ビヨンセと Jay Z、そして愛娘ブルーアイヴィー。ブラックミュージック界のみならず、現在のポピュラーミュージック・シーン随一のスーパーファミリーである。
ビヨンセが母親として非難されている娘ブルーアイヴィーの髪
この一家について、日本ではほとんど報道されない話題がある。ブルーアイヴィーの「髪」だ。今、2歳8ヶ月のブルーは、いつも全く何の手も加えない「ナチュラルヘア」。黒人の女の子はだいたいブレイズ(三つ編み)やコーンロウ(編み込み)、ブルーくらいの年令の乳幼児ならアフロパフと呼ばれるスタイルもよく見掛ける。小学生くらいになると、中にはリラクサーと呼ばれる黒人用のストレートパーマをかける子、ヘアエクステンションを入れるおしゃまさんもいる。いずれにせよ縮れているから何らかの処理を施してまとめてしまうわけだが、毎日強く編み続けることもパーマ液も子どもの繊細な肌や髪にはよくないとされている。
黒人の小さな女の子の一般的なヘアスタイル
成人女性に関しては、今や技術が発達し、お金・手間・時間さえかければどんなヘアスタイルも可能。だからビヨンセを始めとするセレブはもちろん、一般の女性も髪だけ見れば白人女性と見分けが付かなくなっている。
そこには深い歴史が潜んでいる。単に「おしゃれ」だけの事象ではない。私の友人(在米の日本人)はだんなさんが黒人。ミックスのお嬢ちゃんはふわふわの大きなカールした髪を持つ。友人はそれが気に入ってそのままにしているが、夫の実家に預けるとグランマが必ずガチガチに編んでしまうと言う。年配の世代にはそれが「身だしなみ」であり、黒人の縮れた髪をそのまま世間に晒してはならないのだ。
そうした歴史と社会背景にアンチを唱え、あえてナチュラルヘアをキープする女性たちがいる。ビヨンセの妹のソランジェもそうだ。
ナチュラルヘア派のソランジェ
しかし、姉のビヨンセは人種を越えた人気を博し、世界に君臨するエンターテイナー。常にウィッグ or ヘアエクステンションでフル装備。しかもブロンド。レブロンのCMは肌の色もかなり薄く仕上げたため、黒人女性の一部から「白人になろうとしているのか」と反発の声が上がった。
「白人化」と批判されたロレアルの広告
こんなふうに、時には「ウィッグ・クイーン」とすら揶揄されるビヨンセだが、娘のブルーの髪は常にナチュラル……というか、ボサボサなのである。おまけに服もピンクのドレスなど滅多に着せず、男の子みたいな格好が多い。これにまた黒人女性がモンクを言うのである。「お金あるんだから、なんとかしなさい!」「自分は完璧な髪してるのに!」 先に挙げたグランマの「身だしなみがなってない」だ。
同様のことは2012年のロンドン・オリンピックでも起きた。黒人選手として初めて女子体操を制覇したギャビー・ダグラス。当時まだ10代で、体操のために親元を離れて黒人のいない街に暮らすギャビーは黒人用のヘアサロンにもこと欠いていたと言う。しかも競技に集中し、時に髪が乱れることもあった。それをテレビ中継で見たアメリカの黒人女性たちが「OMG!」と悲鳴を上げた。日々、髪をパーフェクトに仕上げることに苦心惨憺している(しなければならない)女性たちにとって、世界の檜舞台で活躍する稀少な黒人女性の髪が乱れているのは、見ていてとても辛かったのだ。
ブルーの髪への批判について、ビヨンセは例によって全くコメントを発していない。全てスルーである。先日、それを見かねたソウルシンガーのインディアアリーがとうとう声を挙げた。なんと異例の公開レターをしたため、「小さな子どものことなんだから、放っておきなさい」と、黒人女性たちをたしなめた。インディアアリーもまた、ナチュラル派である。
黒人女性の髪についてこれほど諸々の事情がある以上、ビヨンセがブルーの髪に手を加えないのは何かしらの考えがあってのことに違いない。その気になればブルー専属の一流ヘアスタイリストを雇うことも可能なのだから。
さて、ママ・ビヨンセの娘の髪についての信条とは一体?
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