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何故、セリーナ・ウィリアムスは「ミルク入りチョコレート」に憤ったか。
何故、セリーナ・ウィリアムスは「ミルク入りチョコレート」に憤ったか。

 「どんな色になるか見ものだな。ミルク入りのチョコレートか?」

 テニスのスーパースター、セリーナ・ウィリアムスが妊娠を発表するや、テニス界の大物、ルーマニアのイリ・ナスターゼが発したセリフである。セリーナは黒人、フィアンセのアレクシス・オハニアンは白人だ。

 セリーナは瞬時に反撃に出た。以下のコメントをインスタグラムにアップしたのだ。

 イリ・ナスターゼのような人間がこんな人種差別発言を私や、まだ生まれてもいない子に、そしてセクシストな言葉を私の仲間に投げ付ける社会に生きているなんてガッカリ。

(中略)世界はここまで来た。けれどまだ先に行かねばばらない。イエス、私たちはたくさんのバリアを打ち壊してきた。けれどバリアはまだまだある(中略)

 あんたみたいに私は恐れてなんかいない。分かると思うけど、私は卑怯者ではない。私の無礼さが気に障る?どうしてその根暗さで人を悩ませるの? その言葉で私を撃てるかもだけど、憎悪で私を殺そうとするのかもだけど、私は空気みたいに立ち昇ってみせる。




フィアンセのアレクシス・オハニアンのインスタグラム


 ナスターゼは1970年代に活躍したテニス・プレーヤーだ。グランドスラムを2度達成し、ルーマニアでは体操のナディア・コマネチと並ぶ伝説的アスリートとなった。しかし現役当時から口と態度の悪さで「バッド・ボーイ」と呼ばれていた。

 現在70歳のナスターゼは今年のフェドカップのルーマニア・チーム・キャプテンだったが、わずか数日の間に試合中の女子選手を「ファッキン・ビッチ」と呼び、セリーナに対して上記の発言を行い、女性ジャーナリストに「スチューピッド」を繰り返した。さらにイギリス・チームの女子選手(アジア系英国人)が既婚で妊娠中であるにもかかわらず「ホテルの部屋番号を教えろ」と迫った。あまりにも酷い素行が祟り、ナスターゼはフェドカップから既に放り出されている。


■肌の色のバラエティ

 黒人自身は肌の色をさまざまに例える。人によって色合いと濃淡にかなりの幅があり、それぞれオートミール、ハニー、キャラメル、カフェラテ、ブラウンシュガー、チョコレートなどと呼ぶ。

 アメリカの黒人の肌の色に幅があるのは、奴隷制時代に黒人女性が白人にレイプされたためだ。その後、多くの逃亡奴隷がネイティブ・アメリカンに匿われた時代があった。さらに時代が進むと白人、ヒスパニック、アジア系など他人種・他民族との異人種カップルも出始めた。その結果の肌の色のバラエティなのである。

 そもそもは奴隷制という悲劇に基づき、今も肌の色が濃いほど社会的なスティグマがある。だからこそ自らの美を意図的に自覚し、同時に自分とは異なる色の同胞の美も肯定する。そのためにあらゆる色を讃える。実際、それぞれの色がそれぞれに美しいのである。

■ミルク入りチョコレート

 セリーナ・ウィリアムスの赤ちゃんが生まれた時、もし本当にミルク・チョコレートのような肌の色であれば、周囲は「なんときれいなミルク・チョコレートのような色!」と言えたはずだった。しかし、セリーナの赤ちゃんにこのフレーズを使う人はもういないだろう。明らかな人種差別主義者であるナスターゼがこのフレーズを口にしたからだ。

 ナスターゼは自身もテニス選手でありながら時代を切り開いたテニス・プレーヤー、セリーナへの敬意はなく、人間としてのセリーナへの敬意もなく、何より出自は一切関係なく、誰からも祝福されて生まれてくるべき赤ちゃんを、生まれる前から単なる色の混合物として「ミルク入りチョコレート」と呼んだ。さらにナスターゼは後日、ルーマニアのメディアに対し、以下のコメントを発した。

 「赤ん坊がミルク・チョコレートだと言ったのがレイシズムなのか?もしセリーナが醜く黒い子を生むと言ったら、それがレイシズムだろう」

 テニス界の風土には全く疎いが、ナスターゼは永久追放されてしかるべきだろう。

 しかしセリーナの赤ちゃんについては心配ない。皆、とてもクリエイティブだ。赤ちゃんを可愛いと思い、美しいと思い、最大級に褒める言葉なら、両親はもとより家族親戚友人たちから無限に繰り出されるに違いない。-end-


連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」
第15回「オバマ大統領が書いた絵本『きみたちにおくるうた―むすめたちへの手紙』 」+(バックナンバー)






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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 17:10
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