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大統領はクリスチャン〜米国大統領選と宗教:ヒューマン・バラク・オバマ第6回

 

大統領はクリスチャン〜米国大統領選と宗教:ヒューマン・バラク・オバマ第6回

■人間としてのバラク・オバマと、彼がアメリカに与えた影響を描く連載■

アメリカ大統領選と宗教は切っても切れない関係にある。

アメリカは国教を定めていないが実質的にはキリスト教国であり、これも法で定められているわけではないが、大統領はクリスチャンでなければならない。オバマ大統領も含め、歴代44人の大統領は全員がクリスチャンだ。(*)しかもジョン・F・ケネディが唯一のカトリックであり、他はすべてプロテスタント。今回、もしバーニー・サンダースが勝っていれば史上初のユダヤ教徒の大統領の誕生となったが、実現しなかった。

サンダースがヒラリー・クリントンに破れたのは宗教が少なくとも直接の理由ではないが、黒人差別、女性への偏見が根強く残る国でありながら結果的にまずは黒人が大統領になり、次いで今、史上初の女性大統領の誕生の可能性が濃厚となり、それでもキリスト教徒以外の大統領の誕生は見送られることとなった。

ちなみにサンダースが立候補を表明した際、グーグルでは盛んに「サンダースはユダヤ系なのか?」が検索され、「サンダースの年齢は?」を上回ったと言う。若々しさも重要な要素であるアメリカ大統領選だが、サンダースのいかにも高齢な外観より、ユダヤ教徒であるか否かが有権者の関心を引いたのだ。

*リンカーンなど初期の数人の大統領の信仰心を疑問視する歴史家もいるが、少なくとも対外的には全員がクリスチャンだった

■中絶と同性婚

大統領選のたびに論争となるのが中絶と同性婚の是非だ。どちらも敬虔なキリスト教徒は大反対する。同性婚については、ついに米国最高裁が全米規模で認める裁定を下して決着したと思われたが、すると「宗教の自由法」が持ち出された。たとえば店主が自分の信仰に基づき、同性愛者とのビジネスを拒否できるといった法律だ。あるベーカリーが同性婚の披露宴用のケーキのオーダーを拒否した件が報じられ、論争となった。昨年、インディアナ州でこの法案に署名したのは現在、共和党の副大統領候補となっているマイク・ペンス州知事だ。

アメリカにはキリスト教系のメディアもあり、各候補の政策をクリスチャンの視点から詳しく報じる。クリスチャンではあっても信仰心の篤さ、政策との兼ね合いはそれぞれ異なるため、こうしたメディアはそこを追求する。

もっともやっかいなのは無信仰者、無神論者だ。現在のアメリカで無神論者を名乗ると大統領には到底なれず、信仰の強い地域では一般人としての生活もし辛くなる。無信仰者も同様だ。今回、リバタリアンとして立候補しているゲイリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事はディベートで信仰について聞かれ、しどろもどろになった。クリスチャン家庭の出身だがほとんど信仰心は無く、しかしそれを明言するわけにもいかず、答え方に窮したのだった。

■宗教と人種

アメリカでは宗教は純然たる信仰だけの問題ではない。国の歴史上、宗教と人種・民族・出身国が強くリンクする。ゆえにオバマ大統領は自身の信仰について、非常な苦労を強いられてきた。

よく知られている件として、オバマ大統領の父親がケニア人であったことからアンチ・オバマ派が「オバマはケニア生まれでは?」「ならばイスラム教徒では?」と騒ぎ、ドナルド・トランプが「出生証明書を公開しろ」と叫び続けた問題がある。

この件には複数の偏見と疑念が重なっていた。まずは「ケニア人」「アフリカ人」「黒人」を大統領にするわけにはいかないという人種偏見。次に911テロ後に広がったイスラム教への恐怖。このふたつがない交ぜになり、さらにはイスラム教徒=アラブ人と思い込むアンチ・オバマ派も出た。2008年、共和党大統領候補ジョン・マケインの選挙集会中、ある支持者がマケインに向って「オバマはアラブ人でしょ?」と問いかけ、マケインが返答に四苦八苦したシーンは当時、大きく報じられた。

この問題はつい先日、トランプがようやく「オバマ大統領はアメリカ生まれ」と認めるまで延々8年間も続いたが、同時にオバマ大統領が信者として所属していたキリスト教会の件でも揉めたのは皮肉としか言いようがない。

オバマ大統領はクリスチャンであり、地元シカゴにあるトリニティ・ユナイテッド教会のメンバーだった。夫妻の結婚式と二人の娘の洗礼式は同教会のジェレマイア・ライト牧師が執り行っている。

このライト牧師の教会での過去の説教の内容が、2008年の大統領選キャンペーン中にメディアによって取り上げられた。同教会はいわゆる黒人教会であり、ライト牧師の説教には白人への強い非難が含まれていた。また、オバマ大統領(当時は上院議員)と民主党候補の座を争っていたヒラリー・クリントンを黒人ではないが故に黒人の苦しみは分からないと、これも強く批判していた。ライト牧師の言葉があまりに過激であったためオバマ大統領への批判も高まり、最終的にオバマ一家は同教会から脱会することとなった。

この件もまた、宗教そのものではなく、人種問題が取り沙汰されたのだった。

そして昨年、オバマ大統領は毎年恒例の「全米祈りの朝食」と呼ばれる会での演説の内容について共和党議員や保守派からの強い批判を浴びた。この会は米国議会とキリスト教団体の主宰により全米と世界各国から3,500人もの宗教関係者、政財界のトップ、知識層などが招かれるもので、2015年はダライラマも招待されていた。

キリスト教を基本とする場だけにオバマ大統領の演説も「神にすべての称賛を」から始まり、「この会は私自身の信仰の道を振り返ることができる場でもあります」など、キリスト教信者としての言葉に満ちていた。

しかし演説半ばでISIL (ISIS) に触れ、このような残酷な行為は他国や他宗教でのみ起こるのではなく、十字軍の遠征や宗教裁判が神の名において行われ、米国では奴隷制や人種差別がやはり神の名の下に行われたと語った。

言うまでもなく、ISISと十字軍を比較したことに対して猛烈な反発が起こった。ジム・ギルモア元ヴァージニア州知事(共和党)は「アメリカの全クリスチャンを傷付けた。オバマ大統領はアメリカの価値観を信じていない」と怒りを露にした。こうした反応をオバマ大統領は当然、予測していた。演説の後半には「アメリカは世界で最も宗教心の強い国である」「信仰と政府の区分の必要性」「宗教的マイノリティを攻撃してはならない」などと語っている。自身もキリスト教徒でありながら(キリスト教徒であるからこそ)、アメリカのキリスト教信仰の在り方、および政府との関わりを自己批判したのだった。

この宗教的視野の広さは生い立ちによって育まれたものと思われる。オバマ大統領の父親はケニア人でイスラム教徒であったが、それほど信仰熱心ではなかったようだ。しかし母の再婚相手はインドネシア人で、少年オバマは4年間をアジア最大のイスラム教国で過ごしている。ここでイスラム教への知識と理解を得たはずだ。これは現在のアメリカのリーダーとして貴重な資質と言える。「全米祈りの朝食」での演説にあったように、イスラム教過激派によるテロが頻発する時代ゆえに、イスラム教徒全般に偏見を抱き、忌避し、差別を続ければ事態は悪化こそすれ、決して良くはならない。ちなみにオバマ大統領は一連のテロ犯を「"イスラム教"過激派」と呼ぶことすら拒否し、これも批判されている。

いずれにせよ、アメリカを理解するにはアメリカにおけるキリスト教の在り方と影響力を知ることが必須となる。

■白人・男性・キリスト教徒

アメリカの上院議員は各州2名、全米50州でちょうど100人。オバマ大統領も含め、上院議員が大統領へ立候補するケースも多い。以下は現在の上院議員の宗教分布。プロテスタント、カトリック、モルモン教を合わせると88%がキリスト教徒。人種、性別のデータと併せると、やはり「白人・男性・キリスト教徒」が圧倒的多数派となる。

プロテスタント:55人
カトリック:26人
モルモン教:7人
ユダヤ教:9人
仏教:1人
無し:2人
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計100人



白人:95人
ヒスパニック:3人
黒人:2人
アジア系:1人
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計100人



男性:80人
女性:20人
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計100人

 

 

 

 

 

 

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ヒューマン・バラク・オバマ 第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」

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ヒューマン・バラク・オバマ 第3回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために

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author:堂本かおる, category:オバマ大統領, 07:51
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ハーレムにユリ・コウチヤマの壁画完成〜マルコムXの最期に居合せた日系アメリカ人活動家
ハーレムにユリ・コウチヤマの壁画完成〜マルコムXの最期に居合せた日系アメリカ人活動家

10月23日、日曜の午後。ニューヨークのハーレムでユリ・コウチヤマの壁画完成の記念イベントがあった。




ユリ・コウチヤマは日系二世でありながら1960年代のハーレムに家族と共に暮し、社会活動家となってマルコムXとも親好を結んだ人物。マルコムX暗殺の場にも居合せ、ライフ誌に掲載された瀕死のマルコムの頭を両手で支える写真はあまりにも有名だ。

ユリは日本からアメリカに移住した両親のもと、カリフォルニア州で1921年に生まれている。少女の頃から活発で聡明だったユリは短大でジャーナリズムとアートを専攻するが卒業の半年後に真珠湾攻撃が起り、父親はFBIに連行された挙げ句に亡くなってしまう。その後、父を欠いた一家は日系収容所に暮らすこととなる。

戦後、収容所を出たユリと、やはり日系二世の夫、ビルはニューヨークで新生活を始める。ハーレムの公営団地(通称プロジェクト)に落ち着いた夫婦は子どもを6人もうけ、同時にさまざまな地域活動、社会活動にのめりこんでゆく。

今回の壁画お披露目のイベントで、ユリとは古い知り合いだったというハーレムの男性がスピーチをした。 「ある時、ユリに『ジャパニーズなのになぜ黒人運動にかかわるのか?』と聞いたことがあります。ユリの返事は『私は日系収容所にいたの』でした。その言葉だけで十分でした」

"Aisians 4 Blacklives"


マルコムXもユリの熱心な活動に感服し、ユリ主宰の集会に顔を出したり、旅先から何通も絵はがきを送るなどしている。(参照:『ユリ 日系二世NYハーレムに生きる』著:中澤まゆみ)

高齢となった後も911テロ事件についてのコメントを発し、その内容が論争を呼ぶなど様々な活動を続けたユリも2014年に93歳で他界した。今年の誕生日(奇しくもマルコムXと同じ5月19日)には拡声器で演説する若き日の写真がグーグルのトップページのイラストにもなった。

日系人としては破格の生き方をしたユリだが、そのユニークさは家族にも及ぶ。ユリの6人の子どもたちはユダヤ系、アフリカン・アメリカン、インド系ブラック・トリニダード人、中国系、日系ハワイアンなど様々な伴侶を得た。その子どもたち〜今回の壁画プロジェクトの中心となったユリの孫たちもまた多様なパートナーを得ている。その結果が以下の写真だ。日系アメリカ人として生まれた自分の子、孫、ひ孫たちがこんなふうに世界を繋ぐとは、ユリ自身も想像だにしなかったに違いない。


壁画の前でマルコムXの言葉を読むユリのひ孫たち

ユリの親族と壁画プロジェクトの関係者たち


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author:堂本かおる, category:ハーレム, 00:40
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トランプ阻止にメディアの “暴言” は許されるのか〜「プッシー」「ブタ」「毒性の菌類」

トランプ阻止にメディアの “暴言” は許されるのか〜「プッシー」「ブタ」「毒性の菌類」


映画『ザ・バース・オブ・ア・ネイション』を観た。1800年代のアメリカ南部。奴隷の子として生まれ、奴隷ながらキリスト教の説教師となり、やがて奴隷による叛乱を企てて多くの白人を殺し、その罪で縛り首となった実在の人物、ナット・ターナーの物語だ。

とても重い内容ではあるが、重要な問い掛けがあった。

民主主義が通用しないのであれば、殺人は最終手段として許されるのか。

話し合い、陳情、選挙といった民主主義的な解決が不可能な状況にあれば、そしてそれが自分たちを生まれてから死ぬまで奴隷という一切自由のない立場に押し込め、時には拷問され、レイプされ、一歩間違えればいとも簡単に殺されてしまうというものであれば、相手を殺すしか道は無いのか。他に道が無ければ、そうすれば "究極の解決策" は許されるのか。

■国と国民の死を招くであろう大統領

現在、少なくとも先進国ではナット・ターナーほど極限の状況に置かれている者はあまりない。しかし、今のアメリカではドナルド・トランプが大統領になろうとしており、反トランプ派にとっては何がなんでも阻止しなければならない死活問題だ。トランプの度を遥かに超えた言動〜女性、人種的、宗教的マイノリティ、移民、障害者への徹底的な差別と抑圧、倫理観の欠落、政治知識の欠落、司法制度の無視〜を見ていると、トランプが大統領になれば人が死ぬと予想できる。女性への性的暴力を咎めることはしないだろう。トランプは自身の集会に抗議のためにやってくる黒人を自分の支持者が殴ることを止めない。したがって警察による黒人への暴力をシステム的に止める気もないだろう。シリアからの難民をイスラム教徒という理由で入国させない。自身を含む富裕層優遇策を採り、貧困層は極貧に陥るかもしれない。誰にも根拠が理解できない戦争を始めるかもしれない。すると多くの兵士が命を落とすだろう。

投票日まであと3週間。この間に出来うる限りのことをしてトランプを阻止せねばならない。メディアや識者たちも通常の、まともな方法ではもう無理だと感じ、いわば追い詰められ、これまでなら有り得ない言葉のチョイスを行っている。

■CNN朝の7時に「プッシー」

CNNコメンテイターのアナ・ナヴァロは共和党員でありながら徹底的なアンチ・トランプだ。例のロケバス内でのトランプと番組司会者との録音された会話がリークした後、やはりCNNコメンテイターでトランプ支持者のスコッティ・ネル・ヒューズがトランプを擁護し続けることに対して烈火の如く憤り、スコッティをぐうの音も出ないほど “言葉” で叩きのめした。

アナ「女性のプッシー(女性器のスラング)をワシ掴みにすると吹聴する男をどう思うの!」

スコッティ「その言葉を使わないで!私の娘も観ているのよ!」

アナ「私がこの言葉を使ったからといって気分を害することはないでしょう!あなたは自分が支持する男がこの言葉を使っても気分を害さないのだから!私は大統領に立候補していない、しかしトランプは大統領に立候補しているのよ!」


最後は怒鳴り合いとなったが、このやり取りによってアナは一躍 “スター” となってツイッターには賛辞が並び、他局のトーク番組のゲストに招かれた。ちなみにアナは普段から忌憚の無い物言いで知られるが良識派でもあり、トランプには品性がないことから大統領の資格無しと訴えている。今回の選挙後、アナがプッシーという単語を電波上で再び使うことはおそらくないのではないかと思われる。

■トランプは「毒性の菌類」

ニューヨークタイムスのコラムニスト、チャールズ・M・ブロウも強烈なアンチ・トランプ・コラムを書き続けている。時にやや難解なボキャブラリーを使いながらも生活体験に則した分かりやすい文を書くライターだが、トランプの人間性を語る最新のコラム『アメリカの最悪、ドナルド・トランプ』では驚くほどたくさんの過激な言葉を使っている。

・ブタのように振る舞う
・奇人の妄言
・テレビドラマ『マッド・メン』に出てくる狂人
・下劣な男
・毒性のマッチョ
・環境的ミソジニー(女性蔑視)
・拡散した人種差別主義
・拝金主義
・蔓延する反知性主義

こうした言葉を羅列し、結論として「トランプはアメリカの最悪」であり、「毒性の菌類のように拡散している」と結ばれている。

もちろん、単に「トランプはアホバカ間抜け」と言っているわけではない。トランプがこのような人物であることは既に知れ渡っているが、当選を食い止めるために再度分析し、列挙し、念を押しているのだ。万が一にも当選すれば国と自分自身の生活の崩壊に繋がる。それを阻止するためには常識的にみて妥当とされる政敵政策批判ではもう拉致があかないと判断し、自身のコラム史上もっとも過激な言葉を意図的に多数並べたに違いない。そしてニューヨークタイムスはこれを掲載した。

現代の政治コメンテイターやコラムニストを200年前の奴隷と比較することにはもちろん無理がある。しかし『ザ・バース・オブ・ア・ネイション』を観終わり、アナ・ナヴァロ、チャールズ・M・ブロウ、他のジャーナリストの “普通ではない” トランプ批判を聞いた時に、今、アメリカが如何に危機に瀕しているかを思い知らされたのである。---END---


The Birth of a Nation トレイラー
(1915年の同名映画(邦題:国民の創世)とは異なる新作)

 

 

 

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ヒューマン・バラク・オバマ 第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」

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author:堂本かおる, category:大統領選, 18:54
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「ゴッド・ブレス・アメリカ」を歌う資格 〜 "アメリカ人" の定義。
「ゴッド・ブレス・アメリカ」を歌う資格 〜 "アメリカ人" の定義。

必要があってあれこれ検索していて、偶然この画像に行き当たった。

3年前、メジャーリーグのオールスター戦開幕時にサルサ・シンガーのマーク・アンソニーが『ゴッド・ブレス・アメリカ』を歌うことになった。すると「なんでメキシコ人が」と文句を言う者たちが現れた。中にはラティーノへの侮蔑語を使う者もいた。

ちなみに野球選手には中南米各国からのラティーノが多い。アレックス・ロドリゲス選手もアメリカ生まれのドミニカ共和国系だった。つまり野球が上手ければ選手としてなら使ってやるが、ラティーノにアメリカを象徴させるわけにはいかないということなのだろう。

以下はその時のマーク・アンソニーのコメント。

「私はニューヨークで生まれ育った。私はアメリカ人で、プエルトリコ人で、プエルトリコは米国領だ」

「この曲を作ったアーヴィング・バーリンはロシア生まれのユダヤ系移民だった」

「私にこの曲を歌う資格がないなら、誰ならいいのだろう」




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ヒューマン・バラク・オバマ 第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」

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author:堂本かおる, category:ラティーノ, 06:05
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ドナルド・トランプを大統領にしてはいけない理由〜ヒューマン・バラク・オバマ第5回

ドナルド・トランプを大統領にしてはいけない理由。〜ヒューマン・バラク・オバマ第5回

■人間としてのバラク・オバマと、彼がアメリカに与えた影響を描く連載■

本選まで1ヶ月を切った時点でトランプの女性への性的ハラスメント問題が続出し、選挙戦はさらなるカオスとなっている。これまでは「ブタ」「汚らわしい動物」「生理で気が立っているのでは」など言葉による度を超えた侮蔑が問題となっていたわけだが、今回はロケバス内で録音された女性を「モノにする」会話が暴露され、そこでは「ビッチ」「ファック」「プッシー」と言った単語が連発されている。

トランプが対抗策としてビル・クリントンの過去のセックス・スキャンダルを持ち出し、大統領選はもはや低俗なタブロイド新聞の様相となっている。それを受け、「触られた」「キスをされた」「着替えを見られた」など、被害を受けた女性たちが現れた。こうしたトランプの過去のセックス・スキャンダルを掘り起こしているのはゴシップ紙ではなく、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズなど、いわゆる高級紙と呼ばれる大手メディアだ。

ポストやタイムズはゴシップ紙に成り下がったのではなく、トランプ当選を阻止するための手段としてこうした記事の掲載を始めた。トランプが政治に無知であることは周知の事実だが、一国を治める大統領として同等に問題とされているのがモラルの欠如だ。「白人・男性・異性愛者・健常者・キリスト教徒」である自分と同類以外の他者をすべて見下し、阻害、差別、攻撃し、自分が上位に立とうとする人間であることがすでに証明されてしまっている。今は女性へのハラスメントが取り沙汰されているが、トランプはこれまでにあらゆるグループを侮蔑している。以下はその一例である。

■ヒスパニック

トランプは昨年6月の大統領選への立候補表明演説ですでにメキシコ人を「レイプ犯、犯罪者、麻薬密売人」と呼んでいる。アメリカとメキシコの国境に壁を作り、費用はメキシコに払わせるとも宣言したが、国境線は3,200kmにも及ぶ。

今年5月には「メキシカン」の判事は公平な裁定を下せないと発言。これはトランプがかつて運営していた詐欺紛いのトランプ大学(実際にはビジネス・セミナーであり、大学ではない)を受講者からを訴えられ、その裁判の担当となったメキシコ系アメリカ人の判事に向けられたもの。判事はメキシカンであり、メキシコ国境に壁を作ろうとしている自分に不利な裁定を下すという主旨だった。この発言は法曹関係者を非常に憤らせた。第一に判事はアメリカ生まれのアメリカ人であり、次いで、法律家は人種も含めてバックグラウンドに関係なく、法のもとに公平・平等に裁定を行うという矜持を傷つけたのだった。

■アフリカン・アメリカン

トランプは1970年代に経営していた不動産会社のアパート賃貸について、黒人を故意に入居させないとして2度、訴えられている。1980年代、経営していたカジノで黒人従業員を著しく差別していたとの元従業員の談話がある。1989年、ニューヨークのセントラルパークで白人女性がレイプ暴行された件で5人の黒人とヒスパニックの少年が誤認逮捕された際、トランプは5人が未成年であるにもかかわらず、自費で「ニューヨークに死刑復活」を訴える新聞一面広告を打っている。後に真犯人が逮捕されたが、トランプは少年たち(現在は成人)への謝罪をおこなっていない。1990年代には経営するカジノなどで黒人従業員への雇用差別でやはり訴えられている。

オバマ大統領就任後、トランプは「オバマはケニア生まれで大統領の資格無し」と何年も訴え続けた。この件について今回の選挙戦の中で非難が高まり、ついに先月「オバマはアメリカ生まれ」と認めたものの謝罪はなく、「オバマに出生証明証を公開させたのは自分の功績」と開き直りの発言。

今回の選挙キャンペーン中、トランプの集会で「ブラック・ライブズ・マター」を唱えて抗議行動をおこなう黒人が男女を問わず、トランプ支持者に殴られたり、小突き回されることが幾度かあった。

今年2月、KKKの元リーダー、デヴィッド・デュークがトランプ支持を表明。この件についてCNNのアンカーマンに質問された際、トランプは「デュークのことは知らない」とのみ言い、デュークからの支持を退けることはしなかった。これを批判されたトランプは後日、インタビュー時はイヤフォンが不調で質問がよく聞こえなかったと釈明。ちなみにトランプの父親(故人)は1920 年代にKKKが暴動を起こした際に逮捕されている。逮捕の行状は不明。

■ムスリム

昨年12月にフロリダ州サンバーナディーノの障害者施設で乱射事件が起こった際、トランプは「全てのイスラム教徒の入国を全て、完全に遮断すべき」と発言。犯人は夫婦だった。夫はイリノイ州シカゴ生まれのパキスタン系。妻はパキスタン人で、夫との結婚を前提にK-1ビザ(通称フィアンセ・ビザ)でアメリカに入国後、結婚していた。 今年6月のフロリダ州オーランドのゲイ・クラブでの乱射事件の際には「反米テロの歴史が証明されている国からの移民を差し止めるべき」と発言。その際、犯人を「アフガニスタン出身」と発言したが、実際はニューヨーク生まれのアフガニスタン系だった。後に「犯人がアメリカにいたのは、両親をアメリカに入れたからだ」と言い直している。

CNNによると、今やテロリストはいわゆるイスラム国家だけでなく、世界40ヶ国に居住や活動の場を広げており、アメリカはそれら40ヶ国からの入国者に対して年間270万通以上のビザを発行。これを全て差し止めることは事実上、不可能と言える。

■軍人

7月に開催された民主党全国大会にイラクで戦死した兵士の両親が登場し、父親のカーン氏がヒラリー支援の演説を行うと同時にトランプを批判。翌日、トランプはカーン氏の妻が側に立つだけでスピーチを行わなかったのは「喋ることを許されていなかったのでは」と、イスラム教徒へのステレオタイプを揶揄。これに対し、他の戦死した兵士の遺族たちが謝罪を求めた。

トランプは昨年、2004年の共和党大統領候補だったジョン・マケイン下院議員について「マケインは(ベトナム戦争で)捕虜となったから戦争の英雄になった。私は捕まったりしない人間が好きだがね」とコメントし、マケイン議員のみならず、多くの軍人と家族、遺族を憤らせた。

■障害者

昨年11月、サウスカロライナ州での選挙キャンペーン集会の演説中に、トランプは手に障害を持つジャーナリストのモノマネをした。トランプは911テロによりWTCのツインビルが崩壊した後、ニューヨークに隣接するニュージャージー州で「何千人ものアラブ人が歓喜しているのを見た」と発言。発言の内容は911テロの数日後にワシントンポストに掲載されたコヴァレスキー記者の記事にある「歓喜し、パーティなど開いたと "される" 数人がFBIに捜査された」の部分に触発されたものと思われる。記事はFBIの活動を記したものであり、実際に歓喜する者がいたとは書かれていない。また、FBIの捜査でもそうしたグループは確認されていない。しかしトランプはコヴァレスキー記者は自身が書いた記事の内容を覚えていないのだとし、観衆の前で手を振るわせながら「覚えてないよ〜!覚えてないよ〜!」とモノマネをした。

 

コヴァレスキー記者のモノマネをするトランプ(16秒目から)



■アジア人

昨年8月、アイオワ州での選挙キャンペーン集会での演説中に、トランプはアジア人の訛りと態度のモノマネをしている。 「日本人、中国人と交渉する時、彼らは部屋に入るや否や、天気や野球については話さず、いきなり『案件をまとめたい!』と言う」とアジア系のアクセントでジョークを飛ばし、会場の笑いを誘った。

■LGBTQ

6月のゲイ・クラブ乱射事件の後、「大統領として持てる力を全て使い、LGBTQ市民を守ります!」と演説したトランプだが、過去の言動は反LGBT。最高裁判所の裁定により全米で同性婚が合法となった後、「大統領になったら同性婚反対の最高裁判事を指名し、覆す」と発言している。それ以前にも「ゴルフのパターをとても長いものに変える人が多いが、とてつもなく魅力がない。ヘンだ。私はあれが嫌いだ。私は伝統的だ」と、同性婚をゴルフのパターに例える話もしている。2011年の時点では、同性婚はおろかパートナーシップも「ノー&ノーだ」としている。

共和党副大統領候補でインディアナ州知事のペンスはさらに強烈なアンチLGBT。昨年、「信仰の自由法」に昨年サインし、同州で施行している。同法は、例えば商店主が「私の信仰に反するのでゲイの客に商品は売れない」、役所の職員が「私の信仰に反するので同性婚の申請書類を受け付けられない」といった言動を合法化してしまっている。

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8年前に史上初の黒人大統領が誕生して以来、マイノリティは大いに勇気付けられてきた。同時にマイノリティの躍進によって自身の優越感と既得権を無くすことに極度の恐怖を抱える者たちがレールを踏み外した。永年の間に減っていたKKKなどヘイト団体に所属する者の数が増えたというデータがある。

昔、KKKのターゲットは黒人とユダヤ教徒だった。それとは別の文脈で、女性は常に男性から抑圧されてきた。今、時代は代わり、ヘイトの対象はイスラム教徒、ヒスパニック、LGBT、さらにはアジア系にも広がりつつある。昔はマジョリティの視野には存在しなかった、もしくは差別の対象にすらならない取るに足らない存在だったグループが、今は狭窄な者たちの視界に入り、苛つかせている。

トランプ支持者がトランプを支持する理由には経済事情も含まれ、必ずしも人種などに基づくヘイトだけが理由ではないが、根底にあるのはそれだ。トランプが叫び続けるスローガン "Make America Great Again" (アメリカを再び偉大に)に共感する層の「偉大さ」とは、自分たちのみが数も能力も立場も秀で、特権を維持できることを指している。

こうした層は真の意味での知性も理解せず、オバマ大統領の知性に反感を抱き、「トランプこそ、我らの代弁者」と言う。トランプに米国大統領として外交と国政を行う能力と知識があるのか、そこに疑問は持たない。

私自身は、テレビ画面でこうした言動を繰り返す大統領を子どもたちに見せることを恐れている。オバマ大統領が過去8年間、人種や背景を問わずすべての子どもたちに見せた品位・知性・ユーモアも含めた人間性と未来への希望をドナルド・トランプはすべて反故にしてしまう。私がトランプをこの国の大統領にするわけにはいかないと考えるのは、これが理由なのだ。


 

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ヒューマン・バラク・オバマ 第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」

ヒューマン・バラク・オバマ 第2回:バラク・オバマは「黒人」なのか〜人種ミックスの孤独

ヒューマン・バラク・オバマ 第3回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために

ヒューマン・バラク・オバマ 第4回:“二重国籍疑惑”の大統領候補たち〜「生まれつきのアメリカ人」とは?




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author:堂本かおる, category:オバマ大統領, 20:53
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