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アップタウン・キッズ〜ニューヨーク・ハーレムの公営団地とストリート文化
Uptown Kids  


「アップタウン・キッズ〜ニューヨーク・ハーレムの公営団地とストリート文化」
テリー・ウィリアムズ (著) ウィリアム・コーンブルム (著) 中村 寛 (翻訳)


上記の本を、翻訳者の中村寛氏よりいただき、読んだ。(以下、敬称略)


タイトルにある<アップタウン>とはハーレムのこと。<公営団地>とは、こちらではプロジェクトと呼ばれる低所得者用公団アパートを指し、貧困、犯罪といった都市問題の集積地として知られる。ラップのリリックにもひんぱんに登場することから、日本でもヒップホップ・ファンには徐々に知られつつある言葉のようだ。


本書は、そのプロジェクトに住む若者たちによるライティング・グループを1989年から4年に渡って追ったドキュメンタリー。ハーレム在住、New School の教授である社会学者のテリー・ウィリアムズと、彼のメンターであるウィリアム・コーンブルムによる社会学研究の報告書と言える。ハーレムにあるウィリアムズの自宅を解放し、毎週、メンバーとなった若者たちが集い、自分が書いた日記なり、エッセイなりを読み合い、ディスカッションを重ねるという試みの記録だ。


ただし、とても平易な文体であること、若者たちのセリフを多用していることなどから、学術書ではなく読みやすいノンフィクションとして楽しめる。そのため、訳者の中村寛は、1960年代のプロジェクトを舞台に書かれた吉田ルイ子のロングセラー「ハーレムの熱い日々」に結びつく作品だと後書きに記している。


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1980年代はハーレムも含めてニューヨークの治安の悪さがピークに達した時代。つまり、本書はハーレムが最も荒廃した時代に生まれ育ち、ティーンエイジャーとなった世代が抱える重荷、障壁、葛藤と、彼らがライティングとディスカッション、ウィリアムズとコーンブルムのサポートによって希望を見出そうとする物語となっている。


一時はギャングのメンバーとして他人を殴り、刺し、撃ったこともあるバド。

保護観察中で、高校中退の瀬戸際にいるデクスター。

祖母に育てられ、18歳でシングルマザーとなったシーナ。

友人の家を渡り歩くホームレスのジャック。


著者は彼らの日記とディスカッション、日々の生活の有り様を記録していく。同時にプロジェクトを住みやすい場所にしようと格闘している大人たちにもインタビューを重ね、プロジェクトに関するデータも挟む。しかし、時として行き場のない状態に追い込まれる若者たちに深い同情を寄せ、主観的な思いを吐露する。何年も若者たちとライティング・セッションを続けて信頼を得、時には夜中に借金や刑務所からの請け出しの電話を受けるほどに深く関わったゆえだ。


著者のひとり、テリー・ウィリアムズは南部ミシシッピ州出身のアフリカン・アメリカン。1965年、高校卒業を機にニューヨークに移り、公民権運動に深く関わっていく。長年ハーレムに暮しているが、研究者/教授である彼はもちろんプロジェクトの住人ではなく、ライティング・チームの拠点となった彼のアパートはハーレムの中ではかなり高級な部類。おそらくこういったバックグラウンドから来るのであろう、理想主義者的な部分も見受けられる。ネガティブな面ばかりが強調されるプロジェクトは、実は良い住宅地に成り得るはずとの信念を持ち、ゲットーという八方ふさがりな環境にいる若者に対し、深いシンパシーを抱いている。


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1960年代の黒く熱いハーレムを描いた「ハーレムの熱い日々」を今読むと、さすがに時は流れたな、と思う。私自身は1996年以降のハーレムしか知らないものの、あの本に凝縮されている、文字通りに<熱い>ハーレムは、今はもう存在しない。


けれど1980年代後半〜1990年代前半を綴った「アップタウン・キッズ〜ニューヨーク・ハーレムの公営団地とストリート文化」は、2010年に読んでも全く違和感がなかった。登場する若者たちのライフスタイルは、どれも現在のハーレムにごく普通に見られる。逆に言えば、20年経ってもプロジェクトに住む若者を取り巻く環境は変わっていないということなのか……。いずれにせよ、本書は現在のハーレムの若者とプロジェクトの在り方を知るためにも十分に有用な一冊だと思う。(敬称略)


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ライティング・プロジェクトの場所であったテリー・ウィリアムズ氏の高級アパートを訪れたことがある。2001年にジャーナリストの本田勝一氏が「新・アメリカ合州国」を執筆するにあたり、ウィリアムズ氏の自宅でインタビューを行った際に、現地コーディネイターとして同行したのだ。「ハーレムの熱い日々」時代からウィリアムズ氏と知己であるフォト・ジャーナリストの吉田ルイ子氏も撮影のために同席。


取材後に全員で出掛けたレストランでの食事には、ウィリアムズ氏の息子で、ストリートファッション・ブランド、PNB Nation 創設者のズル・ウィリアムズ氏も参加した。錚々たる人々に囲まれて、なんだか緊張しながらキューバン・チャイニーズ料理を食べたことを懐かしく思い出す。


奇しくも、そのズルの子ども時代の写真を表紙に使った、吉田ルイ子氏の写真集「ハーレム 黒い天使たち」が再発された。友人がさっそくに送ってくれた。この写真集については、また後日に書きたいと思う。


※中村寛さん、とても興味深い訳書を本当にどうもありがとうございました。

中村寛(ゆたか) 多摩美術大学専任講師。ニューヨーク・ハーレムのアフリカ系アメリカ人ムスリム・コミュニティでフィールドワークを行い、2008年に一橋大学大学院社会学研究科で博士号を取得。博士論文はCommunity in Crisis: Language and Action among African-American Muslims in Harlem. 専門は文化人類学。人種関係、アメリカのムスリム・コミュニティ、都市、暴力等を研究テーマとする。ハーレムでのフィールドワークを通じて本書に出会った。




参考:「吉田ルイ子のアメリカ」に、「白人だって僕たちより上等ってことない〜黒人青年テリー・ウィリアムズの手記」と題された一章があります。




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author:堂本かおる, category:ハーレム, 14:04
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