親と父親の両方と一緒に暮しているのは3分の1に過ぎない。ハーレムだと4分の1程度にも感じる。シングルマザーがすなわち悪ではなく、「貧困」と「家族の概念の欠落」が問題となるのだ。ゲトーでは「教育の質が低い→低学歴→親が無職または低賃金ゆえに犯罪者になる者もいる→子どもも貧困」のサイクルが延々と続いている。このサイクルを破るには両親共働きが必要になる。さらに未婚の若者が10代で子どもを生み始めるため、男女ともにやがて別の相手が出来て、そこにも子どもが生まれる現象がある。女性が父親の違う3人の子どもを育て、男性は3人のガールフレンドにそれぞれ子どもを生ませ、しかし誰とも同居せず、養育費も払わないケースもある。こうした環境で育つ子どもたちの家族観がどうなるかは言わずとも知れる。

こうした「家族」の在り方を憂慮する声は以前からある。レミーとパプースの「ブラック・ラヴ」リストの筆頭に挙ったウィル・スミスも「子どもの成長を見守る父親」をテーマとした絵本を出している。ハーレムには「若い男性が良い父親になる」ための教室もある。この教室ではすでに生まれている子どもとの関わりを重視し、子どもの母親(baby mama)との結婚は強要しないが。

ここしばらくのビヨンセにも、黒人社会に「結婚=家族の構築」を促す気配がある。曲やビデオでは女性の独立を強調しながら、ツアーの名称がまさかの「ミセス・カーター」だった。ちなみに今どきは既婚女性も「Ms.」を使うことが多く、「Mrs.」は稀であり、そうした意味でも目を引くネーミングだった。また、今年のジェイ・Zとの夫婦(めおと)ツアーでも2人が「サンキュー、ミスター・カーター」「サンキュー、ミズ・カーター」と言い合うシーンがあった。

この黒人セレブ夫婦が、合衆国最高位にある黒人夫婦、バラク&ミシェルと友人なのも偶然には思えない。黒人社会は今、いったん無くした「結婚」という男女の絆、家族の在り方を取り戻そうとし始めているのかもしれない。




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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 06:13
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ブルーアイヴィーの髪に非難ゴーゴー 〜母親ビヨンセのポリシー

ビヨンセと Jay Z、そして愛娘ブルーアイヴィー。ブラックミュージック界のみならず、現在のポピュラーミュージック・シーン随一のスーパーファミリーである。



ビヨンセが母親として非難されている娘ブルーアイヴィーの髪



この一家について、日本ではほとんど報道されない話題がある。ブルーアイヴィーの「髪」だ。今、2歳8ヶ月のブルーは、いつも全く何の手も加えない「ナチュラルヘア」。黒人の女の子はだいたいブレイズ(三つ編み)やコーンロウ(編み込み)、ブルーくらいの年令の乳幼児ならアフロパフと呼ばれるスタイルもよく見掛ける。小学生くらいになると、中にはリラクサーと呼ばれる黒人用のストレートパーマをかける子、ヘアエクステンションを入れるおしゃまさんもいる。いずれにせよ縮れているから何らかの処理を施してまとめてしまうわけだが、毎日強く編み続けることもパーマ液も子どもの繊細な肌や髪にはよくないとされている。




黒人の小さな女の子の一般的なヘアスタイル



成人女性に関しては、今や技術が発達し、お金・手間・時間さえかければどんなヘアスタイルも可能。だからビヨンセを始めとするセレブはもちろん、一般の女性も髪だけ見れば白人女性と見分けが付かなくなっている。


そこには深い歴史が潜んでいる。単に「おしゃれ」だけの事象ではない。私の友人(在米の日本人)はだんなさんが黒人。ミックスのお嬢ちゃんはふわふわの大きなカールした髪を持つ。友人はそれが気に入ってそのままにしているが、夫の実家に預けるとグランマが必ずガチガチに編んでしまうと言う。年配の世代にはそれが「身だしなみ」であり、黒人の縮れた髪をそのまま世間に晒してはならないのだ。


そうした歴史と社会背景にアンチを唱え、あえてナチュラルヘアをキープする女性たちがいる。ビヨンセの妹のソランジェもそうだ。




ナチュラルヘア派のソランジェ



しかし、姉のビヨンセは人種を越えた人気を博し、世界に君臨するエンターテイナー。常にウィッグ or ヘアエクステンションでフル装備。しかもブロンド。レブロンのCMは肌の色もかなり薄く仕上げたため、黒人女性の一部から「白人になろうとしているのか」と反発の声が上がった。




「白人化」と批判されたロレアルの広告



こんなふうに、時には「ウィッグ・クイーン」とすら揶揄されるビヨンセだが、娘のブルーの髪は常にナチュラル……というか、ボサボサなのである。おまけに服もピンクのドレスなど滅多に着せず、男の子みたいな格好が多い。これにまた黒人女性がモンクを言うのである。「お金あるんだから、なんとかしなさい!」「自分は完璧な髪してるのに!」 先に挙げたグランマの「身だしなみがなってない」だ。


同様のことは2012年のロンドン・オリンピックでも起きた。黒人選手として初めて女子体操を制覇したギャビー・ダグラス。当時まだ10代で、体操のために親元を離れて黒人のいない街に暮らすギャビーは黒人用のヘアサロンにもこと欠いていたと言う。しかも競技に集中し、時に髪が乱れることもあった。それをテレビ中継で見たアメリカの黒人女性たちが「OMG!」と悲鳴を上げた。日々、髪をパーフェクトに仕上げることに苦心惨憺している(しなければならない)女性たちにとって、世界の檜舞台で活躍する稀少な黒人女性の髪が乱れているのは、見ていてとても辛かったのだ。


ブルーの髪への批判について、ビヨンセは例によって全くコメントを発していない。全てスルーである。先日、それを見かねたソウルシンガーのインディアアリーがとうとう声を挙げた。なんと異例の公開レターをしたため、「小さな子どものことなんだから、放っておきなさい」と、黒人女性たちをたしなめた。インディアアリーもまた、ナチュラル派である。


黒人女性の髪についてこれほど諸々の事情がある以上、ビヨンセがブルーの髪に手を加えないのは何かしらの考えがあってのことに違いない。その気になればブルー専属の一流ヘアスタイリストを雇うことも可能なのだから。


さて、ママ・ビヨンセの娘の髪についての信条とは一体?




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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 07:11
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女優ルピタ・ニョンゴ:美の基準を変えるブラックヘア
ルピタ・ニョンゴは今や"It Girl"(最もホットな女性)。今年のアカデミー賞作品賞受賞作『それでも夜は明ける』12 Years A Slave で最優秀助演女優賞を獲得し、スクリーンの外ではチャーミングな笑顔とベストドレッサー振りがもてはやされ、ピープル誌の “もっとも美しい女性” にすら選ばれたのだ。


 ルピタ・ニョンゴ


白人俳優が圧倒的優位を占めるハリウッドに於いて、黒人であるルピタは“新鮮”な存在。さらにルピタがケニア人の両親の元に生まれたダークスキンであること、そして何よりウィッグもヘアエクステンションも付けないナチュラルなショートヘアで堂々とレッドカーペットを闊歩していることは、新鮮を通り越して、もはや衝撃的ですらある。


人気のある黒人女優たち〜ケリー・ワシントン、ガブリエル・ユニオン、ニア・ロング、レジーナ・キング、タラジ・P・ハンセン、クイーン・ラティファ、ジェニファー・ハドソン、キンバリー・エリス、ヴィヴィカ・A・フォックス、サナ・ラーサン……皆、ストレートなロングヘアだ。


 ケリー・ワシントン


ほぼ唯一の例外はハリー・ベリーだが、彼女は白人とのミックスであることもあり、直毛のやや長目のショートヘア。2011年の『ヘルプ〜心がつなぐストーリー』で主演女優賞にノミネートされたヴァイオラ・ディヴィスは、ノミネート以後はナチュラル・ショートヘアを披露することも増えているが。

 ハリー・ベリー

 ヴァイオラ・デイヴィス


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2012年10月。ルイジアナ州のローカルTV局KTBSの気象予報士ロンダ・リーに対し、ある視聴者からコメントが寄せられた。ロンダはナチュラル・ショートヘアの黒人女性。視聴者は白人男性。


「ニュースをやってるブラック・レディはとても感じのいい女性だ。ただ、カツラを被るか、もう少し髪を伸ばすかしないと。ガン患者なのか、オレにはよく分からないが、それでもテレビ映えする髪型には思えん。もしニュースをやってる男性が腰まで髪を伸ばしていたらどうだ?」


 ロンダ・リー


このコメントに対し、ロンダは以下のように返信した。


「髪も含めて、私はアフリカン・アメリカンの血筋を誇りに思っています。あなたへの知的啓発としてですが、私たちの髪は下向きではなく、上向きに生えます。多くの黒人女性はヨーロッパ系の髪質に近づけるべく、強い縮毛矯正剤を使いますが、それは個人の選択です。しかしながら私はその必要性を感じていません。私は自分自身をとても誇り、美の基準を表しています。女性にはあらゆる体型、サイズ、国籍、そして美の基準があります。幼い少女たちに、神が与えてくれた肌と"髪"に満足していることを伝えるのは、私なりの社会貢献です。少女たち(そして少年たち)に、外観は自分の目標を達成できない理由にはならないことを見せなければならないのです」

(補記:男性の英語は非常に拙く、ロンダの文章は知的)


翌月、ロンダは解雇された。テレビ局は解雇の理由を、ロンダの髪型ではなく視聴者からのコメントに直接返信し続けるという社則違反を冒したためと発表。


この件が、ルピタの登場以降に起ったとすれば、ロンダは果たして解雇されただろうか。


今、GAPやその他のファッション・ブランドがルピタによく似た黒人モデル〜肌の色が濃く、髪がナチュラル・ショートでアフリカ人を思わせる体型〜を次々と採用している。ルピタ自身はランコム初の黒人モデルとして活躍する予定だ。





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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 16:49
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