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トランプと黒人社会の戦争が始まる〜ヒューマン・バラク・オバマ第13回

トランプと黒人の戦争が始まる〜ヒューマン・バラク・オバマ第13回

 今回の大統領選で投票した黒人女性のうち、トランプに票を投じたのはわずか「4%」だった。黒人女性たちは歴史・経験・知性・本能によってトランプを回避しようとした。その願いもむなしくトランプが大統領となった今、黒人社会は今後4年間の在り方を模索し始めている。


■アメリカの大虐殺

 トランプの就任演説は日本語訳もなされたが、アメリカ社会の背景抜きでは伝わり切らない部分がある。

 「都市の中心部(インナーシティ)では母親と子供たちが、貧困に囚われている」

 「インナーシティ」とは都市部のゲトーを指す。住人の多くは黒人とラティーノ。「母親と子供たち」はそこで圧倒的多数を占める貧しいシングルマザー家庭を指す。

 「犯罪とギャングと麻薬があまりにも多くの命を奪い」「このアメリカの大虐殺は正にここで今、終わる」

 同じ段落の中で工業が衰退して貧困化した中西部のラストベルト地帯にも言及しているが、大筋では黒人ゲトーの犯罪を示唆し、それを「アメリカの大虐殺」と言い表している。


■シカゴに連邦軍を!

 1月24日にトランプは以下のツイートをした。

 「シカゴが酷い “大虐殺” が続いているのを止めないのであれば、2017年に228件の発砲事件で42人死亡(2016年から24%増加)、オレは連邦軍を送り込むぞ!」

 相変わらずのぎこちない文章で「!」付きであることはさておき、メディアはさっそく「トランプがシカゴに連邦介入と脅す」の見出しで報じている。

 アメリカ第3の都市であるシカゴは近年、犯罪の悪化に苦しんでいる。ミシェル・オバマの出身地で、若き日のバラク・オバマが地域奉仕家として働いたサウスサイドと呼ばれる地区も含め、大きな黒人インナーシティがあり、そこが手に負えない状況となっている。

 トランプ当選後の昨年12月、トランプの強硬な移民政策を危惧した全米14都市の市長が連名で手紙を書き、シカゴのラーム・エマニュエル市長が代表としてニューヨークのトランプタワーまで届けた。その際、市長はシカゴの状況についても説明した。

 こうした経緯があるにもかかわらず大統領が一市長に対してツイッターで軍隊を送ると唐突に脅迫したのである。ちなみにトランプがいきなりシカゴの件をツイートしたのは、昨日フォックスニュースがシカゴの犯罪率アップを報じた直後。相変わらずの衝動性である。


■ブラック・ライブズ・マター壊滅策

 ホワイトハウスの公式ウェブサイトはトランプの就任と同時にすべて書き換えられた。

 「我らの法執行機関のために立ち上がる」と題されたページに「米国のアンチ警察の空気は危険であり、間違っている。トランプ政権はこれを終らせる」とある。黒人への警察暴力に対抗するために起こったブラック・ライブス・マター運動を指しているのは明らかだ。「トランプ政権は法と秩序(警察が取り締り、法で裁く)の政権となる」ともあり、アンチ警察運動を厳しく取り締まることを示唆している。

 トランプが司法長官に指名したジェフ・セッションズ(現アラバマ州選出上院議員)は人種差別主義者として知られる人物だ。1986年、レーガン政権下で連邦判事に指名された際、Nワードを使った、KKKについてのジョークを発したなど数々の問題発言が公聴会で証言され、非常に稀な指名却下となった経緯を持つ。

 オバマ政権下の二人の司法長官、エリック・ホールダーとロレッタ・リンチは共に黒人への警察暴力問題と闘ったが、セッションズが司法長官になれば全く異なる道行きとなる。


■バラク・オバマへの恨み

 残念ながらシカゴ市民とエマニュエル市長はイバラの道を行くこととなるだろう。

 まずトランプ自身が大変な人種差別主義者である。すでに何度か書いたことだが、1989年にニューヨークのセントラルパークで若いエリート白人女性がレイプの上、瀕死の重傷を負わされ、ハーレムの5人の少年が誤認逮捕される事件があった。この時、トランプは自費で新聞に「ニューヨークは死刑を復活すべし」との一面広告を出した。全員が未成年、最年少14歳に対しての死刑である。また、トランプは経営するアパートに黒人の入居を拒んだこと、カジノの黒人従業員への差別対応などで何度も訴訟を起こされている。

 以下は筆者の主観だが、トランプは執拗な人間だ。「オバマはアフリカ生まれでイスラム教徒」と何年も言い続け、ついに自身も招待されたホワイトハウスの晩餐会でオバマ大統領から大きなしっぺ返しを衆人環視、テレビ中継もなされていた場で喰らった。トランプはこの時の恨みを一生忘れないだろう。

 シカゴはオバマ夫妻の故郷である。市長のラーム・エマニュエルはオバマ政権の初代大統領首席補佐官であり、個人的にもオバマ前大統領の親しい友人だ。トランプはシカゴを徹底的に攻撃し続けるであろう。

 シカゴだけでなく、全米で司法から黒人社会への強硬策、抑圧が善しとされる空気が生まれ、警察暴力が増え、これまで以上に人が死ぬだろう。しかし警官は起訴されず、無罪放免となり、警察と黒人コミュニティの関係はさらに悪化するだろう。子供を持つ母親たち、夫や恋人を持つ女性たちの直感は正しかった。女性たちは闘い続けていかねばならないのである。




連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」(バックナンバー)




ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
ワシントンハイツ・ツアー(スペイン語の街 "In the Heights"はここで生まれた!)

 

 

 

 

author:堂本かおる, category:オバマ大統領, 00:05
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「You are cool.」子どもたちから大統領への手紙〜ヒューマン・バラク・オバマ第12回

「You are cool.」子どもたちから大統領への手紙〜ヒューマン・バラク・オバマ第12回

■人間としてのバラク・オバマと、彼がアメリカに与えた影響を描く連載■

「ありがとう。そして楽しんで、国を治めることを〜子どもたちからオバマ大統領への手紙」という本がある。2008年にオバマ大統領が初当選した直後にアメリカの子どもたちが書いた手紙、約100通をまとめたものだ。表紙のオバマ大統領の似顔絵も子どもが描いている。

8年前に書かれた子どもたちの手紙には、当時のオバマ大統領への社会の大きな希望が反映されている。

ある9歳の女の子は「私はあなたに投票しました/私と私の家族はあなたがマケインよりも助けになると思いました」と書いている。9歳に投票権はもちろん無い。親が大統領選について、バラク・オバマについて、子どもにいろいろと話したのだろう。「史上初の黒人大統領」の誕生に国中が盛り上がっていた。希望に溢れていた。親も教師もオバマ大統領について子どもに語り続けたのだ。

この女の子の親は、もしかするとこの子を投票所に連れていったのかもしれない。投票所にもよると思うが、投票ブースに子どもを連れて入っても差し支えはない。だからこの女の子は自分自身がバラク・オバマを次期大統領にふさわしいと判断し、自分も投票したのだと感じているのだろう。この子にとってオバマ大統領はアメリカ人がよく言うように「マイ・プレジデント」なのだ。


Thanks and Have Fun Running the Country: Kids' Letters to President Obama
Edited by Jory John



手紙はワシントン州シアトルの学童保育所の指導者が思い付き、子どもたちに書かせたもの。他州にある同じ系列の学童保育所にも声を掛けたため、手紙はニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ボストン、サンフランシスコなどからも寄せられている。地名と手紙の内容から察するに、どれも都市部にあり、それほど豊かではない家庭の子どもが多いように思える。人種的マイノリティ、移民の子どもも多く含まれている。

多くの子どもが「大統領に当選しておめでとう」に続いて、「大統領として●●をしてください」と、なんらかの社会問題を持ち出している。そこに挙げられている問題は個々の子どもたちが実際に直面しているものであることが多く、子どもたちは親や先生が満面の笑顔で語る新大統領なら、きっと解決してくれるに違いないと大きな期待を寄せていたことが文面から伺える。


■リーマンショックのまっただ中で

「物価を下げるように言ってください。ボクのお母さんとお父さんは働いてなくて、あまりお金がありません」(10歳)

リーマン・ショックは2008年9月15日に起こった。多くの人々が家や職を失い、アメリカは混沌状態となった。大統領選は直後の11月4日。バラク・オバマが勝ち、翌2009年1月20日の大統領就任式を経て第44代アメリカ合衆国大統領となった。就任の瞬間から厳しい経済問題が待ち構えていた。

子どもたちは手紙の中で「増税」「医療保険」「奨学金」について大統領に支援を願っている。4年後に大学に行きたいと言う13歳にとっては、まさに切実な問題だ。子どもたちはまた、街頭で見掛けるホームレスの救済も願っている。「国民全員に毎日10ドルずつ配る」提案がある。ベーシック・インカムを、そうとは知らずに考えついているのだ。(アイスクリームを配る提案もある!)

イラク/アフガン戦争も続いていた。ある少年は「イトコが戦争に行っていた時、とても心配でした」と綴っている。アメリカの子どもにとって戦争は家族が派兵する、ごく身近な事象だ。

移民問題もある。自身はアメリカ生まれだが中南米の祖国に残っている家族をアメリカに呼び寄せる支援をオバマ大統領に願う子ども。家族がキューバ出身で、キューバの当時の窮状を連綿と訴える子ども。

少なくない子どもが自分が大統領であれば何をするかを書いている。「悪い麻薬」を根絶したい7歳児がいる。近所の犯罪を無くしたい子どもがいる。「世界中から好かれていないアメリカ」をなんとかするためにオバマ大統領の手助けをしたい子どもがいる。長官か補佐官に子どもを任命してはどうかと提案する子どもがいる。環境問題を憂い、「水で走る車」を思い付いた子どももいる。

難題を抱えた新米のオバマ大統領を応援する子どももいた。「心配しないで。私と、私の家族と、私の友だちと、私の学校が応援します」(13歳)


■「You are cool.」

子どもたちは自分とオバマ大統領の共通点を見つけようと一生懸命だ。ある7歳の男の子は「ボクもシカゴ出身で、人種ミックスで、カーリーヘアです」と書いている。ある女の子は自分はアラブ系で、オバマ大統領も「半分アラブ系」だと聞いたと書いている。残念ながら、これは大統領選中に広まった誤解なのだが。

他にも「学校に来てください」「子どもと大統領が話せる電話を作ってほしい」など、子どもたちはオバマ大統領をとても身近に感じている。5歳の女の子は「あなたのお家で会えますか?」と書いている。当時11歳と8歳だったオバマ大統領の娘マリアとサーシャに触れたものも多い。年齢が近いだけに、なおいっそうの親近感があったのだろう。オバマ大統領が当選の暁に娘たちに飼うと約束した犬について尋ねるものもある(後にポルトガル・ウォーター・ドッグ種のボーとサニーが飼われることとなった)。ミシェルがあなたを助けますというものも何通かあった。

オバマ大統領は全国民から寄せられる手紙を毎日10通ずつ読んでいる。出先で市民に歓待される際、必ずといっていいほど幼い子どもを抱き上げる。ホワイトハウスで毎年子どもの科学フェスティバルを開催し、子どもたちの発明品を見て回る。黒人とラティーノの少年支援プロジェクトを開始している。

オバマ大統領は子どもに夢と希望を抱かせることが出来る人物だった。子どもたちに「自分もああなりたい」と思わせる大統領だった。子どもたちはオバマ大統領を「Cool」だと思った。子どもたちはオバマ大統領と躊躇なく言葉を交わせた。

だからこそ子どもたちは手紙の中で率直に「ボクの家族は貧しいです」と言い、助けを求めることができた。彼らが手紙で訴えた問題は、今も重要な課題であり続けている。それらを全て解決できれば、アメリカと世界は今よりはるかに良くなるはずだ。冗談でもなんでもなく、大統領と政府は子どもの声にもっと耳を傾けるべきなのかもしれない。

8年前に手紙を書いた5歳から13歳の子どもたちは今13歳から21歳となっている。彼らにもう一度、オバマ大統領への手紙を書いてほしい。過去8年間に何を思い、何をして、これから先、大統領ではなくなるバラク・オバマに何を望み、トランプが大統領となる今後のアメリカをどう考えているのか。ぜひ聞かせて欲しい。

「あなたはぜったいに悪い言葉を使わないと思います」(7歳)




連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」(バックナンバー)




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author:堂本かおる, category:オバマ大統領, 22:08
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黒人の街ハーレムとゴスペル教会〜映画『ザ・バース・オブ・ア・ネイション』

黒人の街ハーレムとゴスペル教会〜映画『ザ・バース・オブ・ア・ネイション』

 ハーレムには教会が約180軒ある。密集度は日本のコンビニどころではない。ハーレム中のあちこちで教会が向かい合わせに、または隣り合わせに建っている。規模も建築様式もいろいろだ。大きく美しく荘厳で「これぞまさに教会!」という外観ゆえに映画のロケに使われるものもあれば、“ストアフロント・チャーチ”と呼ばれる、店舗だったところを借りて教会として使っているささやかなものもある。

 こんなふうだから日曜の朝のハーレムは世界中からやってくるゴスペル教会目的の観光客で文字どおりに溢れてしまう。優れたゴスペル・クワイアを持つ大きな教会の前には長蛇の列ができる。観光シーズンの夏には並んでも入り切れないことすらある。


写真:K. Domoto

 ゴスペル教会にやってくる観光客は圧倒的にヨーロッパ人で、近年は特にフランス人が多いように感じる。クリスチャンも少なくないはずだが、黒人教会のゴスペル、そして礼拝そのものが自分たちの教会のそれとは全く異なるゆえに観光として成り立ってしまうのだ。

 ゴスペル歌唱は日曜礼拝の一部であり、礼拝の最重要部分は牧師による説教だ。しかし黒人教会の場合は音楽、つまりゴスペルも非常に重要であり、長い時間が割かれる。日本から訪れる人が驚くことのひとつが、ゴスペル・クワイアのバックバンドにドラムがあることだ。カトリック教会の静謐にして壮麗な聖歌をイメージしている人は不思議がる。だが、黒人教会の多くはカトリックではなくプロテスタントであり、そして黒人音楽はジャンルを問わず、リズムこそが命なのである。いったん演奏と歌が始まれば、あとは説明不要なのだが。

 それでもゴスペルとは、つまり賛美歌であって、歌詞はすべて神への賛辞。どの曲でも「神を讃えよう」「神は素晴らしい」「神は万能」「神は他の何ものにも代え難い」といったフレーズが繰り返され、合間に「ハレルヤ!」「エイメン!」の声が挟まれる。

 ちなみに日本に於けるカトリック教会と黒人教会ゴスペルの混同は、映画『天使にラブソングを!』によってもたらされた。あの映画はウーピー・ゴールドバーグ演じる黒人キャバレーシンガーが白人ばかりの厳格なカトリック教会の尼僧たちに黒人教会式のゴスペルを歌わせ、思いっきりの開放感を与えるという物語だった。


■映画『ザ・バース・オブ・ア・ネイション』

 私自身はクリスチャンではない。しかし黒人教会の在り方を知ることは黒人文化と黒人社会を理解するための大きな助けになると考えている。

 昨年、アメリカでは黒人とキリスト教のなれそめを描いた『The Birth of a Nation』という優れた映画が公開された。ナット・ターナー(1800-1831)という実在の奴隷の伝記映画だ。幼い頃から聡明だったターナーは黒人奴隷でありながら聖書を学んで熱心なクリスチャンとなり、奴隷たちにキリスト教の教えを説いた。奴隷主がターナーに説教をさせた目的は、「奴隷主の言うがままに働けば天国に行ける」と信仰を利用して奴隷を使うことだった。自身の意思とは異なる目的で説教を続けざるを得なかったターナーは、やがて白人への謀反を企てる。奴隷たちを組織し、大量の白人を殺害する。だが奴隷たちも瞬く間に殺され、ターナーも処刑されてしまう。

 劇中、ターナーの説教がどんどんと白熱するシーンがある。白人に命じられ、銃を持った白人の前で奴隷を奴隷のまま繋ぎ留めておくための説教だった。ターナーは黒人を苦しめ続ける悪魔のような白人たちへの報復の闘いの物語を祈りの言葉に忍ばせた。

 「私は祈り、あなたは歌う。神への新しい歌を!」

 奴隷たちはターナーの言葉に呼応し、精神を高揚させ、両手を天に差し出し、涙を流し、足を踏み鳴らして祈る。現代の黒人教会の祈りのシーンと全く同じだ。200年も昔のことであり、録音や記録が残っているわけでもなく、この祈りのシーンが実際のターナーと奴隷たちの様子にどれほど忠実なのかは知る由もないが、黒人教会特有の祈りのスタイルがこうして出来上がっていったであろうことは想像に難くない。黒人たちは奴隷解放後も現在に至るまで延々と続く人種差別と、それに基づく貧困などさまざまな困難を抱えている。信仰と教会は今も精神の寄りどころとして無くてはならない存在なのだ。



※『The Birth of a Nation』はサンダンス映画祭で絶賛されてアカデミー賞の呼び声も高かったたものの、主役・監督・原作・脚本のネイト・パーカーの過去のレイプ事件が報じられたことにより2016年10月の公開時には広告もほとんど為されず、興行成績も不振。賞レースからも漏れ、国外公開もキャンセルとなった。KKKを描いた1915年の映画『The Birth of a Nation』(邦題:国民の創世)と同じタイトルなのはパーカーの意図による。


■大統領からラッパーまで

 現代の黒人教会に足を運んでみると、当然だが至って平和的だ。教会員同士は笑顔で挨拶し、ハグや握手が繰り返される。ゴスペルが熱く、ソウルフルに、朗らかに、歓喜をもって歌われ、時にはシニア教会員によるダンスや子どもの合唱もある。牧師の説教があり、教会員へのお知らせもある。聖書の勉強会やイベントの告知だけでなく、教会員やその家族が亡くなったり、若い教会員が大学進学のために地元を離れるといったことが報告される。教会員たちはお互いを「ファミリー」と捉えている。

 牧師の話の内容は多岐に亘る。ある日、女性牧師が聖書の中の物語〜夫に先立たれた未亡人が息子まで亡くしてしまう〜を語った。牧師はこの話を現代の女性に置き換えた。

 「夫がアテにならなくて、息子までダメになっちゃって、そんな時に他人に『大丈夫よ』なんて言われてもどうしようもないですよね!でも、イエスは貴女を見ているのです!」

 ナット・ターナーと同じ手法だ。神の話、聖書の話を生身の信者に置き換え、リアリティをもって訴えかけていく。

 こうした礼拝中に気付くのが、幼い子どもたちの存在だ。親に抱っこされた赤ちゃんもいる。歌詞の内容は分からずとも、ゴスペルのリズムに合わせて身体を揺らしている。リズムを楽しんでいることが顔付きから分かる。そのうちに少しずつ言葉が分かるようになるとゴスペルの歌詞、牧師の話を理解していく。家庭でもクリスチャンの親からクリスチャンとしての価値観を日常生活の中で教わる。こうして子どもたちは自然とクリスチャンに育っていく。ある程度年齢が上がると教会に通わなくなる子どもも多いが、その時点ですでにクリスチャンだ。アメリカでは大統領バラク・オバマからラッパーたちまで、圧倒的多数の黒人がキリスト教徒なのである。(続く)



写真:K. Domoto



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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 18:37
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黒人の子どもにオバマ大統領が必要だった理由〜ヒューマン・バラク・オバマ第11回

黒人の子どもにオバマ大統領が必要だった理由〜ヒューマン・バラク・オバマ第11回

■人間としてのバラク・オバマと、彼がアメリカに与えた影響を描く連載■


 オバマ大統領が無類の子ども好きなことはよく知られている。


 ホワイトハウスにはピート・ソウザという専属フォトグラファーがいて、ホワイトハウス内はもちろん、オバマ大統領が行くところどこでも同行し、大量の写真を撮ってはホワイトハウス公式ウエブサイトや公式インスタグラムにアップしている。各メディアもソウザ氏の写真を使うことが多い。政治的な緊張感が漂う写真も多いが、目を引くのは子どもとオバマ大統領の写真だ。



■オバマ大統領はホワイトハウス職員に子どもが生まれたと聞くや、「連れてきて」と頼むという。職員も激務のはずなのでそうそう簡単ではないと思えるのだが、それでも皆、連れてくる。赤ちゃんは大統領の執務室、オーバル・オフォスのカーペット敷きの床をハイハイし、オバマ大統領はスーツ姿のまま跪いて一緒に遊ぶ。時には床に寝転び、赤ちゃんを“高い高い”する。

●執務室の床で赤ちゃんと遊ぶ(写真)

●ホワイトハウス職員の赤ちゃんとご対面(写真)

●「いないいないばあ」(写真)




■オバマ大統領が全米各地、世界各国に出掛けると、必ず市民が歓迎のために集まる。オバマ大統領は人々と握手し、中に赤ちゃんを連れた人がいると必ずといっていいほど赤ちゃんを抱き上げる。過去8年間でオバマ大統領は世界中のいったいどれほどの赤ちゃんを抱っこしたのだろうか。

●赤ちゃんを抱き上げる(写真)

●プラハの米国大使館で赤ちゃんを抱っこ(写真)




■ソウザ氏によると、幼児は当然カメラなど気にせず思うままに行動する。ゆえにとても面白い被写体となる。

●お医者さんごっこ(写真)

●幼稚園で園児と共に(写真)

●時にはなついてもらえないことも(写真)




■子どもは大人が本気で自分を気に掛けているかどうかを本能的に知る。子どもたちにとっては大統領とはいえ、単に初めて会う“おじさん”に過ぎない。それでもオバマ大統領と共に撮影された子どもたちは全幅の信頼を寄せた表情で大統領に抱きついたり、大統領の目を見つめていたりする。


●男の子の頭をなでる(写真)

●リンカーンの肖像の前で(写真)

●ミネソタの学校にて、抱きつかれる(写真)




■もう少し年齢が上がり、大統領とはどういった立場の人かを理解している子どもになると、憧れと敬意の混じった眼差しでオバマ大統領を見つめている。

●オバマケアについての演説を聞く少年(写真)

●ホワウトハウス恒例の子ども科学フェアで大統領を撮影する少女(写真)

●サウスカロライナ州黒人教会乱射事件の犠牲者の娘たち(写真)




■オバマ大統領は人種もエスニックも関係なく、全ての子どもが好きだ。子どもたちも同じ。

●オバマ大統領のいちごパイをほうばる少年(写真)

●ローマ教皇に手紙を渡した不法移民の娘をホワイトハウスに招待(写真)

●マレーシアで難民の子どもたちと語る(写真)




■だが、奴隷制に基づく根強い黒人差別が今も残るアメリカゆえに、黒人の子どもにとって米国史上初の黒人大統領には格段の意味がある。それを象徴するのが、この写真だ。オバマ大統領が就任した2009年。ブッシュ政権に仕えていたホワイトハウス職員が「ホワイトハウスを去る前にぜひ大統領に謁見したい」と願い、実現した際のもの。

●オバマ大統領の髪をさわる5歳のジェイコブ(写真)

 以下は職員の息子で当時5歳のジェイコブとオバマ大統領の会話。

ジェイコブ「……ボクの髪が大統領の髪と同じか知りたいです」

大統領「自分で触ってみたら?」

ジェイコブ(ためらう)

大統領「触って、ほら!」(と頭を下げる)

ジェイコブ(触る)

大統領「どう?」

ジェイコブ「はい、同じです」

 黒人にとって肌の色だけでなく、髪の質も黒人であることの強い象徴であり、プライドとなることもあれば、白人優位の社会にあって大きなコンプレックスにもなる。オバマ大統領の存在は黒人の子どもに「自分と同じ外観の人が大統領なんだ!」という驚きと、「だったら自分も大統領になれるかもしれない」という希望(Hope)を与えた。歴史がもたらすダメージが今もあるからこそ、黒人の子どもには勇気付け、動機付けが必要となる。

 ホワイトハウスの壁に飾られているこの写真は、ワシントンD.C.のスミソニアン・アフリカン・アメリカン歴史文化博物館にも展示されることとなった。

 “大統領とファーストレディとして、バラクと私は同じ取り組み方をしています。なぜなら私たちの言葉と行動は私たちの娘だけでなく、アメリカ中の子どもにとって重要だからです。「テレビであなたたちを見ました。学校の作文であなたたちのことを書きました」という子どもたち。夫を尊敬の眼差しで見上げ、希望で大きく目を見開き、「僕の髪も大統領みたい?」と思うあの小さな黒人の男の子みたいな子どもたちにとって。”(ミシェル・オバマ)

●執務室で大統領とセルフィーを撮る黒人の兄弟(写真)

 大統領は政治的使命を果たせば子ども好きである必要はない。しかし、オバマ大統領の個人的な資質である子ども好きは、この国の多くの子どもに大きな夢と希望を与えた。子どもたちはやがて国の将来を担っていく。オバマ大統領8年間の最大の功績は、子どもという国の礎を培ったことかもしれない。

 

 

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ヒューマン・バラク・オバマ
第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」
第2回:バラク・オバマは「黒人」なのか〜人種ミックスの孤独

第3回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために
第4回:“二重国籍疑惑”の大統領候補たち〜「生まれつきのアメリカ人」とは?
第5回:ドナルド・トランプを大統領にしてはいけない理由
第6回:大統領はクリスチャン〜米国大統領選と宗教
第7回:不法滞在者となってしまった子どもたち〜合法化の道を開いたオバマ、閉ざそうとするトランプ
第8回:不当長期刑のドラッグディーラー1,300人を恩赦〜法の不平等を正す
第9回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために(全文掲載)
第10回:ミシェル・オバマを「サル」〜メディアを読まない医師・教師・町長





ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
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author:堂本かおる, category:オバマ大統領, 09:34
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ミシェル・オバマを「サル」呼ばわり〜メディアを読まない医師・教師・町長 〜ヒューマン・バラク・オバマ第10回
ミシェル・オバマを「サル」呼ばわり〜メディアを読まない医師・教師・町長 〜ヒューマン・バラク・オバマ第10回

 「ヒューマン・バラク・オバマ」シリーズの一環として、今回はミシェル・オバマの人生について書くつもりだった。ファーストレディとなる前は錚々たるビジネス・キャリアを築き、ホワイトハウス入り後は外交的でフレンドリーなキャラクターを披露し、数々の重要な社会貢献を行い、同時にファッション・アイコンにもなったミシェル。なにより夫バラク・オバマ大統領とこれ以上はないほどの見事なパートナーシップを発揮。ミシェルは万人に愛され、昨年の大統領選で米国史上初の女性大統領になると思われていたヒラリー・クリントンが破れるや、たちまち「ミシェルを次期大統領に!」の声が巻き起こった。

 それほどの人気を持つミシェルゆえに、逆にレイシストのターゲットになり続けている。大統領選後、ミシェルへの誹謗中傷事件が大きく報じられただけで4件ある。いずれもミシェルを黒人への典型的な差別表現である「サル」呼ばわりしたものだ。驚くべきは4件ともトランプのコアな支持層とされた貧しい労働者ではなく、団体幹部と町長、医師、政治家志望で教育委員会メンバーのビジネスパーソン、そして教師によって為されたという部分だ。大統領選中からトランプ支持者の多くが主流メディアを嫌い、偽ニュースに翻弄されたと報じられていたが、今回の4件はそれが高学歴者にも広がっていることを示す出来事なのである。


■「ヒールを履いたサル」

 ウェストバージニア州の小さな町、クレイ郡。昨年11月の大統領選直後、パメラ(パム)・テイラーという女性がフェイスブックに以下のコメントを書き込んだ。

「ホワイトハウスに上品で、美しくて、凛としたファーストレディを迎えることにワクワクする。ヒールを履いたサルを見るのにウンザリなのよ」

 テイラーは政府からの基金を郡内の高齢者と低所得者に配分するNPOの所長だった。この書き込みを見た同郡の町長、ビバリー・ウェイリングは「パム、よくぞ言ってくれた」とリプライした。

 たちまち大きな非難が巻き起こり、全米のメディアで報じられた。二人を解雇するためのオンライン署名は20万人を超えた。町長は即、辞任。テイラーはいったん停職となった後、12月に解雇された。二人とも謝罪コメントの中で「私はレイシストではない」と主張している。さらにテイラーは「脅迫を受け取った」、激しい批判は「私へのヘイトクライムだ」と語ったとも伝えられている。

 クレイ郡の人口は8,900人。白人が98%を占めている。黒人はわずか0.02%とあり、換算すると2人未満となる。


■「モンキー・フェイス」

 12月初頭、コロラド州の小児麻酔専門医ミシェル・ヘレンはフェイスブックでミシェル・オバマを称賛する書き込みを読んだ後、以下の書き込みを行った。

「サル顔で、ずさんな黒人英語!!! ホラ!!! (これを書いて)気分がいいけれど、私はレイシストじゃない!!」

 これも瞬く間に非難囂々となり、ヘレンはメディアに対して「“モンキー・フェイス”が侮辱的だとは思わなかった」と苦しい言い訳をしている。

 ヘレンは病院を解雇され、教鞭を取っていたデンバー・メディカル・スクールも学生からの苦情により解雇された。



■「ゴリラと洞穴で暮せ」

 カール・パラディノはニューヨーク州北西部のバッファローという都市の不動産業者であり、同市の教育委員会のメンバー。トランプの友人であり、昨年の大統領選ではニューヨーク州のトランプ選挙キャンペーン共同委員長を務めた人物だ。前回のニューヨーク州知事選に立候補もしているが、民主党の現職知事に破れている。

 パラディノはクリスマス直前に地元の週刊新聞社からメールによるアンケートを受け取り、以下の内容を返信した。

Q:2017年に起こって欲しいことは?

A:バラク・オバマがウシとヤってるところを見つかって狂牛病に罹ること。裁判の前に死に、国家への叛乱煽動と背信で有罪になり、ジハーディストの同房囚人に最初は善人と思われた後に首を切断されて一週間前に死に、牧草地に埋葬されたバレリー・ジャレットの隣りに埋められること。

※バレリー・ジャレットはホワイトハウス上級アドバイザーでオバマ大統領の親しい友人

Q:2017年にうっちゃってしまいたいことは?

A:ミシェル・オバマ。男に戻してジンバブエの奥地に放ったら、ゴリラのマキシーと洞穴で快適に暮らせるだろう。

 現在、パラディノは激しく非難されているが、今回の事件以前からレイシストとして知られる人物だけに当初は「これくらい、なんだ」という態度を取った。だが、教育委員会辞任要求の声が高まると、長文の謝罪文を出した。

 謝罪はあくまで「貧困のサイクルに捉えられたマイノリティの子どもたち」に向けられ、同時に自分がいかに貧者と子どもたちに尽くしているかを長々と綴っている。ミシェルとオバマ大統領への謝罪はなく、逆に「エリート集団」を率い、「アメリカの価値観に対する裏切り者」であるにもかかわらず、「主流のメディア」が称賛するため、自分が「ユーモア」で貶めたとある。

 「ユーモア」を込めたアンケート回答は友人たちにジョークとしてメールするつもりだったが、うっかり新聞社に返信してしまったと釈明にならない釈明をしている。さらに、この件で自分を非難する層を「今は進歩的な活動家と呼ばれている寄生虫」と表し、「トランプによる教育改革をせねばならない」ので、「教育委員会を辞任はしない」とある。最後は「私はもちろんレイシストではない」で締められている。

 長文であることを別にすると、思考があちこちに飛ぶ様が驚くほどトランプを思い起こさせる手紙だが、トランプ派の考えを知る手がかりになる。

 バッファローはニューヨーク州だが、工業が衰退した中西部エリアを指す“ラストベルト”に含まれる。1960年代以降に経済が急降下し、今では住人の3人に1人が貧困。衰退に伴い、白人が減ってマイノリティが増え、現在は白人46%、黒人39%、ヒスパニック11%、アジア系3%の比率。全米の人口25万人以上の都市の中ではマイアミ、クリーブランドに次いで3番目に貧しいとデータが出ている。パラディノが言うように「エリート」「主流派メディア」「プログレッシブ(進歩派)」が嫌われる土壌なのである。

 それでもパラディノの言葉を教育者にふさわしくないと考える住人は年末ギリギリまでパラディノの辞任要求デモを続けた。教育委員会は12月29日にパラディノに辞任を求める採決を行った。パラディノが辞任しない場合は州の教育庁に訴えるとのこと。


■「ファースト・チンパンジー」

 アーカンソー州の公立高校の科学教師、トレント・ベネットはクリスマス・イブに「ミシェル・オバマはアメリカのファースト・チンパンジー」とフェイスブックに書き込み、年内に解雇された。

 オバマを "Obummer" と綴っているのは、"bummer"(嫌なこと、不愉快なこと)との掛け合わせと思われる。そのコメントを批判されると、「あの嫌らしいチンパンジーと、ダンナのクモザルが永久に居なくなるのはいい気分だ」と返信。別の書き込みでは独立戦争時の英国に対する暴動(叛乱)と、近年の黒人への警察暴力から派生した暴動を比較している。

 「これらの暴動の違いは……1776年は課税と抑圧の象徴を打ち壊すことだった。(メディアによる伏せ字)なサルどもはゴロツキ(伏せ字)みたいに、それを略奪と窃盗の言い訳にしている。『オレがどれほど(伏せ字)なロクデナシか見てみろ』以外のメッセージはない」

 この教師が勤務していた高校はアーカンソー州ホットスプリング郡にある。人口3万人。人種構成は白人87%、黒人10%で、他の人種はほとんどいない。


■ニュースを読まない高学歴者

 黒人がいつまでたっても「サル」と呼ばれ続けることに驚きを隠せないが、これがアメリカの実態なのである。同様の差別は一般の黒人にも起こっているが、ミシェル・オバマのような成功者は「黒人のくせに」と妬みの対象となり、さらには大統領夫人という立場から「自国が黒人に統治された」ことへの激しい怒りが含まれる。

 それよりも驚かされるのは、全員大卒または院卒でまともな職に就いていながら、メディアに目を通していないことだ。大統領選直後にトランプ当選に興奮して「ヒールを履いたサル」と書いた団体幹部と町長の件を知っていれば、同じようにフェイスブックに「サル」の書き込みはしなかっただろう。高校教師はいまだに「オバマはケニア生まれ」とも書いていたという。オバマ=ケニア生まれ説を延々と唱えてきたトランプでさえ選挙戦終盤には嫌々ながらも「オバマはアメリカ人」と認めたが、それを知らなかったのか。または「選挙戦略上、仕方なく認めただけ」と思っているのか。医師は「リベラル」嫌悪も見せていた。狂牛病、斬首など身内のジョークとしても度の過ぎたことを書いたパラディノははっきりと「主流メディア」を嫌っていることを示している。

 極度の黒人差別主義者は保守派でもあり、「リベラル」な主流メディアを嫌って意図的に無視しているのである。しかし、上記の件は各地域のローカル・メディアも報じているはずだ。上記の5人はそれすら無視することにより自身の生活を破滅させてしまったわけだが、ことは個々の憎悪者に留まらない。教師や教授を含め、他者に強い影響力を持つ高学歴者が報道に目を通さない社会が出来上がりつつあるのだ。これまで以上に相手の人格や能力を鑑みず、肌の色によって見下すことが「普通」になる可能性がある。何をどう頑張っても「サル」と呼ばれるマイノリティは快復不可能なまでに傷付き、社会にも歪みが生じる。

 常に凛と背筋を伸ばし、その表情から強い精神力が伺いしれるミシェルにしても、度重なる暴言を聞き流がせているとは到底思えない。深く傷付いているに違いない。

 退任後のプランを聞かれたオバマ大統領が「妻を労う」ためにも一年間は自宅に留まって本を書くと言った理由はここにある。

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ヒューマン・バラク・オバマ
第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」
第2回:バラク・オバマは「黒人」なのか〜人種ミックスの孤独
第3回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために
第4回:“二重国籍疑惑”の大統領候補たち〜「生まれつきのアメリカ人」とは?
第5回:ドナルド・トランプを大統領にしてはいけない理由
第6回:大統領はクリスチャン〜米国大統領選と宗教
第7回:不法滞在者となってしまった子どもたち〜合法化の道を開いたオバマ、閉ざそうとするトランプ
第8回:不当長期刑のドラッグディーラー1,300人を恩赦〜法の不平等を正す
第9回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために(全文最掲載)





ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
ワシントンハイツ・ツアー(スペイン語の街 "In the Heights"はここで生まれた!)

 

 

 

 

 

author:堂本かおる, category:オバマ大統領, 01:45
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