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トランプが観るべき難民ミュージカル『ア・マン・オブ・グッドホープ』

トランプが観るべき難民ミュージカル『ア・マン・オブ・グッドホープ』



ニューヨークのブルックリンにて5日間限定で上演されたミュージカル『ア・マン・オブ・グッドホープ』を観た。南アフリカ共和国の劇団による、あるソマリア難民の人生を描いた作品だ。

マリンバを多用した南アフリカの牧歌的な音楽
足を踏み鳴らすダンス
独特の「アルルルルル!」という掛け声
アフリカの歌唱とオペラの融合

段ボールを切り抜き、ダクトテープを巻いただけの機関銃
男が抱えるタイヤと運転ハンドルはトラック

ドア枠だけで表す国境の入管
皺だらけの黒いビニールシートをくぐるのは不法入国

凹んだバケツとたらいは貧困の象徴
アメリカの豊かさを表すのは「GOLD」と書かれたプラカード


A Man of Good Hope
Isango Ensemble / Young Vic





この作品は南アフリカ共和国の作家ジョニー・ステインバーグが実在の人物アサド・アブダラヒへのインタビューを元に書き上げた小説「A Man of Good Hope」を原作とする。

アサドはソマリア人。1991年の内戦時、8歳の時に目の前で武装集団に母親を殺され、命からがらケニアへ逃亡。幸いにも親戚に巡り会い、その女性が母親のように面倒をみてくれる。しかし、その女性もやはり混乱の中で重症を追い、幼いアサドは動けなくなった女性の下の世話、生理の始末まですることになる。なぜなら天涯孤独のアサドにとって、この女性が唯一の頼れる大人だったからだ。

その後も幾多の苦難があり、アサドと女性は離ればなれになる。以後、アサドはエチオピア、タンザニア、ジンバブエ、南アフリカ共和国と移動し続ける。国から国へと、時にはパスポートを持って合法移民として、時には不法入国者として密かに国境を渡る。

だが、アサドが幼い頃から常に夢見ているのは「世界一でっかいトラックがある」豊かな国、アメリカだ。幸運な同胞は飛行機に乗り、渡米して行くが、アサドにそのチャンスは巡って来ない。アサドは成長し、アメリカ行きの希望を捨てないままエチオピアで結婚し、南アでは商店を経営するに至る。

だが、南ア人は「外国人ヘイト」を吹き出し始め、「外国人は我々の仕事を奪う」「移民は犯罪を犯す」と呪う。アサドも店員を殺され、身を粉にして得た商店と大切な搬送トラックを無くしてしまう。

この後、アサドは果たしてアメリカ行きのチケットを手にすることが出来るのか……



非常に重い物語だが、全体のトーンは沈鬱でも重厚でもなく、むしろ軽やかで、コミカルにすら感じるシーンも。傾斜を付けたステージの両脇にマリンバと他の楽器が置かれ、俳優は複数の役をこなし、楽器の演奏も行う。歌は時にオペラ調となり、アフリカ音楽との違和感のない融和に驚く。セリフは英語。アフリカ人の英語は日本人には聞き取りやすい。

主人公アサドは年齢に応じて子ども、若者、成人と4人の俳優が演じるが、一人は女性だ。実在の主人公も原作者も男性だが、女性の生理、女性割礼のエピソードが出ることにやや驚いた。



親を亡くした幼いアサドに祖国に残る道は無かった。命を賭けて何ヶ国を渡り歩かなければならなかった。落ち着いた生活を手に入れたと思った国も安住の地では無かった。

アサドがアメリカに渡っても幸福になれる確証はない。しかし、少なくとも死ぬことはほぼ無くなるだろう。人間が「明日にでも死ぬかもしれない」国から、「死ななくて済む」国に渡りたいと願うのは自然なことだろう。

人間としての生きる権利。
国境を守らねばならない国家の義務。
どちらが優先されるべきなのか。




連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」
第14回「オバマ大統領は私にも『同胞なるアメリカ人』と呼びかけた」+(バックナンバー)





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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 15:06
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