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欅坂46とクリーヴランド・インディアンズの「ワフー酋長」〜人種民族仮装

欅坂46とクリーヴランド・インディアンズの「ワフー酋長」〜人種民族仮装

今年、アメリカのハロウィンは特に大きな問題が起こることもなく無事に終了したが、背後では例年どおり「他の人種や民族の仮装はNGか否か?」が論じられた。時を同じくしてメジャーリーグではクリーヴランド・インディアンズ対シカゴ・カブスによるワールドシリーズが佳境に入っており、インディアンズのキャラクター“ワフー酋長”が「差別的か否か?」の論争が巻き起こっている。


クリーヴランド・インディアンズのキャラクター、ワフー酋長

人種仮装といえば、顔を黒く塗って黒人を真似るブラックフェイス(黒塗り)がよく知られている。ブラックフェイスは現在のアメリカでは完全にタブーだが、だからこそ人種差別主義が意図的に行ったり、もしくは歴史や経緯を知らない若い芸能人が悪意なくカメラの前でやってしまい、批判されて謝罪する事例がたまに起こる。差別目的で行う者は悪質だが、黒塗りが意味するところは十分に自覚している。逆に好意的な理由で、もしくは知識も悪意もなくやってしまうケースが問題を複雑にする。

日本では昨年2月にラッツ&スターとももいろクローバーZの黒塗りが大きな議論となった。この件、日本国内では「黒人へのリスペクトなのだからいいのではないか」という声が少なからずあった。

今、議論されているインディアンズのキャラクター、ワフー酋長についても、アメリカ国内でも「戦闘のイメージ、勇猛果敢なイメージだからいいのではないか?」との声がある。ワフー酋長のイラストは「真っ赤な肌」「鉤鼻」「剥き出した大きな歯」とインディアンのステレオタイプをとことん誇張したものだ。黒人を「真っ黒な肌」「真っ白な白目」「真っ赤で分厚い唇」に描くのと同じ。加えてインディアンには「普段は無口で神秘的」だが「戦闘時には勇猛果敢で残虐」、黒人なら「間抜けで陽気」で「歌やダンスが上手い」という、やはりステレオタイプな人種民族描写がある。ちなみにアジア系の場合は外観は「黄色い肌」「つり上がった細い目」、昔はここに「出っ歯」が加わり、キャラクター・イメージは「英語がヘタ」な「移民」だ。


“赤塗り”でワフー酋長となっているクリーヴランド・インディアンズのファン


黒人の肌の色は(白人に比べると)濃い。黒人は音楽とダンスの豊かな文化を持ち、それは白人のものとは異なる。インディアンの肌の色も(白人に比べると)濃い。(白人の視点では)インディアンは(占領者としてやってきた)白人に対して残虐に闘った。

アメリカを支配した白人はマイノリティをコントロールし、社会の底辺に置き、その外観とキャラクターをステレオタイプ化し、笑い者にした。時には「勇猛果敢」など称賛もあったが、ほとんどの場合、インディアンをインディアンであるというだけの理由で見下し、黒人を黒人であるというだけの理由で見下した。マイノリティは支配者層が作り上げたステレオタイプに押し込められ、それ以外の個性を認められることはなかった。マルコムXが子どもの頃、弁護士になりたいと言うと、白人の教師が「黒人だから無理だ。大工になりなさい」と言ったのは有名な話だ。2016 年の現代においても機内で急病人が出た際、黒人医師が「医師です」と名乗り出てもフライトアテンダントが信じなかったという件が連続して報じられている。

アメリカでの『チビクロサンボ』絶版も同じくステレオタイプに由来する。『チビクロサンボ』が物語として優れているのは言うまでもない。筆者自身、子どもの頃はトラが溶けてできたバターで焼いたパンキーキを食べたくてしかたなかったという思い出がある。しかし、チビクロサンボは「トラに何度も何度も騙されて身ぐるみ剥がされるほど間抜け」なキャラクターとして描かれている。

チビクロサンボが白人であれば問題は起こらなった。白人は白人であるというだけの理由で貶められた経験を持たないゆえに、時に間抜けなキャラクターや醜いキャラクターとして描かれても笑って見過ごせる。しかし間抜けで醜いとしか描写されてこなかった、そして今もそう描写されるマイノリティはそうしたステレオタイプを払拭していかねばならない。そうでなければ「医師」と名乗っても信じてもらえない社会のままであり続ける。


アメリカインディアン国民会議によるクリーヴランド・インディアンズのキャラクター抗議広告。架空の「ニューヨーク・ユダヤ人」「サンフランシスコ中国人」はダメだと誰でも思うが、「クリーヴランド・インディアンズ」が良しとされるのはなぜかを問うている。


日本の人がこうしたステレオタイプの描写の害を理解し辛いのはアメリカの人種にまつわる歴史を知らず、知識として知ってはいてもそれが当該グループや個人、社会にどういった影響を与えてきたか、今も与え続けているかを生で見る機会がないからだ。欅坂46がナチスの制服にそっくりな衣装を着てステージに立ててしまうのも同じ理由だ。ある意味、仕方ないとはいえ、グローバル化した現代にあって「仕方ない」はもはや言い訳になり得ない。欅坂46について「当人たちは衣装を着せられているだけ」と擁護する声もあるが、平均年齢18〜19歳は大学生に相当し、アメリカで仮に大学生であれば退学処分も検討されるだろう。

クリーヴランド・インディアンズのワフー酋長については過去に何度も抗議運動や訴訟があり、現在、チームはワフー酋長を全面には押し出さないようにしているが、今もユニフォームやグッズに使われている。今、インディアンズはワールドシリーズに勝ち、チャンピオンになりそうな勢いだ。(これを書いている今、ワールドシリーズ第6戦が行われている)インディアンズが勝てば、ファンはワフー酋長のイラストを振りかざして優勝を祝うだろう。

MLBのコミッショナーは、ワールドシリーズ終了後にインディアンズのオーナーとワフー酋長について話し合うと発表している。---END---

 

 

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第4回:“二重国籍疑惑”の大統領候補たち〜「生まれつきのアメリカ人」とは?
第5回:ドナルド・トランプを大統領にしてはいけない理由
第6回:大統領はクリスチャン〜米国大統領選と宗教





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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 11:48
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