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アメリカの絵本:『ウェン・ゴッド・メイド・ユー』

American Picture Book Review #4
『ウェン・ゴッド・メイド・ユー』
 When God Made You


著:Matthew Paul Turnery
画:David Catrow

■アメリカの絵本をとおしてアメリカを知る■

初出:週刊読書人 2017/8/1号



 『When God Made You』(神さまがあなたをお創りになった時)に登場するのは、溢れんばかりの絵の才能を持つ幼い少女と神。少女に名前はなく、絵本の語り手は少女を「You」と呼び、なぜ「God」が少女をこの世に送り出したかを繰り返し語る。

 ある日、自転車で街に出た少女は公園で嘆き悲しむ青年を見掛ける。見知らぬ青年を元気づけるために少女は絵筆を握り、空間を色彩で染め上げてゆく。少女は神から授かった才能を青年のために惜しみなく使い、かつ自身を自然界に解き放ち、どこまでも描き続ける。やがて少女と青年は少女が描いた鳥の背に乗り、空想の旅に出る。

 少女は自分の才能を人にふるまうことに疑問を抱かない。なぜなら人はお互いに愛し合わねばならないと知っているからだ。同時に神に与えられた才能を自覚する少女は自信と確信に満ち、強く、勇敢でもある。神は細心の注意をはらって創り上げた創造物を所有し、コントロールすることは目的とせず、少女が少女自身であることこそが望みなのだ。

 冒頭には少女の自宅シーンがあり、まだ赤ん坊の妹やペットの犬や猫がいる。室内のインテリアは温かい色彩だ。少女の両親は登場しないが、少女が両親に慈しまれて育っていることは見て取れる。しかし、この物語は少女を物理的に生み出した両親ではなく、森羅万象を司る神と「You」、つまり読者の子ども一人ひとりの絆の物語なのである。

 アメリカはキリスト教の風土が非常に強い国だ。人口の7割がクリスチャンであり、2割を超える無信仰者や無神論者も多くはキリスト教家庭で育ち、のちに信仰を止めた層とみていいだろう。続くユダヤ教徒は2%、イスラム教徒は1%にも満たない。歴代大統領は全員がクリスチャンであり、政教分離も建前と言える。近年、子どもを学校に通わせず、自宅で親が教育するホームスクール人口が200万人に届こうとしているが、信仰が理由のケースも少なくない。信仰熱心な若者は信仰のメッセージをロックやラップにして歌う。外観は一般の若者たちとなんら変わらないが、歌詞には「God」がちりばめられている。

 こうしたキリスト教国アメリカを理解するにはやはりキリスト教の基礎知識が必要となるわけだが、アメリカに暮らすとなると日常で接するクリスチャンの思考法や信条を知ることがより必須となる。この絵本のテーマである神と個人の強い繋がりは、まさにその筆頭なのである。

 

 

 

 



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author:堂本かおる, category:絵本, 10:10
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大阪とハーレムが育んだ2冊の本「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」&「よい謝罪」
大阪とハーレムが育んだ2冊の本「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」&「よい謝罪
著:竹中功(吉本興業元広報、よしもとクリエイティブエージェンシー元専務取締役)


 友人の竹中功さんがまたニューヨークにやってきた。一緒に北インドのカレーを食べ、最近、出版した2冊の本をいただいた。「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す〜自分を愛するコミュニケーション」「よい謝罪〜仕事の危機を乗り切るための謝る技術」というタイトルだ。



 2冊目はビジネス・マナーのハウツー本のようなタイトルだが、後書きには竹中さんが2年前の夏を過ごしたハーレムのことが書かれている。竹中さんは熱心なジャズ・ファンなのだ。

 "私は友人の紹介でアパートの一部屋を借りて世話になっていたのだが、トイレとテレビが壊れていても、黒人の家主は「すぐ直すわ」。インターネットがつながらなくなっていると、「今から料金、払ろてくるわ」。魚釣りに行くので約束通り早起きすると、「眠たいから今度にしようや」などなど、家族か兄弟みたいに気楽に返事をしておいて、残念ながら約束はだいたい守らない。実現したとしても、いつも何日も時間がかかった。
 このエエ加減な対応と許さざるを得ない陽気な人柄はどこから来るのかと思って、家主や同じアパートの住人に聞いてみると、軽い口調で「わてらは400年前、何代も前のじいさんがアメリカに奴隷として連れてこられてん。今日も元気に生きてられることを、わしはホンマに先祖や神さんに感謝してるねん。生きてさえおったら、明日はまたエエことが起こるねん」"


 冒頭のアパートを紹介した友人とは私のことで、黒人の大家とは私の友人ケヴィンのことだ。ケヴィンほど気のよい人間はほかにいないが、竹中さんが書いているように細かいことにはかなりテキトーでもある。しかし竹中さんは、そんなケヴィンとハーレムから良いところだけをエキスのように抽出し、吸収して、少々の(かなりの)不便をものともせず、ハーレム暮らしを300%満喫した。それができたのは、竹中さんが実はそうとうな "他者とのコミュニケーションの達人" だからである。


■「よい謝罪」

 竹中さんは吉本興業で広報、雑誌編集、芸人育成、劇場オープン、映画プロデュースなど、芸人としてステージに立つ以外はほとんど全てを手掛けてきた人だ。吉本総合芸能学院(よしもとNSC)を立ち上げたのも竹中さんだ。「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」に出てくるが、入学申し込みにやってきた若き日の松ちゃん・浜ちゃんを見初めて入学させたのも竹中さんだった。(竹中さんがいなければ、ダウンタウンは世に出なかったかもしれないのだ!)

 そんな竹中さんの重要な仕事のひとつが、不祥事を起こした芸人の謝罪記者会見の仕切りだった。正直、日本の芸能人の謝罪記者会見のありように私自身は疑問を抱くことも多いのだが、ああした会見も背後での仕切り方によって成果がまったく異なることを「よい謝罪」で知った。

 ハーレムで明るく正直でテキトーなケヴィンと親友になれた竹中さんも、明るく、正直な人だ(テキトーではなく、緻密で論理的なことは本書を読めば分かる)。謝罪も小手先ではなく、正直に誠心誠意おこなう。最も重要なポイントは、被害をこうむった相手に心から謝ることだと言う。そこは絶対に譲らない前提とした上で、プロならではのコミュニケーション術を駆使し、プロならではの仕切りをおこなうのである。そしてこの謝罪スキルは、芸人ではない一般人にも応用できるのである。


■「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」

 一流のプロだからこそのさりげなさゆえに、逆にプロとは思わせないナチュラルなコミュニケーション・スキル。今、竹中さんはそれを意外な場所で活用している。刑務所だ。出所を控えた収容者たちに出所後のコミュニケーション法を伝授しているのだ。根っからの人間好きゆえ、収容者だけでなく刑務官にまで適正な距離を保った上で人としての眼差しを向けているが、そこにはやはりプロのノウハウがある。それをかなり具体的に綴ったのが「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」で、これも塀の外にいる私たちにも応用できる。

 加えて竹中さんはそもそもは凝り性らしく、日本の刑務所の実態や歴史をリサーチし、それも丹念に書き込んである。だから刑務所を知るための読み物としても楽しめる。合間合間に吉本興業の裏話や日本のお笑いの歴史が挟まれている。通読すると、あちこちに網走番外地高倉健、エリック・クラプトン、桂春団治、ブルース・リー、渡辺直美といった古今東西のセレブの名が現れ、やや「え?え?え?」となるが、「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」は一粒で三度、もしくは四度おいしい内容といえるのかもしれない。


■「あれ」も「これ」も「それ」も。

 2冊併せての散漫な書評となったが、要は竹中さんは多才かつ好奇心旺盛で、あれもこれもそれもやりたくなる人なのだ。そして、一見つながりのない「あれ」と「これ」と「それ」が本人の中では無理なくスッと一本につながり、そこから人とのコミュニケーションのための新たなアイデアが湧き出、実行に移せてしまうのだろう。まったくもって羨ましい限りである。竹中さん、大阪戻ったらまたおもろい本を書いてください。それでまたハーレム来てください。ケヴィンにも会ってやってください。ほなお元気で。



 

 

 

 



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author:堂本かおる, category:その他, 16:42
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"いずれにせよ、ニガだ" 〜 ジェイ・Z「O.J.シンプソンの物語」

ジェイ・Z「The Story of O.J.」より

Light nigga 肌の色が薄いニガ
dark nigga 肌の色が濃いニガ

faux nigga ヘラヘラしたニガ
real nigga 黒人意識の高いニガ

Rich nigga リッチなニガ
poor nigga プアなニガ

house nigga* 白人にへつらうニガ
field nigga** 野で過酷に働くニガ

Still nigga いずれにせよニガだ
still nigga いずれにせよニガだ

Financial freedom my only hope
俺の唯一の望みは経済的な自由だ

*白人の屋敷で働く奴隷 **戸外で農作業をする奴隷




 



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author:堂本かおる, category:Hip Hop, 22:05
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ハーレムウィーク2017(写真30点)

ハーレムウィーク 2017 (写真集)

 

毎年8月におこなわれるストリート・フェスティバル。

ハーレムの過去・今・未来。

楽しい・美味しい・音楽とダンスだらけ。カラテなんかもあったりする。

来年はぜひ来てください。

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揚げ物屋:白身サカナ、チキンウィングス、エビ、ポテト

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定番コンボ:フライドチキン&ワッフル

 

チキンウィング!

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BBQグリル

 

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レッドヴェルヴェット・カップケーキ

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踊る

踊る

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特設ステージでのコンサート。ほんとうはトリオ。

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 銃がいかにコミュニティを脅かすかについてラップする少年

 

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ハーレム・マザーズ:銃で息子を亡くした女性たちの会


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ラッパーもここまで進化:メタリカのTシャツとダメッジド・ジーンズ

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いつもはメインストリートで叩いているドラマー。ご近所さん

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ラテンで踊る〜前日のドミニカ共和国パレードの勢いでやってきた山車

真似のできないスーパー・コーディネイト

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「ブラック・ライヴズ・マター」

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「サンキュー、オバマ大統領とファーストレディ」(右)

「めっちゃブラック。文句あるか」(左)

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「トランプを弾劾せよ」

 

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「ハーレム:移民の街」 画家もパナマからの移民

これも反トランプ・メッセージ

 

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海兵隊リクルート・トレイラー

(この翌日にアフガン増兵が発表された)

 

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本流から分けられ、しかし米国史を作り上げた黒人たち

黒人野球リーグ:ニグロ・リーグ

黒人飛行隊:タスキージ・エアマン

黒人部隊:バッファロー・ソルジャーズ

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西アフリカ製の生地で作るアクセサリー。お見事

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アフリカ大陸をモチーフにしたイヤリング


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西アフリカの生地で作るドレス、ブラウス

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ジェイ・Z 〜 ラッパー、プロデューサー、実業家(1965 – )

アイダ・B・ウェルズ 〜 黒人女性ジャーナリスト(1862 – 1931)

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アフロピック(アフロヘア専用の櫛)型のヘアバンド

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人種を超えて〜新しいハーレム

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ダンス・シアター・オブ・ハーレム:未来のバレリーナ  ↑

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「ちゃんとつけろよ!」〜NY市が無料配布するコーンドーム

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アポロシアターのテント

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四角いブームボックス。欲しい

 

美味しかったね、楽しかったね。また来年!






 

 



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
ワシントンハイツ・ツアー(スペイン語の街 "In the Heights"はここで生まれた!)

 

 

 

 

 


 

 

 

author:堂本かおる, category:ハーレム, 07:31
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南軍リー将軍の銅像はなぜ撤去されねばならないか〜ヴァージニア州の騒乱と悲劇のルーツ奴隷制

南軍リー将軍の銅像はなぜ撤去されねばならないか〜ヴァージニア州の騒乱と悲劇のルーツ 奴隷制

 先週末にヴァージニア州シャーロッツヴィルで起こった事件(前回の記事へのリンク)の発端は、南北戦争時の南軍の将軍、ロバート・E・リーの銅像だ。市議会で決まった公園からの銅像撤去に反対する白人至上主義者が州外から大挙してシャーロッツヴィルに押しかけ、それに対する抗議グループ(カウンター)との間に非常に暴力的な衝突が繰り返され、死者、重軽傷者が出た。

 この事態を受け、全米各地にあるリー将軍を含む南軍由来の銅像や記念碑などが次々と撤去、または撤去の検討がなされている。理由は奴隷制を旗頭に挙げた南軍を英雄視することへの異議と、シャーロッツヴィルと同様の事態が起こることを避けるためと思われる。


奴隷市場でセリにかけられる奴隷一家(ヴァージニア州)
家族バラバラに売られることもあった



 今となっては到底受け入れることのできない奴隷制だが、アメリカの史実である。史実を象徴する銅像を撤去することへの疑問の声が漏れ聞こえてくる。

 南軍由来の銅像や南軍旗を撤廃しなければならない理由は、奴隷制が実はまだ終わっていないからだ。

 もちろん奴隷制自体は約150年前に終わっている。(逆に言えば、たかだか150年前までこの国に奴隷が存在していたことに驚かされるわけだが。)しかし、人間性を根底から覆す奴隷制が何世代にもわたって続くと、廃止されても当事者の人間性と社会的な地位を回復することは困難になる。しかも外観から容易に識別できる黒人種に限定されていることが重なり、アメリカの黒人は今も奴隷制の影の中に生きることを強いられている。


1619:ジェームズタウン(ヴァージニア州)に20人のアフリカ人が搬送される

  (↑244年間↓)

1863:奴隷解放宣言 1865:リンカーン暗殺 KKK結成

  (↑101年間↓)

1964:公民権法制定

  (↑53年間↓)

2017:ヴァージニア州シャーロッツヴィルの騒乱



 黒人奴隷制はカリブ海諸島でかなり早い時期に始まっているが、ここでは現在のアメリカ合衆国に限定して話を進める。

 240年間にわたる奴隷制が終わった途端にKKKが結成されているのである。目的は自由人となった黒人を抑圧、加虐し、白人の優位性を保つことだ。以後、黒人たちへの厳しい差別、リンチ、殺害が続き、黒人は差別から派生する貧困にもあえぎ続ける。そのため多くの黒人が南部を出て都市部に大移動。1950年代以降、黒人たちは人種による学校の住み分け、異人種間の婚姻禁止なども含め、黒人へのいわれなき差別を撤廃するための公民権運動を展開する。繰り返されるデモ、収監、嫌がらせ、暗殺などを乗り越え、1964年に公民権法が成立する。奴隷解放宣言から実に100年後のことである。しかし、その後も差別と貧困は解消せず、全米各地で黒人暴動が起こっている。



鞭打たれた奴隷


 以下は奴隷解放宣言から154年、公民権法制定から53年を経た現在の黒人と白人の格差。


大卒率(2年制含む)
白人ー62.0%(2010年に入学した163万人のうち)
黒人ー38.0%(2010年に入学した34万人のうち)



刑務所収監率(人口10万人あたり) 2010
白人ー385人
黒人ー2,304人



世帯年収中央値 2015(貧困率は2010-1011)
白人ー60,325ドル(貧困率10%)
黒人ー35,439ドル(貧困率26%)



 貧しさゆえに良い教育が受けられず、すると進学が難しくなる。学歴がないと良い職に就けず、貧困のままとなり、犯罪率も上がる。そうした若者や大人から生まれた子供たちも貧困の中で育ち……黒人は何世代にもわたって、この負のサイクルにはめ込まれてしまっている。

 鍵となるのは教育だが、教育は文化と直結する。貧困地区に生まれ、教育や勉強の文化も習慣もなく育った子供に、のちになって奨学金を与えても手遅れなことが多い。「家庭の貧富の差により、3歳までに耳にする単語の総数に3000万語の違い」が発表され、教育界に衝撃を与えたが、4歳でPre-K(幼稚園)に入園した時点ですでに存在するこの違いを克服することがいかに困難か。白人と黒人の小中学生の読み書き能力には4学年分の差があるとも言われている。

 また、人種別に居住区が分かれるため、黒人地区に生まれ育った子供が通う学校の生徒はほぼ黒人のみである。白人の大人も黒人居住区を訪れる必然性がないため、黒人社会の実情を知る機会はほとんどない。

 現在、黒人の全米人口比率は13%(4,300万人)。国家的にみて決して少なくない人口の年収が白人の6割に満たず、4人にひとりが貧困。貧困率は子供に限定するとさらに高くなる。この事態は当事者の黒人だけでなく、白人もふくめて国全体にマイナスの影響を及ぼしている。しかし人種間の断絶から、その実態はなかなか理解されずにいる。

 断絶、無理解は警官や政治家、司法制度にも及ぶ。だからこそ今も黒人が警官に射殺され続けている。警官は無罪となり続けている。そしてまた、警官による新たな黒人射殺事件が起こる。

 それを見て高揚しているのが白人至上主義者だ。今回のヴァージニア州の事件を時系列でまとめた以下の映像を見ると、白人至上主義者は「必要とあれば俺たちはファッキン・ピープル(黒人、ユダヤ系、移民など)を殺す」「俺たちがコトを成し遂げるまでに、さらに人が死ぬだろう」と語っている。


Charlottesville: Race and Terror – VICE News Tonight on HBO




 こうした現状の根にあるのが奴隷制だ。奴隷制が大国アメリカの経済基盤を作ったことは事実だが、修復しようのない大きな禍根を残した。アメリカは今も過去の奴隷制ゆえに揺らぎ続け、市民がお互いを傷付けあっている。だからこそ南軍由来の銅像は公共の場から撤去されるべきなのだ。人々が平和に集う公園に置かれるべきではない。博物館と教科書の中にのみ存在すべきものなのである。

 

 

 

 



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
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ワシントンハイツ・ツアー(スペイン語の街 "In the Heights"はここで生まれた!)

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 09:43
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ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』オフ・ブロードウェイ版〜移民の街とラテンのリズム

ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』オフ・ブロードウェイ版〜移民の街とラテンのリズム

 ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』を観た。昨年、歴史ヒップホップ・ミュージカル『ハミルトン』を大ヒットさせたリン-マニュエル・ミランダのデビュー作だ。ただしブロードウェイ版はかなり以前に終了しており、今回観たのはイースト・ハーレムにある小劇場 ハーレム・レパートリー・シアター でのオフ・ブロードウェイ版だ。


ブロードウェイ・オリジナル版のポスター


 『イン・ザ・ハイツ』はマンハッタンの北部、ハーレムのさらに北に広がるワシントン・ハイツという街を舞台としている。カリブ海ドミニカ共和国からの移民の街だが、プエルトリコなど他の島や国からのヒスパニックが混じって暮らしている。

 ここは移民たちが必死に働く街だ。住人の多くは貧しく、犯罪も起こる。けれど早口のスペイン語と、心踊るラテン音楽と、カラフルな色彩にあふれた街でもある。

 主人公のウスナビ(オリジナル版では原作者のリン-マニュエル・ミランダが演じた)は小さな「ボデガ」を経営している。ボデガとは、ダウンタウンでは「デリ」と呼ばれる小さな食料雑貨屋だ。毎朝、地元の人々に朗らかにコーヒーを売るウスナビは、幼い頃に両親とともにドミニカからニューヨークに移民としてやってきた若者だ。島のことはあまり覚えていない。両親はもう亡くなってしまった。身寄りはおばあちゃんだけ。生まれ故郷の島に戻ることを夢見ているが、美容師のヴァネッサに夢中でもある。

 ウスナビのボデガの隣りにはヴァネッサが働く美容院と、ヴァネッサの友人ニーナの両親が経営する小さなタクシー会社がある。それぞれの店が、それぞれに経営上の問題を抱えている。それぞれの店で働く人々はウスナビにとって家族のような存在だが、皆、やはりそれぞれに人生の問題を抱えている。

 こんなワシントン・ハイツの様相が、ヒップホップ/ラテン音楽/ソウルミュージック/ブロードウェイ音楽を掛け合わせた歌と踊り、涙あり、笑いありの会話によって活き活きと描かれる。



ハーレム・レパートリー・シアターのバナー


 『イン・ザ・ハイツ』のクリエイター兼オリジナル版の主役をつとめたリン-マニュエル・ミランダはワシントン・ハイツで生まれている。周囲から常にラテン音楽が聴こえてくる街で暮らし、父親はミュージカル・ファン。リン-マニュエル自身はヒップホップ世代。3種の音楽を掛け合わせたミュージカルを作ることはリン-マニュエルにとって自然の成り行きだった。キャストにアフリカン・アメリカンの俳優が加わったことから、R&Bも歌われることとなった。

 しかし当時のブロードウェイで「ヒップホップ・ミュージカル」は斬新過ぎた。ヒットするとは誰も思わなかった。なのに大当たりしてしまった。2008年、本作はトニー賞、グラミー賞を獲得し、翌年にはピューリッツアー賞をも受賞している。

 以後、リン-マニュエルはミュージカルや映画への出演、制作、脚本、作曲などで多彩な活躍を続けている。同時に『イン・ザ・ハイツ』は世界各国での上演が今も続いている。日本では2014年に日本人キャストによって上演され、昨年は韓国ヴァージョンも日本公演をおこなっている。



2008トニー賞でのパフォーマンス


 『イン・ザ・ハイツ』の主人公はワシントン・ハイツという街なのである。貧しい街だからこそ住人は脱出を夢見る。しかし、ここには家族が、友人が、そして自分を育んでくれたすべてがある。だが、住人たちは移民か二世だ。移民にとって、二世にとって、故郷とは島なのか、ハイツなのか。

 ニューヨークならではの移民の物語を、これもニューヨークならではの異なる音楽のミックスによって織り上げた作品が『イン・ザ・ハイツ』なのである。





ワシントンハイツ・ウォーキング・ツアー
『イン・ザ・ハイツ』はここで生まれた!


 

author:堂本かおる, category:ラティーノ, 17:36
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ヴァージニア州:白人至上主義者のデモ〜死者も出た大混乱の原因とタイムライン

ヴァージニア州:白人至上主義者のデモ〜死者も出た大混乱の原因とタイムライン

 8月12日(土)、ヴァージニア州シャーロッツヴィルで白人至上主義者の大規模なデモが開催された。カウンター・プロテスト(抗議運動)側と合わせると実に数千人規模となり、両者が激しく衝突。その結果、カウンター側の女性1名が無くなり、30人以上の負傷者が出た。さらに現場付近を警備していた警察のヘリコプターが墜落し、警官2名も死亡。ヴァージニア州知事は緊急事態宣言を発令。



 当日、シャーロッツヴィルにKKK、ネオナチ、アルト・ライトなどと呼ばれる白人至上主義者たちが大量に集まった。南軍旗やハーケンクロイツを染め抜いた旗を掲げ、ナチス式敬礼をしながら「ヘイル・トランプ!」と繰り返すグループや、大型銃を携えた民兵隊も参加。カウンター側の緊張も高まり、デモ開始時刻前に早くも衝突が始まり、大変な混乱状態となった。

 混乱のさなか、カウンター・グループに向かって車が突っ込み、カウンター側の白人女性(32)が死亡。犯人はオハイオ州からやってきた20歳の青年で、すでに逮捕、殺人罪で起訴された。他にも黒人青年が数人の白人に殴打され、頭部を8針縫い、手首を骨折する大ケガを負うなどしている。

 KKKの元リーダーでトランプの熱心な支持者であるデヴィッド・デュークはデモについて以下のコメントを発した。「トランプは我々の国を取り戻すと言った。我々がトランプに投票した理由だ」。

 事態の深刻さに大統領のドナルド・トランプは珍しく即座にツイートをおこない、次いでスピーチを行ったが、その内容が激しく批判された。「全ての人々(またはグループ)」「すべての側」が共に憎悪を糾弾すべきだと言い、「白人至上主義者」の名を挙げることをせず、先に挙げた死亡事故にもあえて触れなかったことが理由だ。このトランプ発言に対し、民主党だけでなく、共和党の政治家からも批判が噴出した。

 一方、ヴァージニア州知事のテリー・マコーリフは当日の記者会見で「今日、シャーロッツヴィルにやってきた白人至上主義者とナチスにメッセージがある」「恥を知れ。おまえたちは愛国者のフリをしているだけだ」「帰れ。決して戻ってくるな」と厳しく糾弾した。シャーロッツヴィルは非常にリベラルな土地柄であり、デモに参加した白人至上主義者の大半が他州からやってきたとされている。


■デモの理由と、タイムライン

 今回の出来事の素地は2015年に始まっていた。シャーロッツヴィルの公園に南北戦争時の将軍、ロバート・リーの銅像があり、地元の黒人高校生たちが像の撤去運動を開始。きっかけは同年にサウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で白人至上主義の青年が銃の乱射を行い、9人の教会メンバーが殺された事件だった。

4月:シャーロッツヴィルの市議会でこの件が取り上げられ、3対2で撤去となったが、判事が「撤去の6ヶ月保留」裁定を出す。5人の市議のうち唯一の黒人で副市長を兼任するウェス・ベラミー氏は銅像撤去の件で脅迫状を受け取っているとのこと。

5月13日:アルト・ライト(極右グループの新しい名称)のリーダー、リチャード・スペンサーによる銅像撤去への抗議デモ。カウンター・グループと衝突し、短時間で終了。

7月8日:約50人のKKKメンバーが銅像付近でデモをおこない、1000人のカウンター・グループに囲まれる。

8月11日(金):今回のデモの前夜。ヴァージニア州立大学に松明(たいまつ)を持った数百人が集まり、銅像撤去反対集会。

8月12日(土):「ユナイト・ザ・ライト」Unite the Right と冠された白人至上主義者によるデモ。大混乱となり、死者1名を出す。

8月13日(日):今回の件をFBIが捜査すると発表。


■あきらめない白人至上主義者と、今後

 週が明けた8月14日(月)午後、トランプがようやく「白人至上主義者」「ネオナチ」を批判するスピーチをおこなう。

 同じく14日、アルタ・ライトのリーダー、リチャード・スペンサーが「9月11日、テキサス州にて『ホワイト・ライヴス・マター』White Lives Matter と銘打ったデモをおこなう」とCNNが報道。9.11同時多発テロが起こった日に、「ブラック・ライヴス・マター」への挑戦状以外の何物でもないネーミングのデモ。移民、とくにイスラム教徒と黒人への挑発であり、炎上目的であることは明らか。



 混沌のアメリカ。今後も予断を許さない展開となっている。

 

 

 

 



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
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author:堂本かおる, category:アメリカ文化・社会, 02:29
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映画『デトロイト』とマイケル・ブラウン(事件から3年を迎え)〜「ハート・ロッカー」キャスリーン・ビグロウ監督最新作

デトロイト暴動とマイケル・ブラウン(事件から3年を迎え)
映画『デトロイト』〜暴動の夜、密室のモーテルで何が起こったか
〜「ハート・ロッカー」キャスリーン・ビグロウ監督最新作

『デトロイト』トレイラー



 今から50年前の1967年7月23日。あからさまな黒人差別がまかり通っていた時代のミシガン州デトロイトで暴動が起こった。長年にわたって黒人側に積もりに積もったフラストレーションが警察の手際の悪い酒場捜査によって一気に爆発。暴動は5日間続き、死者43人、負傷者1,189人、逮捕者7,231人を出した。2,509軒の店舗が焼かれるか、略奪され、後日412棟のビルが取り壊された。経済損失は総額で4,000万〜4,500万ドルと見積もられている。

 アメリカでは8月4日に公開された本作『デトロイト』は、アメリカで起こった数ある黒人暴動の中でも特に規模が大きく、犠牲者数も多かったデトロイト暴動を描いた作品だ。監督は『ハート・ロッカー』(2008)により女性初のアカデミー賞監督賞受賞者となったキャスリーン・ビグロウ。オサマ・ビン・ラディン掃討作戦を描いた次作『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)も大ヒットとしたビグロウの、満を持しての作品だ。

■ ■ ■

 冒頭、暴動がそもそもどのように始まったかがよく分かる描写となっている。警察の過ちが発火点となり、炎がたちまちに燃え広がってしまったのだ。(当時を知る黒人の中には、暴動以前の下地が描かれていないことを指摘する声もある)

 映画はしかし暴動全体ではなく、あるモーテルで実際に起こった密室劇を執拗に追う。暴動の最中、アルジー・モーテルに10代の黒人の若者数人と、若い白人女性2人が居合わせていた。暴動とはまったく関係なく、または暴動を避けてモーテルに避難した者たちだった。そこへ警官狙撃犯を追う警官が踏み込み、宿泊客たちを容疑者として精神的に、肉体的に執拗に拷問し、うち3人を殺害する。

 黒人の若者たちを追い詰める警官は、若い白人だ。極度の人種差別主義者であり、黒人を殺すことに罪悪感を持ち合わせていないことが見て取れる。また、白人女性が黒人男性と共にいたことを絶対的に許せず、女性にも憎しみをぶつける。しかし奴隷制時代の南部ではなく、公民権法成立から3年後の都市部の警官であり、黒人殺害は自身の立場を危うくすることを知っている。

 だが暴動の最中の密室という、上官の目も、市民の目も届かない状況に置かれるや、異常なまでの抑圧精神を発揮する。権力と、物理的な力(銃)を持った者が抗う術を持たない者たちをひたすらに蹂躙する様は背筋が凍るほどに恐ろしい。

■ ■ ■

 実は全く同じことが、現代も続いている。昔との違いは映像が残ることだ。街中の監視カメラ、居合わせた目撃者のスマホによる撮影、または警官自身が身につけている小型ボディカメラによる映像が公開され、凄惨な暴行・殺害シーンを私たちは見てしまう。警官たちは目撃、撮影されていると知りながら、過激な暴行を特に黒人に加えることが止められない。子供の頃から叩き込まれた差別意識、白人であることの優越性、警官であることの優越性、黒人への恐怖がないまぜになってのことだと思えるが、それでも到底説明はできないレベルの加虐だ。

 とはいえSNSや大手メディアによって公開される映像は市民にショックを与え、警官による暴行・殺人の密室性を破り、警察暴力を緩和すると期待された。だが、今のところ実行犯の警官を逮捕・有罪に持ち込むことは、ほとんどのケースでできずにいる。アメリカの司法制度が深刻な問題を抱えている証拠だ。

 3年前の今日、8月9日はミズーリ州ファーガソンで18歳の黒人青年マイケル・ブラウンが白人警官に射殺された日だ。マイケル追悼の自然発生的な集まりに対し、警察は当初から警察犬、果ては装甲車まで出動させ、「まるで1960年代ではないか!」と文字通り全米を驚かせた。警察の過剰反応に一定の黒人市民が過剰反応し、追悼集会は暴動となった。翌日から昼間は平和的な集会、夜は暴動のパターンを繰り返した。その中からSNSを駆使した新たな黒人運動、ブラック・ライブス・マターが誕生したのだった。

 つまり本作『デトロイト』は単に50年前の歴史を振り返る作品ではなく、アメリカの人種問題の膠着状態を知るための作品と言えるのである。


マーティン・ルーサー・キングJr. 牧師
「暴動は、耳を傾けてもらえない者たちの言葉である」
A riot is the language of the unheard




映画を楽しむためのトリヴィア

モーテルに缶詰となった黒人の若者たちの中に、後に大ヒットを飛ばすR&Bグループ、ザ・ドラマティックスのメンバー、ラリー・リードがいた。

本作でラリー・リードを演じたアルジー・スミスと、本物のラリー・リードのコラボレーション・ソング『Grow』が本作のサントラに収録されている。

Algee Smith & Larry Reed - Grow (from DETROIT)




夜間警備員としてモーテル近辺で働き、モーテル事件にかかわってしまう生真面目な黒人男性を演じるのは、『スターウォーズ/フォースの覚醒』のジョン・ボイエガ。

黒人差別主義者の警官クラウスを演じるのは『ナルニア国物語/第3章: アスラン王と魔法の島』の子役、『レヴェナント: 蘇えりし者』のウィル・ポールター。ちなみにジョン・ボイエガもウィル・ポールターもイギリス人俳優。アメリカ英語のアクセントは完璧。

モーテルに宿泊していたベトナム戦争退役兵を演じるのは、アンソニー・マッキー。

本作の評価は全般的に高いが、一部の黒人批評家/聴視者からは非常に辛辣なコメントが出ている。いわく「リベラル白人の視点」。黒人男性と白人女性がフィーチャーされ、黒人女性が登場しないことも強く批判されている。一方、当時の実際の映像も挟まれ、史実を学ぶにはよい作品といえる。
 


 



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
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author:堂本かおる, category:映画, 12:17
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アメリカの絵本:『ブルースカイ ホワイトスターズ』

 

American Picture Book Review #3
『ブルースカイ ホワイトスターズ』
Blue Sky White Stars

著:Sarvinder Naberhaus
画:Kadir Nelson

■アメリカの絵本をとおしてアメリカを知る■

初出:週刊読書人 2017/6/30号



7月4日はアメリカ独立記念日。全米に星条旗が翻る日だ。旗だけではない。多くの人が庭や公園でBBQを楽しむが、プラスチックのコップやビニールのテーブルクロスといった小物やTシャツまでが星条旗カラーの赤・白・青となる。日没後は各地で花火大会となり、筆者の住むニューヨークでも盛大に開催される。

アメリカ人は愛国心が強い。星条旗はその愛国心を視覚的に表す象徴。映画などでよく見掛ける、手を胸に当てて暗誦する「忠誠の誓い」の文言は、実は星条旗への誓いとなっている。本作のタイトル『ブルースカイ ホワイトスターズ』も星条旗の青い部分と、そこに並んで50州を表す白い星を指している。

各ページにはシンプルで短いフレーズがひとつだけ書かれている。その一言が素晴らしいイラストと相俟って読み手の想像力を最大限に引き出し、かつ祖国アメリカへの深い憧憬とプライドを静かに掻き立てる構成になっている。見開きの左ページには「Sea Waves(海の波)」とあり、青い海が描かれている。右ページには「See Waves(波を見よ)」とあり、風に煽られ、布地が波打つ星条旗が断ち切りで大胆に描かれている。韻を踏んだ言葉遊びだが、海の青さ、星条旗の赤の深さが同時に目に飛び込んで来る。他に西部開拓、南北戦争、公民権運動、月面着陸などアメリカ史の描写があり、そこには常に赤・白・青の3色がある。

著者のサルヴィンダー・ナバーハウスはインドで生まれ、3歳でアメリカに移住した児童文学作家だ。作画のカディール・ネルソンはアフリカン・アメリカン。アメリカでは共にマイノリティである2人が、自分の祖先がまだこの国に存在しなかった時代、もしくは市民としての待遇を与えられていなかった時代からの歴史を通じて自身をアメリカ人と強く自認かつアメリカを偉大なる祖国とし、その思いを星条旗によって表したのがこの絵本だ。

「Sew Together Won Nation(ひとつに縫い合わせ、国を勝ち取った)」と書かれたページでは18世紀の衣装を纏った白人女性が米国独立時の13州を表す星条旗を縫っている。対面のページには「So Together One Nation(皆で共に、ひとつの国家)」とあり、そこにはありとあらゆる人々〜黒人、アジア系、ヒスパニック、ネイティブ・アメリカン、イスラム教徒、白人〜が描かれているのである。


 



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
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author:堂本かおる, category:アメリカの絵本, 07:18
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ハーレムを歩く(ハーレムツアー、ゴスペルツアー、ラティーノツアー)
ハーレムを歩く(ハーレムツアー、ゴスペルツアー、ラティーノツアー)

 ひさしぶりにハーレムの魅力について書いてみる。

■ハーレム

 ハーレムの魅力とは、要するに「一言では語り切れない」複雑さにある。再開発が進んだ今も黒人の街であることは確か。過去100年間、黒人の街だっただけあり、あちこちに濃厚な黒人文化がある。昔はジャズクラブだった古い建物とか、マルコムXが演説をした交差点とか、刺されたキング牧師が搬送された病院とか、ヒップホップの歴史を描いた大きなグラフィティとか。

 そうしたものを見て回るだけでもハーレムの、アフリカン・アメリカンの、文化と歴史に驚き、感銘を受けて、ため息が出ることと思う。けれどハーレムの魅力、本質は今、生きて、暮らしている人たちなのだ。



 私のハーレム・ウォーキング・ツアーは3時間、ハーレムを歩く。途中、いろいろな人たちとすれ違う。若者、お年寄り、親子連れ、電動車椅子の人、アフリカの民族衣装を着た人、道を歩きながらラップする人、ツアーで歩いている私たちを迷っているのかと心配して声を掛ける人。稀には私の友人や知人とばったり会い、挨拶をすることもあるけれど、ほとんどの人は通行人であり、私はその人たちを知らない。けれど、それぞれの人にそれぞれの物語がある。そのひとつひとつの物語は、先に挙げたハーレムの、アメリカの、黒人史と大きく関わり、織り成されている。

 ハーレムを3時間も歩くと、ここを初めて訪れる人であっても、最後にはなんとなくそうしたことを感じてくれているように思う。



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)



■ゴスペル

 ゴスペルは教会の日曜礼拝で歌われる神への賛歌だ。黒人音楽としての素晴らしさは歌詞がわからずとも、クリスチャンでなくとも、必ず味わえる。それどころか感動で鳥肌さえ立ってしまう。

 けれど、礼拝に参加して得られるのはそれだけではない。教会と地元信者のつながりが、なんとなく見えてくる。



 この人たちはなぜ、こんなに熱心なキリスト教信者なのだろう? なぜ毎週、教会に通ってゴスペルを歌い、聴くのだろう? アメリカ黒人の圧倒的多数がクリスチャンなのはなぜだろう? オバマ大統領もクリスチャンだし、日本でも人気のあるR&Bシンガーやラッパー、黒人俳優も多くはクリスチャンだ。

 アメリカという国の歴史、ハーレムというユニークな街の歴史、黒人音楽の歴史、そして個々のアフリカン・アメリカンたちの歴史。それらが渾然一体となっての黒人教会とゴスペルなのだ。



ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)



■スパニッシュハーレム

 スパニッシュハーレムとは、黒人の街ハーレムの東側に広がるラティーノ/ヒスパニックの街。カリブ海にあるプエルトリコからの人々と、その二世、三世、四世が暮らしている。

 アメリカのラティーノの過半数はメキシコ系だ。けれどニューヨークに住むラティーノの最大多数派はプエルトリカン。彼らはニューヨークになくてはならない存在であり、彼らの早口なスパングリッシュ(英語+スペイン語)はニューヨークというリアル・ダイヴァーシティ都市のサウンドの一部。



 さらにプエルトリカンがいなければ、サルサもヒップホップも生まれなかった。そんなプエルトリカンの街、スパニッシュハーレムは巨大な壁画の宝庫でもある。まさに音楽とアートの街なのである。



スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)



■ワシントンハイツ

 「ここ、本当にニューヨークなの?」初めて訪れる人が必ず口にするセリフだ。ハーレムの北に位置する街ワシントンハイツは、ドミニカ共和国系の街。ガイドブックの地図から完全に排除されているこの街は、誇張でなく「スペイン語しか聞こえてこない」街。



 観光客が足を運ばないことから、店もレストランもすべてがスペイン語で回されている。けれどこの街で生まれ育った子供たちは、相手によってスペイン語と英語を見事に切り替える。

 街はカラフルだ。ヨーロッパからの移住者が建てた巨大で壮麗な建物があり、夏はそこにトロピカルフルーツやジュースの屋台が出る。どこに行ってもパイナップルやマンゴがある。あちらこちらからバチャータやレゲトンが聞こえてくる。

 古い欧州とカリブ海の空気が共に漂う街なのである。



ワシントンハイツ・ツアー(ここがNY?! スペイン語の街)




JUGEMテーマ:地域/ローカル

author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 15:14
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