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ヴァージニア州:白人至上主義者のデモ〜死者も出た大混乱の原因とタイムライン

ヴァージニア州:白人至上主義者のデモ〜死者も出た大混乱の原因とタイムライン

 8月12日(土)、ヴァージニア州シャーロッツヴィルで白人至上主義者の大規模なデモが開催された。カウンター・プロテスト(抗議運動)側と合わせると実に数千人規模となり、両者が激しく衝突。その結果、カウンター側の女性1名が無くなり、30人以上の負傷者が出た。さらに現場付近を警備していた警察のヘリコプターが墜落し、警官2名も死亡。ヴァージニア州知事は緊急事態宣言を発令。



 当日、シャーロッツヴィルにKKK、ネオナチ、アルト・ライトなどと呼ばれる白人至上主義者たちが大量に集まった。南軍旗やハーケンクロイツを染め抜いた旗を掲げ、ナチス式敬礼をしながら「ヘイル・トランプ!」と繰り返すグループや、大型銃を携えた民兵隊も参加。カウンター側の緊張も高まり、デモ開始時刻前に早くも衝突が始まり、大変な混乱状態となった。

 混乱のさなか、カウンター・グループに向かって車が突っ込み、カウンター側の白人女性(32)が死亡。犯人はオハイオ州からやってきた20歳の青年で、すでに逮捕、殺人罪で起訴された。他にも黒人青年が数人の白人に殴打され、頭部を8針縫い、手首を骨折する大ケガを負うなどしている。

 KKKの元リーダーでトランプの熱心な支持者であるデヴィッド・デュークはデモについて以下のコメントを発した。「トランプは我々の国を取り戻すと言った。我々がトランプに投票した理由だ」。

 事態の深刻さに大統領のドナルド・トランプは珍しく即座にツイートをおこない、次いでスピーチを行ったが、その内容が激しく批判された。「全ての人々(またはグループ)」「すべての側」が共に憎悪を糾弾すべきだと言い、「白人至上主義者」の名を挙げることをせず、先に挙げた死亡事故にもあえて触れなかったことが理由だ。このトランプ発言に対し、民主党だけでなく、共和党の政治家からも批判が噴出した。

 一方、ヴァージニア州知事のテリー・マコーリフは当日の記者会見で「今日、シャーロッツヴィルにやってきた白人至上主義者とナチスにメッセージがある」「恥を知れ。おまえたちは愛国者のフリをしているだけだ」「帰れ。決して戻ってくるな」と厳しく糾弾した。シャーロッツヴィルは非常にリベラルな土地柄であり、デモに参加した白人至上主義者の大半が他州からやってきたとされている。


■デモの理由と、タイムライン

 今回の出来事の素地は2015年に始まっていた。シャーロッツヴィルの公園に南北戦争時の将軍、ロバート・リーの銅像があり、地元の黒人高校生たちが像の撤去運動を開始。きっかけは同年にサウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で白人至上主義の青年が銃の乱射を行い、9人の教会メンバーが殺された事件だった。

4月:シャーロッツヴィルの市議会でこの件が取り上げられ、3対2で撤去となったが、判事が「撤去の6ヶ月保留」裁定を出す。5人の市議のうち唯一の黒人で副市長を兼任するウェス・ベラミー氏は銅像撤去の件で脅迫状を受け取っているとのこと。

5月13日:アルト・ライト(極右グループの新しい名称)のリーダー、リチャード・スペンサーによる銅像撤去への抗議デモ。カウンター・グループと衝突し、短時間で終了。

7月8日:約50人のKKKメンバーが銅像付近でデモをおこない、1000人のカウンター・グループに囲まれる。

8月11日(金):今回のデモの前夜。ヴァージニア州立大学に松明(たいまつ)を持った数百人が集まり、銅像撤去反対集会。

8月12日(土):「ユナイト・ザ・ライト」Unite the Right と冠された白人至上主義者によるデモ。大混乱となり、死者1名を出す。

8月13日(日):今回の件をFBIが捜査すると発表。


■あきらめない白人至上主義者と、今後

 週が明けた8月14日(月)午後、トランプがようやく「白人至上主義者」「ネオナチ」を批判するスピーチをおこなう。

 同じく14日、アルタ・ライトのリーダー、リチャード・スペンサーが「9月11日、テキサス州にて『ホワイト・ライヴス・マター』White Lives Matter と銘打ったデモをおこなう」とCNNが報道。9.11同時多発テロが起こった日に、「ブラック・ライヴス・マター」への挑戦状以外の何物でもないネーミングのデモ。移民、とくにイスラム教徒と黒人への挑発であり、炎上目的であることは明らか。



 混沌のアメリカ。今後も予断を許さない展開となっている。

 

 

 

 



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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 02:29
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NY:アフリカからの不法滞在少年アマドゥのケース 〜 タイ強制退去ウティナン君の件に寄せて
NY:アフリカからの不法滞在少年アマドゥのケース 〜 タイ強制退去ウティナン君の件に寄せて

日本で生まれ育ったタイ国籍の高校生、ウォン・ウティナン君(16)のタイ強制退去の判決が覆らずのニュースを読み、10年ほど前にニューヨークのイーストハーレムでよく似た件があり、話題となったことを思い出した。

セネガル生まれで違法滞在者だった男子高校生があわや強制送還となり、しかし違法滞在となった成り行きと成績優秀であることが考慮され、地元ニューヨークの政治家たちが立ち上がり、少年は短期間の滞在許可を得るに至った。

その後、少年がどうなったのか気になり調べてみたところ、なんと、大ヒット映画『トワイライト・サーガ』に出演する俳優になっていた! まったくもって驚いた。いったい何がどうなってそうなったのか。

当初からの成り行きも改めて読み直し、まとめたものが以下だ。


Amadou Ly

アマドゥ・リーは西アフリカのセネガルで1988年に生まれている。2001年9月10日、つまり911同時多発テロの前日に母親と共にニューヨークにやって来ている。13歳。英語はまったく話せなかった。母親はアマドゥにアメリカで教育を受けさせるために観光ビザを取得して渡米したとある。日本人や先進ヨーロッパ諸国人は3ヶ月以内の滞在ならビザ不要だが、多くの国はビザが必要だ。アメリカは貧しい国からの不法滞在者を防ぎたいのだ。

渡米から約1年後に母親は単身セネガルに帰国。母親はアマドゥをインディアナ州の知人に預ける手配をし、アマドゥはひとり長距離バスに乗り、インディアナに移った。この時点でビザの期限はすでに切れており、アマドゥは違法滞在者となっていた。

2004年の夏、知人がアマドゥの面倒をみられなくなり、アマドゥはまたひとりバスに乗りニューヨークに戻る。16歳。身寄りもなく、ビラ巻きなどでなんとか衣食を賄い、やがて親の知人宅に身を寄せ、マンハッタンの貧困地区イーストハーレムの高校に通う。

その年の11月、ペンシルベニア州で助手席に乗っていた車が事故を起こし、駆け付けた州兵に身分証明書を求められ、違法滞在者であることが発覚。移民局に通報され、ここから「強制送還」を賭けて法廷との闘いとなる。弁護士を雇う資金は無く、あれこれと時間を費やしているうちに18歳となり、未成年のみ対象のグリーンカード(永住権)など、いくつかの法的恩恵が受けられなくなる。

強制送還の危機にありながらも高校にはそのまま通った。アメリカでは義務教育はすべての子どもに提供することとなっている。ニューヨークの場合、17 歳までが義務教育年限だが、いったん入学すれば卒業まで義務教育扱いとなる。また、ニューヨークには学校側に本人の国籍やアメリカ滞在資格の有無を告知しない「聞かない、答えない」ルールがある。

アマドゥは学校でコンピュータを使ったロボット組み立てコンテストのチームに所属。2006年、貧困地区の学校ゆえに満足な資材も揃えられないにもかかわらず、トップ校を凌いで州代表となる。4月にジョージア州で開催される全米大会に出場するためチームメイトと共に空港に赴き、身分証明書が無いことから搭乗を断られる。チームメート18人は「アマドゥ無しでは行かない」とし、アマドゥも含めて全員が18時間かけて列車でジョージア州へ。この費用はブルームバーグ社が拠出。

この件がニューヨーク・タイムズに掲載され、アマドゥの存在が全米に知れ渡る。アマドゥに法廷費用や大学費用の支援を申し出る人々、自分の養子になれば米国滞在が可能になるのであれば、そうしてもいいという人さえ出た。

これによりニューヨーク州選出のチャック・シューマー上院議員、同じく当時は上院議員だったヒラリー・クリントン、当時のニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグが動き、同年7月にアマドゥは高校を終えるための学生ビザを手にする。



アマドゥの学生ビザはブルックリンにあるコミュニティ・カレッジ(公立の短期大学)に在学する間も有効で、卒業後は就労に基づくビザの取得も可能だった。当初はコンピュータ・エンジニアを目指していたアマドゥだが、自身のシャイな立ち居振る舞いを矯正するために演技のクラスを受けた途端、演技に開眼し、専攻をパフォーミングアーツに変更。

外国籍の学生の就労は週20時間以内と定められていることから、アマドゥは経済的に苦労する。演技を認められてテレビの人気ドラマ『ロウ&オーダー』出演のチャンスを得るが、これも外国人学生は学内か学校に関連した仕事にしか就けず、断念。

2009年に大学を卒業したアマドゥは俳優を目指してニューヨークからハリウッドに移る。インディ作品に2本出演した後の2002年、大ヒット『トワイライト』シリーズの第5作『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part2』にヘンリーという名のヴァンパイア役で出演。そして今年、自身が脚本と主役を兼ねた短編『Attempts』と『Justice Turner』を発表している。


『トワイライト・サーガ』出演時のインタビュー。移民問題で苦労したことも語っている


これが2001年から現在に至る、アマドゥ・リーの15年間だ。あちこちの記事を読み、時系列で繋いでみたが、メディアには語られていない部分も多いことと思う。インディアナからニューヨークにひとりで舞い戻り、ビラ配りで食いつないだとあるが、当時16 歳。そんなふうにひと言で済む生活ではなかったと思われる。親の知人宅に身を寄せるまではホームレスだったのではないだろうか。そもそも14歳で母親が祖国に戻ってしまい、異国にひとり取り残された時、いったいどんな心情だったのだろうか。インディアナの知人は当時、中学生のアマドゥにどれほどよくしてくれたのだろうか。

今、アマドゥは「自分はアメリカに属していると感じる」と語っている。同時に自分が夢中になり、結果的に自分の存在を世間に知らしめることとなったロボット組み立てコンテストを祖国セネガルの子どもたちのために開催したいとも語っている。アマドゥが俳優や脚本家として成功すれば、必ず実行するだろう。いや、そうでなくとも道を見つけて開催にこぎつけるのではないだろうか。

移民は移住先の国に身を落ち着け、貢献し、文化を豊かにする。同時に祖国との文化や経済の架け橋にも成り得る。かつて未成年の不法滞在者、違法移民だったアマドゥ・リーは、それを身を以て実践しているのである。

 

 

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ヒューマン・バラク・オバマ
第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」
第2回:バラク・オバマは「黒人」なのか〜人種ミックスの孤独
第3回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために
第4回:“二重国籍疑惑”の大統領候補たち〜「生まれつきのアメリカ人」とは?
第5回:ドナルド・トランプを大統領にしてはいけない理由
第6回:大統領はクリスチャン〜米国大統領選と宗教





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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 15:19
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欅坂46とクリーヴランド・インディアンズの「ワフー酋長」〜人種民族仮装

欅坂46とクリーヴランド・インディアンズの「ワフー酋長」〜人種民族仮装

今年、アメリカのハロウィンは特に大きな問題が起こることもなく無事に終了したが、背後では例年どおり「他の人種や民族の仮装はNGか否か?」が論じられた。時を同じくしてメジャーリーグではクリーヴランド・インディアンズ対シカゴ・カブスによるワールドシリーズが佳境に入っており、インディアンズのキャラクター“ワフー酋長”が「差別的か否か?」の論争が巻き起こっている。


クリーヴランド・インディアンズのキャラクター、ワフー酋長

人種仮装といえば、顔を黒く塗って黒人を真似るブラックフェイス(黒塗り)がよく知られている。ブラックフェイスは現在のアメリカでは完全にタブーだが、だからこそ人種差別主義が意図的に行ったり、もしくは歴史や経緯を知らない若い芸能人が悪意なくカメラの前でやってしまい、批判されて謝罪する事例がたまに起こる。差別目的で行う者は悪質だが、黒塗りが意味するところは十分に自覚している。逆に好意的な理由で、もしくは知識も悪意もなくやってしまうケースが問題を複雑にする。

日本では昨年2月にラッツ&スターとももいろクローバーZの黒塗りが大きな議論となった。この件、日本国内では「黒人へのリスペクトなのだからいいのではないか」という声が少なからずあった。

今、議論されているインディアンズのキャラクター、ワフー酋長についても、アメリカ国内でも「戦闘のイメージ、勇猛果敢なイメージだからいいのではないか?」との声がある。ワフー酋長のイラストは「真っ赤な肌」「鉤鼻」「剥き出した大きな歯」とインディアンのステレオタイプをとことん誇張したものだ。黒人を「真っ黒な肌」「真っ白な白目」「真っ赤で分厚い唇」に描くのと同じ。加えてインディアンには「普段は無口で神秘的」だが「戦闘時には勇猛果敢で残虐」、黒人なら「間抜けで陽気」で「歌やダンスが上手い」という、やはりステレオタイプな人種民族描写がある。ちなみにアジア系の場合は外観は「黄色い肌」「つり上がった細い目」、昔はここに「出っ歯」が加わり、キャラクター・イメージは「英語がヘタ」な「移民」だ。


“赤塗り”でワフー酋長となっているクリーヴランド・インディアンズのファン


黒人の肌の色は(白人に比べると)濃い。黒人は音楽とダンスの豊かな文化を持ち、それは白人のものとは異なる。インディアンの肌の色も(白人に比べると)濃い。(白人の視点では)インディアンは(占領者としてやってきた)白人に対して残虐に闘った。

アメリカを支配した白人はマイノリティをコントロールし、社会の底辺に置き、その外観とキャラクターをステレオタイプ化し、笑い者にした。時には「勇猛果敢」など称賛もあったが、ほとんどの場合、インディアンをインディアンであるというだけの理由で見下し、黒人を黒人であるというだけの理由で見下した。マイノリティは支配者層が作り上げたステレオタイプに押し込められ、それ以外の個性を認められることはなかった。マルコムXが子どもの頃、弁護士になりたいと言うと、白人の教師が「黒人だから無理だ。大工になりなさい」と言ったのは有名な話だ。2016 年の現代においても機内で急病人が出た際、黒人医師が「医師です」と名乗り出てもフライトアテンダントが信じなかったという件が連続して報じられている。

アメリカでの『チビクロサンボ』絶版も同じくステレオタイプに由来する。『チビクロサンボ』が物語として優れているのは言うまでもない。筆者自身、子どもの頃はトラが溶けてできたバターで焼いたパンキーキを食べたくてしかたなかったという思い出がある。しかし、チビクロサンボは「トラに何度も何度も騙されて身ぐるみ剥がされるほど間抜け」なキャラクターとして描かれている。

チビクロサンボが白人であれば問題は起こらなった。白人は白人であるというだけの理由で貶められた経験を持たないゆえに、時に間抜けなキャラクターや醜いキャラクターとして描かれても笑って見過ごせる。しかし間抜けで醜いとしか描写されてこなかった、そして今もそう描写されるマイノリティはそうしたステレオタイプを払拭していかねばならない。そうでなければ「医師」と名乗っても信じてもらえない社会のままであり続ける。


アメリカインディアン国民会議によるクリーヴランド・インディアンズのキャラクター抗議広告。架空の「ニューヨーク・ユダヤ人」「サンフランシスコ中国人」はダメだと誰でも思うが、「クリーヴランド・インディアンズ」が良しとされるのはなぜかを問うている。


日本の人がこうしたステレオタイプの描写の害を理解し辛いのはアメリカの人種にまつわる歴史を知らず、知識として知ってはいてもそれが当該グループや個人、社会にどういった影響を与えてきたか、今も与え続けているかを生で見る機会がないからだ。欅坂46がナチスの制服にそっくりな衣装を着てステージに立ててしまうのも同じ理由だ。ある意味、仕方ないとはいえ、グローバル化した現代にあって「仕方ない」はもはや言い訳になり得ない。欅坂46について「当人たちは衣装を着せられているだけ」と擁護する声もあるが、平均年齢18〜19歳は大学生に相当し、アメリカで仮に大学生であれば退学処分も検討されるだろう。

クリーヴランド・インディアンズのワフー酋長については過去に何度も抗議運動や訴訟があり、現在、チームはワフー酋長を全面には押し出さないようにしているが、今もユニフォームやグッズに使われている。今、インディアンズはワールドシリーズに勝ち、チャンピオンになりそうな勢いだ。(これを書いている今、ワールドシリーズ第6戦が行われている)インディアンズが勝てば、ファンはワフー酋長のイラストを振りかざして優勝を祝うだろう。

MLBのコミッショナーは、ワールドシリーズ終了後にインディアンズのオーナーとワフー酋長について話し合うと発表している。---END---

 

 

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ヒューマン・バラク・オバマ
第1回:父親としてのオバマ大統領〜「私はフェミニスト」
第2回:バラク・オバマは「黒人」なのか〜人種ミックスの孤独
第3回:マイ・ブラザーズ・キーパー〜黒人少年の未来のために
第4回:“二重国籍疑惑”の大統領候補たち〜「生まれつきのアメリカ人」とは?
第5回:ドナルド・トランプを大統領にしてはいけない理由
第6回:大統領はクリスチャン〜米国大統領選と宗教





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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 11:48
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シカゴ:銃撃の都市〜逃げる黒人を警官が背後から射殺

シカゴ:銃撃の都市

 〜逃げる黒人を警官が背後から射殺

 

 

またしても黒人青年が警官によって射殺された。シカゴ。青年が運転する車に向って警官が何発も発砲する様が、警官が装着している小型ビデオカメラ(ボディカム)によって撮影されており、その銃撃の派手派手しさはアクション映画さながらだ。しかし、車を降りた丸腰の青年を警官が背後から撃って死なせた瞬間の映像だけは、なぜか残されていない。

 

 

7月28日、午後7時半頃。イリノイ州シカゴ。黒人青年ポール・オニール(18)は盗難車を運転していたとされる。警官はオニールの車を停めようとしたが、オニールは停まらず、パトカーと接触。そのまま走り去るオニールの車に警官が発砲。その後、オニールの車は別のパトカーに衝突。この時点でオニールは車を乗り捨て、民家の裏庭へと逃走。複数の警官が徒歩で追跡。数人の警官は裏庭の塀の戸に阻まれるも、一人の警官が戸をよじのぼって乗り越える。その時、戸の向うで数発の銃声。この発砲でオニールは死亡したと思われる。



警官のボディカムによって撮影された事件のビデオ映像(編集版)

 

 

しかし発砲の瞬間の映像はなく、ビデオは塀の反対側のシーンに飛ぶ。地面にうつ伏せに倒れているオニール。黒いバックパックを背負っているが、白いTシャツの背中の右側に大きな血の染みが見える。おそらくすでに死んでいるか、死にかかっているオニールに手錠をかけ、バックパックの中を探る警官。一人の警官は自分も撃たれたと思い、身体をチェックするが、どこも撃たれてはいない。なぜなら、ポール・オニールは銃を持っていなかった。ビデオに録音されている警官たちのセリフによると、最初の警官の発砲を他の警官がオニールによる発砲と勘違いし、“応戦”したのだ。そもそも警官が動いている車へ発砲すること自体が違法である。

 

 

8月5日に警察の記者会見が開かれ、複数の警官のボディカムとパトカーのダッシュボードに取り付けたビデオカメラの映像計9本が公開されたが、オニールを撃った警官のボディカムは「うまく動作していなかった」と発表された。発砲した警官3人はすでに停職中だが、本格的な捜査はこれからとなる。

 

 

映像の中で、ある警官は「マザファッカー、オレたちをファッキン撃ちやがった」と言っている。ハイファイブ(ハイタッチ)をする2人の警官がいる。発砲した警官は「30日のファッキン・デスクワークだぜ」と不平を言っている。

 


■シカゴ:荒廃の都市

 


この事件が起ったシカゴは犯罪発生率が非常に高い。アメリカで治安の悪い都市と言えば、日本ではニューヨーク、中でもハーレム、サウスブロンクス、LAならコンプトン、サウスロサンゼルス(旧サウスセントラル)などが知られるが、そうした“イメージ”と実態は異なる。ワシントンンD.C.や、ニューヨーク旅行の際に使われることもあるニュージャージー州の空港のあるニューアークなど、日本ではなんとなく治安が良さそうだと思われている場所が犯罪多発地区であることも少なくない。

 

 

特に近年、シカゴの治安が大きな問題となっている。
人口と事件数をニューヨーク市と比較してみる。


ニューヨーク市
人口:850万人
発砲事件の被害者:636人(1/1〜7/31)
殺人犠牲者:193人(1/1〜7/31)

 

シカゴ
人口:270万人
発砲事件の被害者:2,430人(1/1〜8/6)
殺人犠牲者386人(1/1〜8/6)


シカゴの人口はニューヨークの3分の1以下だが、発砲事件は4倍近く、殺人はちょうど2倍となっている。

 

 

シカゴの新聞、シカゴ・トリビューンのサイトを見ていると、6日(土)に「金曜の朝から土曜未明にかけて発砲事件により4人死亡、17人負傷」の記事があった。翌7日(日)にサイトに戻ると、「土曜の午前10時から日曜の午前4時半にかけて銃により2人死亡、24日負傷」の記事。

 

 

シカゴ市長のラーム・エマニュエルは、下院議員を経てオバマ政権の初代ホワイトハウス主席補佐官となった人物だ。オバマ大統領とは同郷であり、個人的にも仲の良い友人同士だったが、就任から2年を待たずに辞任して地元シカゴの市長に立候補し、当選。下院議員→首席補佐官→市長とは異例のルートだが、それだけ荒れ放題の故郷への思いが強く、また闊達なエマニュエルは自分の辣腕を発揮するチャンスとも思ったのだろう。話は逸れるが、同じように荒廃を極めたニュージャージー州ニューアークで「殺人件数を減らす」ことを目標に市長となり、今は上院議員となっているコーリー・ブッカーとは逆のルートだ。

 

 

それだけやる気のあったエマニュエル市長だが、シカゴの犯罪には手こずっている。犯罪者の間に違法の銃が蔓延すればするほど、警官は自己防衛のために先に撃つようになる。すると容疑者と取り違えられた市民や、銃を持たずに軽微な犯罪を犯しただけの者までたやすく撃たれる。その際、警官に黒人への偏見があることは被害者の人種別データを見れば分かる。

 

 

こうした事件が続くと黒人市民と警察の関係が険悪になり、さらなる悪循環を招く。2年前に同じくシカゴで起った警官による黒人少年ラクアン・マクドナルド(17)射殺事件の際、射殺の瞬間の監視ビデオ映像が長らく公開されなかった。内容に憤慨した市民による大規模なデモや暴動を恐れ、かつ保身のためと思われるが、結果的に市民をさらに怒らせることとなり、ラーム市長への辞任要求が起った。シカゴの警官がボディカムを付け始めたのもこれが理由だ。警察活動の映像を残して透明性を保つという主旨で、今、全米の警察が徐々にボディカムを導入しているが、警官たちはその存在を驚くほど無視した行動を続け、さらには「なぜか機能しなかった」と言う。

 

 

遺族と地元民、ブラック・ライブス・マターは今回の事件への抗議運動を続けている。現時点では事件の先行きは不明だが、シカゴに限らず、市民を殺害した警官の多くは起訴さえされず、裁判になっても圧倒的多数は無罪、もしくは実刑を免れている。

 

 

 

 

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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 16:11
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撃たれ続ける黒人男性(障害者施設セラピスト)〜警官が抱える恐怖心

 

撃たれ続ける黒人男性(障害者施設セラピスト)
〜警官が抱える恐怖心

 

 

あなたがニューヨークを一人旅で訪れているとする。何故か人通りの少ない道に迷い込んでしまい、不安になってきた。この時、警官を見掛ければホッとするに違いない。駅までの道を聞けば教えてくれる。あなたは、できればこのまま駅まで一緒に歩いて欲しいと思うに違いない。

 


しかし、地元の黒人男性なら話は違う。自分は独り、NYPDは常にコンビでパトロールするから、あちらは2人。回りに誰もいない。ここで警官に何かされたら目撃者もいない。だから唐突な動きはしない。ポケットに手も入れない。その動作は死をも招く。無事にすれ違うまで平静を装い、淡々と歩く。もし声を掛けられたら、聞かれたことにのみ答え、口答えはしない。そして無事、解放されるまで、やはり平静を装う。犯罪歴など無く、後ろ暗いことが何も無くとも、同じだ。

 


 


7月18日。フロリダ州ノースマイアミで黒人男性が警官に脚を撃たれた。この男性、チャールズ・キンゼイ氏は警官に対して黒人男性が「してはいけないこと」を全てやらなかった。それどころか、自ら路上に横たわり、両腕を上げ、自分の職業と状況説明をし、つまり撃たれないために「すべきこと」を全てしたにもかかわらず、それでも撃たれてしまった。

 


キンゼイ氏は障害者施設に勤務するセラピスト。この日、自閉症の23歳の青年が施設を抜け出したため、連れ戻そうとしていた。ところが、青年が持っていたトラックのオモチャを銃と見間違えた近隣の住人が警察に電話。警官が駆け付けた時点でキンゼイ氏はここ最近の警官による黒人射殺事件と、元米兵の黒人による警官射殺事件を思い、地面に寝、両手を上げた。

 


この辺りから目撃者がビデオ撮影を開始。キンゼイ氏は自分の足下に座り込んでいる青年に「腹這いになれ」と言うが、普段はキンゼイ氏と仲が良いとされる青年は「黙れ!マヌケ!」と叫び返し、言うことを聞かない。

 


キンゼイ氏はすでにライフルを構えている警官に対し、「彼が持っているのはオモチャのトラックだけです。私は施設のセラピストです」「銃は必要ありません」と大きな声で伝えている。

 

黄緑のシャツが障害者施設セラピストのキンゼイ氏。グレーのシャツは自閉症の青年。

 


ここでいったん映像が切れ、警官が3発撃ち、1発がキンゼイ氏に当たった後に再開している。キンゼイ氏と青年は共に路上に腹這いで手錠をかけられている。ビデオ撮影をしている人たちの会話が録音されている。

 


「どうして太ったやつ(青年)じゃなくて、黒人が撃たれたんだ?」
「なぜって、黒人の件だよ」

 


黒人の件とは、先述の射殺事件のことと思われる。

 


キンゼイ氏は収容先の病院で地元TV局のインタビューを受けた際に、撃たれた直後、警官に「サー(Sir),  なぜ、私を撃ったんですか?」と聞いたと言っている。

 


警官の答えは「I don't know.」(分からない)だった。

 


 


これまで何度も書いてきたように、こうした事件の根本の原因は警官が抱える黒人への恐怖心だ。子どもの頃から周囲の大人やメディアによって染み込ませられた黒人への恐怖。それは警官になっても消えることはない。だから「撃たれる前に撃て」となる。相手が「障害者施設のセラピスト」と名乗っても、その声が耳に入ることはない。相手は「黒人」なのだ。

 


事件翌日の警察発表は「警官は青年が銃を持っていると思い、キンゼイ氏の安全のために青年を撃ったつもりがキンゼイ氏に当たった」

 


警官組合の談話は「事故だった。警官も時には間違いを冒す。警官はコンピュータでもロボットでもない。神の創造物だ」

 

 

 


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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 19:00
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「アメリカであなたが黒人なら殺される23の理由」 〜アリシア・キーズ

「アメリカであなたが黒人なら殺される23の理由」

 〜アリシア・キーズ

 

止まらない黒人への警察暴力と、黒人の生命の貴重さを訴えるカウンター運動ブラック・ライヴズ・マター。アメリカは今も大揺れに揺れている。


その最中、R&Bシンガーのアリシア・キーズがビヨンセ、リアーナ、レニー・クラヴィッツ、マックスウェル、A$APロッキー、ボノなど錚々たるメンバーを集めて「We Are Here Movement」を起こした。


7月13日にアップされたビデオ「アメリカであなたが黒人なら殺される23の理由」には、過去に主に警察暴力によって命を落とした黒人たちの名と、死に追いやられた理由が延々と23件分続く。



これほどたくさんの人が殺された理由は「雨の日にフーディを被っていた」「子どもが公園で玩具の銃で遊んでいた」「自宅アパートの遅いエレベーターの代わりに非常階段を使っていた」など、いずれも誰もが日常生活で何も考えず、ごく普通のおこなう行動だ。しかし黒人であれば、その代償が時には「死」、しかも警官の放つ銃弾によるものとなってしまう。



以下がそのリスト。



1)サンドラ・ブランド(28)
2015年7月13日
テキサス州ウォラー
「車線変更時に方向指示器を未灯火」
(※留置所内で死亡)

 

 

2)フィランド・カスティリョ(32)
2016年7月6日
ミネソタ州ファルコンハイツ
「恋人の車を運転」

 

 

3)レマーリー・グラハム(18)
2012年2月2日
ニューヨーク市ブロンクス
「自宅アパートのトイレへ走り込む」

 

 

4)エリック・ガーナー(43)
2014年7月17日
ニューヨーク市スタテンアイランド
「雑貨屋の前でタバコを販売」
(※警官に羽交い締めにされ、窒息死)

 

 

5)オスカー・グラント(22)
2009年1月1日
カリフォルニア州オークランド
「電車に乗る」

 

 

6)グレッグ・ガン(58)
2016年2月25日
アラバマ州モントゴメリー
「友人と自宅へ向って歩く」

 

 

7)フレディ・グレイ(25)
2015年4月12日
メリーランド州ボルティモア
「目を合わせる」
(※警察署へ向う警察車輛の中で負傷、死亡)

 

 

8)アルトン・スターリング(37)
2016年7月5日
ルイジアナ州バトンルージュ
「スーパーマーケットの前でCDを売る」

 

 

9)トレイヴォン・マーティン(17)
2012年2月26日
フロリダ州サンフォード
「フーディを着る」
(※自称自警団の男性に射殺される)

 

 

10)マリオ・ウッズ(26)
2015年12月2日
カリフォルニア州サンフランシスコ
「警官から歩き去る」

 

 

11)ラクアン・マクドナルド(17)
2014年10月20日
イリノイ州シカゴ
「警官に歩み寄る」

 

 

12)サミュエル・デュボース(43)
2015年7月19日
オハイオ州シンシナチ
「前部のナンバープレート紛失」

 

 

13)タミア・ライス(12)
2014年11月23日
オハイオ州クリーブランド
「オハイオの公園でモデルガンを手に持つ」
(※同州は銃の携帯が合法)

 

 

14)ウォルター・L・スコット(50)
2015年4月4日
サウスカロライナ州ノースチャールストン
「ブレーキライトの壊れた車を運転

 

 

15)ショーン・ベル(23)
2006年11月25日
ニューヨーク市クイーンズ
「婚前パーティの前に自分の車の中に座る」

 

 

16)アカイ・ガーリー(28)
2014年11月20日
ニューヨーク市ブルックリン
「自宅アパートのビルの非常階段を使う」

(※射殺した警官はアジア系)

 

 

17)レニシャ・マクブライド(19)
2013年11月2日
ミシガン州ディアボーンハイツ
「事故の後に助けを呼ぶ」

 

 

18)インディア・M・ビーティ(25)
2016年3月19日
ヴァージニア州ノーフォーク
「ヴァージニア州でモデルガンを手に持つ」
(※同州は銃の携帯が合法)

 

 

19)

クレメンタ・ピンクニー(41)
シンシア・ハード(54)
シャロンダ・コールマン・シングルトン(45)
ティワンザ・サンダース(26)
エセル・ランス(70)
スージー・ジャクソン(87)
ディペイン・ミドルトン・ドクター(49)
ダニエル・シモンズ(74)
マイラ・トンプソン(59)
2015年6月17日
サウスカロライナ州ノースチャールストン
「聖書勉強会へ向う」
(※白人青年が黒人教会で銃を乱射)

 

 

 

20)ジョン・クロフォード(22)
2014年8月5日
オハイオ州ビーバークリーク
「ウォルマートでBB銃を手に持つ」
(※量販店の棚に陳列されていた銃を手にしていた)

 

 

21)レキア・ボイド(22)
2012年3月21日
イリノイ州シカゴ
「笑う」

 

 

22)アマドゥ・ディアロ(23)
1999年2月4日
ニューヨーク市ブロンクス
「サイフを掴む」
http://www.nybct.com/5-04-MM2000-5.html

 

 

23)ジャマル・クラーク(24)
2015年11月15日
ミネソタ州ミネアポリス
「誕生パーティに参加」

 

 

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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 18:00
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2日連続で起った警官による黒人殺害事件 〜 ルイジアナ州・ミネソタ州

7月5日、ルイジアナ州バトンルージュで黒人男性が警官に射殺される事件が起った。

 


路上でCDを売っていたアルトン・スターリング(37)が駆け付けた警官によって地面に押さえ付けられ、身動きできない状態で至近距離から数発撃たれて死亡したのだ。

 


一部始終が現場に居合せた人たちによってビデオ撮影されており、即日、全米がそれを見て大騒ぎとなった。

 




事件の詳細もまだ不明な翌6日、今度はミネソタ州で車を運転中の黒人男性が警官によって射殺された。その様子は車に同乗していた恋人が撮影し、ライブストリーミングしたため、またしても大騒ぎとなっている。

 


恋人がビデオの中で語った内容によると、車のテールランプが故障していたために警官に停められた際、運転していたフィランド・カスティル(32)が許可証のある拳銃を所持していることを警官に告げ、免許の類いをサイフから取り出そうとした瞬間に警官が数発撃ち、カスティルは死亡したとのこと。


恋人が撮影したビデオ(閲覧注意)

 

 

どちらも今後、捜査が為されて詳細が報道されるはずだが、黒人市民による抗議運動がすでに始まっている。

 


大統領選まっただ中につき、ヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプ両候補の対応も待たれる。

 


いずれにせよ、警官による黒人射殺事件が無くならない根本の理由は「警官の訓練不足」ではなく、「警官が抱える黒人への恐怖心」だ。

 


これまで何度もあちこちで書いたように思うが、警官たちもかつては「アメリカの普通の子ども」「アメリカの普通の若者」として、周囲から「黒人は怖い」というメッセージを受けて育っている。警官となり、容疑者と相対する際のスキルを訓練されても無意識下に染み込んだ恐怖心は無くならない。銃を持つ警官の黒人への恐怖は、黒人の殺害にいとも簡単につながってしまう。

 


つまり、アメリカ人の日常生活が人種を超えて平等になり、黒人へのステレオタイプが完全に払拭されるまで同様の事件は起り続ける。道のりは長い。

 


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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 12:46
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トランプ「ムスリム入国禁止」を生んだ黒人フォビア

■「すべてのイスラム教徒をアメリカ入国禁止に!」


「すべてのイスラム教徒をアメリカ入国禁止に!」 12月2日に起こったカリフォルニア州でのテロ事件を受けての共和党大統領候補ドナルド・トランプの発言だ。今、アメリカはこの件で上を下への大騒ぎとなっている。

リベラルなアメリカ人にとって、これはアメリカという国の理念を根底から覆すものであり、到底、受け入れられない。トランプを「レイシスト」「ファシスト」と呼び、非難が巻き起こっている。

厳しい移民政策を基本とする共和党も、さすがにたじろいだ。共和党員で下院議長のポール・ライアンが「本来は大統領選に口を出すことはしないが」と前置きした上で、トランプ発言は「コンサバティズム(保守主義)ではない」と断罪した。他にもトランプ発言を非難する声が続々と上がり、トランプは立候補当初に「やらない」と約束した、共和党を抜けて独立候補に切り替える可能性を仄めかしている。


■ “ガンに罹っている” 共和党


しかし、トランプというモンスターは、実は共和党が生み出したものだ。

CNNの連邦議会担当レポーターのダナ・バッシュが、ある人物の発言の引用として「共和党はガンに罹っている」と言った。まさにそのとおり。ガンの発症は7年前。「黒人」がアメリカ合衆国第44代大統領となった2008年以来の長患いだ。

史上初の黒人大統領の誕生に多くの共和党員と支持者はショックを受け、思考をマヒさせてしまった。以後、共和党は国政を止めてしまい、党の唯一の目的は黒人を大統領の座から引きずり降ろし、「国を取り戻す 」(I want my country back.)こととなった。

それでも常識や思慮のある層は、オバマ大統領の「政策」を批判し続けている。保守派がリベラルの政策を批判するのは当然だ。しかし、彼らは純粋に政策のみを批判しているのだろうか。実のところ、無意識下で大統領が黒人であることを、いまだに乗り越えられていないのではないか。

ネットでちょっと検索してみれば、オバマ大統領を醜い猿にフォトショした類いの画像がいくらでも出て来る。政策など理解しない、しようともしない、単なる黒人アレルギーの人種差別主義者によるものだと信じたいところだが。ちなみに、かつて隆盛を誇った白人至上主義団体KKKのような人種差別グループが、オバマ大統領の当選後にまた増えているという調査結果もある。

いずれにせよ、オバマ大統領の政治能力など気にも掛けず、そもそもバラク・オバマを人格を持ついち個人、もしくは人間とも看做していない層が少なからず存在する。そうした層にとってオバマは顔も名前もない単なる黒人であり、その黒人が自分の国を治めていることが許せないのだ。

過去2回の大統領選に於ける共和党の醜態は、それが理由だった。候補者たちの目的は優れた国政を目指すことではなく、「打倒・黒人大統領」だった。だからこそ2008年にはサラ・ペイリンを担ぎ出し、2012年の代表候補はミット・ロムニーとなった。大統領選が恐ろしくレベルの低い「見せ物小屋」となったのだった。

そして今回の大統領選。共和党支持者は党の過去2回の失敗で党を信頼できなくなっている。そこへ“彗星”のごとく現れたのがドナルド・トランプだった。トランプは政治家ではない。当選しなければ不動産業に戻るだけ。したがって他の候補者と違い、どんなことも口に出せる。選挙資金を自腹で賄えるので共和党本部の不興を買うことも気にしない。そんなトランプの度を超した「言いたい放題」に、トランプ支持者たちは大いなるカタルシスを得、興奮状態に陥っている。暴走するトランプと支持者を、共和党はすでに制御出来なくなっている。


■敵はテロリストか? 黒人大統領か?


折しもイスラム過激派によるテロがアメリカ国内でも起り、アメリカ人も騒然とし、関心はそこに集中した。視野が狭く、政治や社会を理解しない層、人種差別主義者たちは、トランプの「イスラム教徒の入国禁止」を「よくぞ言った!」と支持している。

そのトランプ発言を、先に書いたようにライアン下院議長が非難した。いまや米軍にはイスラム教徒/アラビア語話者の兵士が必須であり、対アラブ・ビジネスもある。そもそも特定の宗教の禁止など民主国家として世界に公言出来ることではない。

すると、途端に以下のフォトショ作品が登場した。白人のライアン下院議長を黒人化したものだ。

Paul Ryan

ライアン下院議長が批判したのはイスラム教徒および移民問題であり、黒人についてではない。しかしコラージュ戯画を作った人物はライアンを黒人として描いた。脊髄反射的にオバマ大統領とダブらせたのだろう。

コラージュ戯画の作者が誰に対して最も深い怒りと不信感を抱いているかの表れだ。テロリストを恐れているのは事実だろう、しかし、根の部分では今も「黒人大統領」を受け入れられず、怒りを燻らせ続けているのだ。こうした層を作り上げたのは、繰り返しになるが、過去7年間の共和党だ。オバマ政権との歩み寄りを一切拒否し、国政を妨げ続け、その責任を全てオバマ大統領になすりつけてきた共和党だ。

黒人を心理的にどうしても受け入れることが出来ず、しかし、それを立場上(少なくとも表立っては)口に出来ない者の集まりである政党と、黒人を受け入れられない事実を露骨に表明する党の一般支持者。「ガン」と表された、この二者のこじれた関係の隙間で大暴れを続ける、自身も人種差別主義者のドナルド・トランプ。

アメリカの人種問題はことほど深い。


■3歩進んでは2歩下がる


しかし、これらは全て歴史の転換期の一部だと考えたい。400年かかって黒人が大統領となった。それ自体は大いなる進歩だ。大きな変化には常に揺り戻しがある。黒人問題は3歩進んでは2歩下がる。そこには1歩の進歩がある。

イスラム教徒問題も同じだ。これも今後、長引くだろう。けれどアメリカは少なくとも問題を抱え、葛藤し続け、少しずつ道を見つけていく度量だけは持つ国なのである。




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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 00:58
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黒人教会乱射事件と私の10歳の息子
サウスキャロライナ州チャールストンの黒人教会での事件について、息子と話をした。白人至上主義に傾倒していた21歳の白人青年が黒人教会で乱射し、9人が亡くなった事件。

今10歳、小学5年生の息子に事件の概要を説明すると、「アタマのおかしい人はずっと刑務所に入れておかなきゃ」と言う。人種差別主義者による過度の黒人差別の実態をまだ知らないのだ。

私「んー、犯人のアタマがおかしいのは確かだけど、"精神の病気"だったら刑務所じゃなくて病院で治療を受けないとね。この犯人はブラックピープルが嫌いでやったんだけど」

息子「でも、死ぬまで刑務所に入れるのはかわいそう」

CNNが犠牲者を偲ぶ遺族のコメントを流していた。

私「犯人は黒人というグループが嫌いだったんだよね。一人ひとりは善い人で家族もいるってことに気付いていなかったと思う。黒人が全員悪人とか善人とか、白人が全員善いとか悪いとかないよね。犯人は今、遺族が悲しい思いをしてること、どう思ってるかなあ」

息子「ホワイトピープルも悪人ばかりじゃない。(マイケル・ブラウン事件の抗議集会で参加者が)警察はダメと言ってたけど、警官にも善い人はたくさんいる。皆を守ってくれている」

私「犯人は黒人の友だちがいなかったと思う。だから黒人のこと嫌いだったのかも」

息子「じゃあ黒人の友だちを作ってあげて、ずっと一緒にいさせるといい」

息子「それと! 銃は要らない! 皆、どうして銃なんか買うの?」

実際の会話はあちこちに脱線しながら進んだものの、おおよそこんな内容となった。



警官に射殺/絞殺された、または警察の拘束下で死亡した黒人男性たち

昨夏、ミズーリ州ファーガソンで18歳のマイケル・ブラウンが白人警官に射殺されて大騒動となったあたりから、息子にも少しずつこうした事件の説明をしてきた。息子が覚えていたように、ニューヨークでの抗議集会にも連れていった。以後も同様の事件が続いているため、「どうしてブラックピープルばっかり殺されるの?」と聞くこともあった。けれど今回の犯人にはなぜか同情している。CNNに写った顔が、人相は悪いとはいえ実年齢よりも若く見える(=自分に近い世代)からだろうか。

息子は学校ですでに奴隷制や公民権運動について基礎的なことは学んでいるが、詳細はまだ。何より子どもであるため、自覚できる直接的な人種差別を受けた体験がなく、“黒人史=一連の事件=自分”が未だ一本に繋がっていないのが見てとれる。

子どもの生活はどこでも似たようなもので、基本は家と学校の往復。息子は黒人街ハーレムの中で暮している。日常的に出会う白人は学校の先生のみ。再開発以降にハーレムに越して来た白人は当然リベラルでフレンドリー。息子がハーレムの外に出る時は必ず親が同伴する。タイムズスクエアに映画を観に行こうが、アッパーウエストサイドの本屋に行こうが、ロウワーイーストサイドのカポエラ教室に通おうが、独りになることはない。仮に独りで歩いても、幸か不幸か小柄で幼く見えるので、今もまだ気の善い白人警官から「よぉ!坊主!」と声を掛けられる外観であり、心配はしていない。

黒人少年の人生の第二の節目はこの後、中学生になる頃にやってくる。体格が大きくなり、大人の同伴なしの単独で、または友人と出歩く。世間の扱いが“子ども”から急に“黒人の男”となる。

以後、少年たちはいろいろな体験を重ねる。買い物に行くと万引きしないかと警備員に目を光らせられる。エレベーターで女性と2人だけで乗り合わせると相手の表情が緊張することに気付く。果てはひったくり予防にバッグを抱きかかえられる。学校、飲食店、地下鉄など、どこかで何か不祥事や事件があると真っ先に疑われる……そうした出来事の最悪のパターンがトレイヴォン・マーティン、マイケル・ブラウン、タミア・ライス、オスカー・グラント、ショーン・ベル、エリック・ガーナー、アマドゥ・ディアロ、エミット・ティル……問答無用に撃たれ、殴られ、首を絞められ、命を落としてしまうのだ。

黒人の子を持つ母親たちは、こうしたことが自分の息子に起こることを常に恐れ、起こらないようにと祈っている。

アメリカの主流社会が知る由もない、マイノリティ社会のリアリティ。

 


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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 18:30
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ルー語でゴー!
★アプライしてバケーション

筆者はルー大柴氏のファンだ。「ルー語」にとても惹かれる。「トゥギャザーしようぜ!」はもちろん、「薮からスティック(棒)」「寝耳にウォーター」といったゴロのいい諺にもシビれる。先日も愛媛大学ならぬ愛媛ユニバーシティで「人生はマウンテンあり、バレーあり」と銘打った講演会を開いたりと、ますますの活躍振りで嬉しい限りだ。

なぜルー語のファンかと言えば、アメリカ暮しの長い日本人の例に漏れず、いつの間にやらチュラルにルー語を使うようになってしまったから。「バケーション取った?」「あの学校にアプライしてるんだけど」などなど在米日本人同士で、日本の人にはかなり嫌がられそうな会話を交わしている。

先日も米国永住日本人のグループに日本から仕事で渡米中の男性が独りというシチュエーションがあり、ある女性が「あれはエクスクルーシブだから」と発言。男性は「あのぅ、エクスクルーシブってなんですか?」と聞き返した。日々こんなふうだから、ルー語を聞いて笑うのは自虐のカタルシスなのだ。

★同時通訳者は天才!

母国語と英語がちゃんぽんになるのは日本人だけではない。中南米系のニューヨーカーは猛烈な早口でスペイン語と英語が混じったスパングリッシュを喋っている。西アフリカ諸国から来た人たちの話を聞いていると、部族語なのに時々「メルシー」とか、「OK」とか言っている。部族語、彼らの共用語であるフランス語、アメリカに来てから学んだ英語が三つ巴になっているのだ。

並みの言語能力しか持たない凡人は大体こうなる。言葉の切り替えスイッチがシャープに動作しない。

アメリカ人と日本人の間に立って同時通訳会話をすると、それを思い知らされる。英語を話さない友人の言ったことを英語でアメリカ人に伝える。アメリカ人の返事を日本語にして友人に戻す。友人の次の質問をまた英語にしてアメリカ人に聞く。これを何度か繰り返すうちに脳みそが混乱し、うっかり日本人に「Because, she's...」などと英語で言ってしまう。会話の内容は買い物であるとか、道順であるとか、至って簡単であるにもかかわらず。

逆に言えば、専門的な内容を二言語ぶれずに正確に訳すプロの通訳者は言語の天才なのである。それでも連続通訳時間は20分が限界、長引く場では複数の通訳者が交代で務めるのである。

★言葉を越える何か

ルー語が生まれたのは、ルー大柴氏が若い頃に帰国子女のガールフレンドと付き合っていたかららしい。彼女も日英ちゃんぽんのナチュラル・ルー語を使っていたのだろう。なるほどアンダースタンドだ。

こうした言語の混乱を理由に、複数言語教育に意義を唱える人がいる。

筆者の知人に中学時代からアメリカに住んでいる日本人と、カナダで育ち、いったん帰国して中高を日本で過ごし、アメリカの大学に進んだ日本人がいる。2人とも「英語も日本語も中途半端です」と言う。どちらの言葉でも日常生活での不便は無いバイリンガルだが、複雑な心情などを語りたい時に語り切れていないように感じるらしい。敬語も苦手だと言う。子どもの言葉から大人の言葉に少しずつ移行する中高生時代に言語環境が変わったことが原因なのかもしれない。けれど2人とも複数の言葉と国と生活環境を知る人ならではの感性を活かして映像クリエイター、異文化プロデューサーとなっている。

日本国内では当然、正しい日本語を維持する努力が為されてしかるべきだが、1億3千万人もの人口のうち、何パーセントかはこうした言語感覚を持つ人がいてもいいのではないかと思う。時に日本語が不正確であっても、それを補う何かをこうした人々は持っている。それを許容し、活かす社会であれば、結局は社会の利益になるとミーは考えるのだが。いかがでしょうか、ジャパンのエブリバディ。それでは今年もよろしく! ハヴ・ア・グレート・イヤー!

雑誌インサイト 2015年1月号掲載
ビッグアップルの芯 Vol. 66「ルー語でゴー!」
 



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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 13:28
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