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映画『KICKS』〜スニーカーと銃:ゲトーの青春

映画『KICKS』

 〜スニーカーと銃:ゲトーの青春

 

ハーレムに拠点を置く ImageNation という名の映画オーガニゼーションがある。ブラックムービーをハーレム内のアートスペースで上映したり、屋外上映会を企画運営などしている。その ImageNation 主宰の『KICKS』という新作映画のスクリーニングがマジック・ジョンソン・シアターというハーレムにあるシネコンで行われた。

 

『KICKS』は今年4月のトライベッカ・フィルム・フェスティバルでオープニング・プレミアとして上映されて好評を得、アメリカでは9月9日より一般公開となる。今回のスクリーニングはそれに先駆けてのもので、「口コミでこの映画を広めてもらうためだから、面白かったら回りの人に伝えてね」と主宰者のMoikgantsi Kgamaさんが言ったので、レビューを書いてみる。

 

(ネタバレ注意)

 

『KICKS』とはスニーカーのこと。若者のスラング。


カリフォルニアのベイエリアに住む高校生のブランドンはジョーダンのスニーカーが欲しくてたまらない。友だちは皆、履いている。親友のリコとアルバートも履いている。破れた古いスニーカーなんて履いているのは自分だけ。ジョーダンが欲しくて、欲しくて、欲しくてたまらない。けれど貧しいブランドンには手が出ない。


ブランドンと親友たちはゲトーではごく普通のティーンエイジャーだ。NワードやBワードを連発し、女の子といちゃつき、バスケをし、マリファナを吸い、コンビニで飲み物くらいは万引きするけれど、それ以上の大それたことはしない。そんなブランドンだからスニーカーを盗むことなど出来ず、道端でキャンディを売って資金を貯める。


やがてブランドンはついに念願のジョーダンを手に入れるが、初めて履いたその日に地元のサグのフラコに盗られてしまう。銃を持ち、情け容赦のないフラコに楯突くことは出来ず、涙を流しながらジョーダンを手放すブランドン。


15歳にしては小柄で童顔だから中学生くらいにしか見えず、性格も奥手で大人しいブランドンだが、あのジョーダンだけは諦められない。思い詰めたブランドンが取ったジョーダン奪回の手段とは……


「KICKS」トレイラー



前半の粗筋を書くと、とても単純な物語に思える。実際、シンプルなストーリーなのだが、時々“宇宙飛行士”が表れる。シングルマザーらしきブランドンの母親は一度も登場しない。部屋に置かれた写真立てに、にこやかに笑う母親と幼いブランドンの写真があるのみ。母親との不仲を表す描写は何もない。母親は単に仕事で忙しく、ブランドンと時間を共にすることが出来ないのだと思わせる。兄弟姉妹も登場しない。ひとりっ子なのだろう。ブランドンは孤独なのだ。そんなブランドンの心象風景としての宇宙飛行士。もしかすると幼い頃に宇宙飛行士に憧れ、宇宙飛行士になりたいと思っていたのかもしれない。白い宇宙服を着て、ヘルメットで顔が見えない宇宙飛行士はブランドンが独りの時にだけ表れる。


後半の粗筋は書かないが、この映画は「努力してスニーカーを買ったブランドン」と「銃で脅してスニーカーを奪ったフラコ」による勧善懲悪物語ではない。ブランドンにもダークサイドがある。フラコにも愛情がある。途中で登場するブランドンの刑務所帰りの叔父にも驚くほど異なる2つの顔がある。


しかし劇中で起こる出来事は、彼らがゲトーに暮していなければ、そもそもこんなことにはなっていなかっただろうと思われることばかりだ。ゲトーの全ての土台となっている貧困。日常に当たり前に存在する暴力。マチズモ。家庭崩壊。そこからくる愛情の歪み。それら全ての背景にある、しかしこの映画では直接は描かれない人種問題。ゲトーではそれをサバイバルしなければ文字どおり、死んでしまうのだ。


そんな人生を登場人物たちは当たり前のことと受け止め、実はひょうひょうと生きていく。サバイバル出来ずに死んだ者もいる。けれど生き残った若者たちはサバイバルをラッキーに思い、タフになった自分を誇りに思い、そして、以前と同様に生き続けるのだ。
 

『KICKS』

監督: ジャスティン・ティッピング
ブランドン:ジャーキング・ギルロイ(新人)
★ Nas, E-40, Jay Z, 2Pacなどの曲が使われ、象徴的なリリックの一節が画面に写し出されるのもお楽しみ

 




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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 17:03
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