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American Picture Book Review #6 『Yo! Yes?』
著・画:Chris Raschka
■アメリカの絵本をとおしてアメリカを知る■
初出:週刊読書人 2017/9/29号
この絵本はどのページもほぼ1単語のみで書かれている。冒頭、黒人少年が白人の少年に勢いよく「Yo!」(よう!)と声を掛ける。白人少年は振り返って「Yes?」(はい?)と答える。ページをめくると、また黒人少年が「Hey!」(ヘイ!)と言う。白人少年は「Who?」(誰に話しかけてるの?の意)と返す。黒人少年は「You!」(おまえだよ!)と言い、白人少年は「Me?」(ボク?)と、とまどった表情を見せる。
以後もこの調子で会話が続き、やがて黒人少年は白人少年に友だちがおらず、とても寂しいのだと知る。すると声高らかに「Me!」(オレが友だちになるよ!の意)と、友だち宣言をする。白人少年は「You?」(キミが?)と驚くが、晴れてふたりは友だちとなり、笑顔で歩き出す。お互いに相手のことを知らずに交した「Yo!」「Yes?」が、気心の知れた者同士の掛け合い「Yo!」「Yes!」として繰り返される。
著者はたったひとつの単語に「?」「!」「.」のいずれかを付けることにより、少年たちの心情を完璧に表している。「Oh! 」と「Oh?」と「Oh.」はまったく異なる意味を持つのだ。
「Yo!」は偶然にも日本語の「よう!」と同じ使われ方をする。他者への呼びかけ語だが、丁寧な言葉ではない。そもそもはフィラデルフィアの下町のイタリア系アメリカ人が多用したとされる。映画『ロッキー』を観ると、「Yo! エイドリアン!」「Yo! ポーリー!」など、全編で頻繁に使われている。だが、のちに若いアフリカ系アメリカ人が使い始め、ヒップホップの流行とともに広まった。この絵本には2単語からなるごく短い文章も登場するが、そのひとつが「What's up?」(調子どう?)だ。これも本来は黒人スラングだが、「Yo!」と同じく、今では人種を超えて使われている。
この絵本は内容の素晴らしさとは別の観点で一考すべき点がある。ステレオタイプだ。黒人は明るく物怖じしない性格+服装もカジュアル+スラング「Yo!」を使う。白人はおとなしい性格+保守的な服装+礼儀正しく「Yes?」と答える。ステレオタイプは現実に基づくことも多く、事象の一般化には有効だ。受け手が安心して享受できる表現でもあり、ゆえに多用されるが現実は逆のこともある。とくに幼い子供が読む絵本に、ステレオタイプはどこまで使う/控えるべきなのか。
JUGEMテーマ:アート・デザイン
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毎年8月におこなわれるストリート・フェスティバル。
ハーレムの過去・今・未来。
楽しい・美味しい・音楽とダンスだらけ。カラテなんかもあったりする。
来年はぜひ来てください。
揚げ物屋:白身サカナ、チキンウィングス、エビ、ポテト
定番コンボ:フライドチキン&ワッフル
チキンウィング!
BBQグリル
レッドヴェルヴェット・カップケーキ
踊る
踊る
特設ステージでのコンサート。ほんとうはトリオ。
銃がいかにコミュニティを脅かすかについてラップする少年
ハーレム・マザーズ:銃で息子を亡くした女性たちの会
ラッパーもここまで進化:メタリカのTシャツとダメッジド・ジーンズ
いつもはメインストリートで叩いているドラマー。ご近所さん
ラテンで踊る〜前日のドミニカ共和国パレードの勢いでやってきた山車
真似のできないスーパー・コーディネイト
「ブラック・ライヴズ・マター」
「サンキュー、オバマ大統領とファーストレディ」(右)
「めっちゃブラック。文句あるか」(左)
「トランプを弾劾せよ」
「ハーレム:移民の街」 画家もパナマからの移民
これも反トランプ・メッセージ
海兵隊リクルート・トレイラー
(この翌日にアフガン増兵が発表された)
本流から分けられ、しかし米国史を作り上げた黒人たち
黒人野球リーグ:ニグロ・リーグ
黒人飛行隊:タスキージ・エアマン
黒人部隊:バッファロー・ソルジャーズ
西アフリカ製の生地で作るアクセサリー。お見事
アフリカ大陸をモチーフにしたイヤリング
西アフリカの生地で作るドレス、ブラウス
ジェイ・Z 〜 ラッパー、プロデューサー、実業家(1965 – )
アイダ・B・ウェルズ 〜 黒人女性ジャーナリスト(1862 – 1931)
アフロピック(アフロヘア専用の櫛)型のヘアバンド
人種を超えて〜新しいハーレム
ダンス・シアター・オブ・ハーレム:未来のバレリーナ ↑
「ちゃんとつけろよ!」〜NY市が無料配布するコーンドーム
アポロシアターのテント
四角いブームボックス。欲しい
美味しかったね、楽しかったね。また来年!
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ワシントンハイツ・ウォーキング・ツアー
『イン・ザ・ハイツ』はここで生まれた!
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デトロイト暴動とマイケル・ブラウン(事件から3年を迎え)
今から50年前の1967年7月23日。あからさまな黒人差別がまかり通っていた時代のミシガン州デトロイトで暴動が起こった。長年にわたって黒人側に積もりに積もったフラストレーションが警察の手際の悪い酒場捜査によって一気に爆発。暴動は5日間続き、死者43人、負傷者1,189人、逮捕者7,231人を出した。2,509軒の店舗が焼かれるか、略奪され、後日412棟のビルが取り壊された。経済損失は総額で4,000万〜4,500万ドルと見積もられている。
アメリカでは8月4日に公開された本作『デトロイト』は、アメリカで起こった数ある黒人暴動の中でも特に規模が大きく、犠牲者数も多かったデトロイト暴動を描いた作品だ。監督は『ハート・ロッカー』(2008)により女性初のアカデミー賞監督賞受賞者となったキャスリーン・ビグロウ。オサマ・ビン・ラディン掃討作戦を描いた次作『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)も大ヒットとしたビグロウの、満を持しての作品だ。
■ ■ ■
冒頭、暴動がそもそもどのように始まったかがよく分かる描写となっている。警察の過ちが発火点となり、炎がたちまちに燃え広がってしまったのだ。(当時を知る黒人の中には、暴動以前の下地が描かれていないことを指摘する声もある)
映画はしかし暴動全体ではなく、あるモーテルで実際に起こった密室劇を執拗に追う。暴動の最中、アルジー・モーテルに10代の黒人の若者数人と、若い白人女性2人が居合わせていた。暴動とはまったく関係なく、または暴動を避けてモーテルに避難した者たちだった。そこへ警官狙撃犯を追う警官が踏み込み、宿泊客たちを容疑者として精神的に、肉体的に執拗に拷問し、うち3人を殺害する。
黒人の若者たちを追い詰める警官は、若い白人だ。極度の人種差別主義者であり、黒人を殺すことに罪悪感を持ち合わせていないことが見て取れる。また、白人女性が黒人男性と共にいたことを絶対的に許せず、女性にも憎しみをぶつける。しかし奴隷制時代の南部ではなく、公民権法成立から3年後の都市部の警官であり、黒人殺害は自身の立場を危うくすることを知っている。
だが暴動の最中の密室という、上官の目も、市民の目も届かない状況に置かれるや、異常なまでの抑圧精神を発揮する。権力と、物理的な力(銃)を持った者が抗う術を持たない者たちをひたすらに蹂躙する様は背筋が凍るほどに恐ろしい。
■ ■ ■
実は全く同じことが、現代も続いている。昔との違いは映像が残ることだ。街中の監視カメラ、居合わせた目撃者のスマホによる撮影、または警官自身が身につけている小型ボディカメラによる映像が公開され、凄惨な暴行・殺害シーンを私たちは見てしまう。警官たちは目撃、撮影されていると知りながら、過激な暴行を特に黒人に加えることが止められない。子供の頃から叩き込まれた差別意識、白人であることの優越性、警官であることの優越性、黒人への恐怖がないまぜになってのことだと思えるが、それでも到底説明はできないレベルの加虐だ。
とはいえSNSや大手メディアによって公開される映像は市民にショックを与え、警官による暴行・殺人の密室性を破り、警察暴力を緩和すると期待された。だが、今のところ実行犯の警官を逮捕・有罪に持ち込むことは、ほとんどのケースでできずにいる。アメリカの司法制度が深刻な問題を抱えている証拠だ。
3年前の今日、8月9日はミズーリ州ファーガソンで18歳の黒人青年マイケル・ブラウンが白人警官に射殺された日だ。マイケル追悼の自然発生的な集まりに対し、警察は当初から警察犬、果ては装甲車まで出動させ、「まるで1960年代ではないか!」と文字通り全米を驚かせた。警察の過剰反応に一定の黒人市民が過剰反応し、追悼集会は暴動となった。翌日から昼間は平和的な集会、夜は暴動のパターンを繰り返した。その中からSNSを駆使した新たな黒人運動、ブラック・ライブス・マターが誕生したのだった。
つまり本作『デトロイト』は単に50年前の歴史を振り返る作品ではなく、アメリカの人種問題の膠着状態を知るための作品と言えるのである。
マーティン・ルーサー・キングJr. 牧師
「暴動は、耳を傾けてもらえない者たちの言葉である」
A riot is the language of the unheard
■映画を楽しむためのトリヴィア
モーテルに缶詰となった黒人の若者たちの中に、後に大ヒットを飛ばすR&Bグループ、ザ・ドラマティックスのメンバー、ラリー・リードがいた。
本作でラリー・リードを演じたアルジー・スミスと、本物のラリー・リードのコラボレーション・ソング『Grow』が本作のサントラに収録されている。
Algee Smith & Larry Reed - Grow (from DETROIT)
夜間警備員としてモーテル近辺で働き、モーテル事件にかかわってしまう生真面目な黒人男性を演じるのは、『スターウォーズ/フォースの覚醒』のジョン・ボイエガ。
黒人差別主義者の警官クラウスを演じるのは『ナルニア国物語/第3章: アスラン王と魔法の島』の子役、『レヴェナント: 蘇えりし者』のウィル・ポールター。ちなみにジョン・ボイエガもウィル・ポールターもイギリス人俳優。アメリカ英語のアクセントは完璧。
モーテルに宿泊していたベトナム戦争退役兵を演じるのは、アンソニー・マッキー。
本作の評価は全般的に高いが、一部の黒人批評家/聴視者からは非常に辛辣なコメントが出ている。いわく「リベラル白人の視点」。黒人男性と白人女性がフィーチャーされ、黒人女性が登場しないことも強く批判されている。一方、当時の実際の映像も挟まれ、史実を学ぶにはよい作品といえる。
American Picture Book Review #3
『ブルースカイ ホワイトスターズ』
Blue Sky White Stars
著:Sarvinder Naberhaus
画:Kadir Nelson
■アメリカの絵本をとおしてアメリカを知る■
初出:週刊読書人 2017/6/30号
7月4日はアメリカ独立記念日。全米に星条旗が翻る日だ。旗だけではない。多くの人が庭や公園でBBQを楽しむが、プラスチックのコップやビニールのテーブルクロスといった小物やTシャツまでが星条旗カラーの赤・白・青となる。日没後は各地で花火大会となり、筆者の住むニューヨークでも盛大に開催される。
アメリカ人は愛国心が強い。星条旗はその愛国心を視覚的に表す象徴。映画などでよく見掛ける、手を胸に当てて暗誦する「忠誠の誓い」の文言は、実は星条旗への誓いとなっている。本作のタイトル『ブルースカイ ホワイトスターズ』も星条旗の青い部分と、そこに並んで50州を表す白い星を指している。
各ページにはシンプルで短いフレーズがひとつだけ書かれている。その一言が素晴らしいイラストと相俟って読み手の想像力を最大限に引き出し、かつ祖国アメリカへの深い憧憬とプライドを静かに掻き立てる構成になっている。見開きの左ページには「Sea Waves(海の波)」とあり、青い海が描かれている。右ページには「See Waves(波を見よ)」とあり、風に煽られ、布地が波打つ星条旗が断ち切りで大胆に描かれている。韻を踏んだ言葉遊びだが、海の青さ、星条旗の赤の深さが同時に目に飛び込んで来る。他に西部開拓、南北戦争、公民権運動、月面着陸などアメリカ史の描写があり、そこには常に赤・白・青の3色がある。
著者のサルヴィンダー・ナバーハウスはインドで生まれ、3歳でアメリカに移住した児童文学作家だ。作画のカディール・ネルソンはアフリカン・アメリカン。アメリカでは共にマイノリティである2人が、自分の祖先がまだこの国に存在しなかった時代、もしくは市民としての待遇を与えられていなかった時代からの歴史を通じて自身をアメリカ人と強く自認かつアメリカを偉大なる祖国とし、その思いを星条旗によって表したのがこの絵本だ。
「Sew Together Won Nation(ひとつに縫い合わせ、国を勝ち取った)」と書かれたページでは18世紀の衣装を纏った白人女性が米国独立時の13州を表す星条旗を縫っている。対面のページには「So Together One Nation(皆で共に、ひとつの国家)」とあり、そこにはありとあらゆる人々〜黒人、アジア系、ヒスパニック、ネイティブ・アメリカン、イスラム教徒、白人〜が描かれているのである。
JUGEMテーマ:地域/ローカル