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NY:隣り合う小学校の「人種・所得・学力」格差〜今も黒人と白人は同じ学校に通えない実態

パワーと多様性の都市をサバイバル〜ニューヨークを生きる 第70回
隣り合う小学校の「人種・所得・学力」格差
初出:インサイト2017年5月号


ニューヨーク市は全米で最も公立学校の生徒の人種が分断している都市だ。人種別に地区を住み分けるため自ずとそうなるが、人種の分断は所得格差と学力格差に繋がる。マンハッタンのある地区では裕福な白人の集まる学校と貧しい黒人の多い学校を融合させる試みが行われ、1年以上にわたって文字どおり怒号飛び交う論争が繰り広げられた。

■公団と高層マンション

 第191小中学校は「汚水溜めだ!」と、ある親が叫んだ。昨年9月、マンハッタンの校区変更に関する説明会でのことだった。豊かな家庭の白人とアジア系の生徒が多く、成績優秀な第199小学校(以下J校)と、貧しい黒人とヒスパニックが多く、成績の低い第191小中学校(以下A校)の生徒を混在させる案にJ校の保護者が激怒したのだった。

 マンハッタンのセントラルパーク西側はアッパーウエストサイドと呼ばれる裕福な地区だ。オーケストラやオペラなどクラシック文化の総本山であるリンカーンセンターもここにあり、高層マンションが建ち並ぶ。しかし、大通りからは見えない一角に通称プロジェクトと呼ばれる古い低所得者用公団住宅アムステルダム・ハウスがある。

 第二次世界大戦直後、この辺りが貧しい地区だった時期に建てられ、今では築70年。黒ずんだレンガ造りの13棟に2,300人が住み、ほとんどが黒人だ。後に周囲のスラム街が取り壊され、リンカーンセンターの建築が始まった。12,000人が入居する高層マンション群、リンカーン・タワーズも建てられることとなったが、この地区を舞台としたミュージカル『ウエストサイド物語』映画版の撮影終了を待ち、1960年の建設開始となった。その後もどんどんと古い建物が取り壊されては高級マンションとなり、裕福な白人、ついてアジア系が流入。やがてリンカーン・タワーズ脇にあるJ校にはリッチな白人とアジア系の生徒、徒歩10分ほど離れたアムステルダム・ハウス前にあるA校には貧しい黒人とヒスパニックの生徒と、人種と所得がきっぱり分かれた。成績にも大きな差が出、J校は入学希望者が殺到、A校は定員割れとなって久しい。

 そこでとうとう市教育庁が現状緩和のために大胆な案を出した。(1)リンカーン・タワーズとアムステルダム・ハウス、それぞれの敷地内に校区の境界線を引き、生徒を分割、混在させる (2)A校を丸ごと、新築の高級高層マンションにテナントとして引越しさせる これに対し、A校に編入させられるリンカーン・タワーズの住人から猛烈な反発が起きた。説明会は怒号が飛び交い、「他の校区に引越しする」「私学に転校させる」、さらには「法的手段に訴える」という者まで表れた。校舎が変わっても生徒の多数はA校からやってくる。そこに自分の子を通わせたくないのだ。

■100万ドルを集めるPTA

 J校の親たちがA校をここまで嫌うには複数の理由がある。まず、ニューヨークでは豊かな層は良い校区を求めて転居する。そのため優秀な学校がある校区は不動産価値が上がる。子供を優れた学校に通わせるために150万ドル(1.6億円)のマンションを購入した親は当然、憤る。学校のレベルが下がれば物件の価値も下がるため売却も不利になり、これにも強い憤りを感じている。

 何より子供の教育を第一義に人生設計を行ってきた家庭が、突然レベルの低い学校への編入を言い渡されたことへの反発がある。裕福なアメリカ人は自分の人生を自分でコントロールすることを善しとするため、行政からの一方的な通告を極度に嫌う。

 行政の関与を嫌う層はDIY(自分で行う)は厭わない。こうした家庭の親はPTA活動を非常に熱心に行う。寄付や資金集めによって、この地区にはPTAが年間100万ドル(1.1億円)を集める学校があり、J校も80万ドル(8,800万円)を得ている。この巨額の資金はコンピュータなど学校の備品購入、課外活動費用、さらにはシェフや体操コーチなど教職員雇用にさえ充てられる。「公立校でありながら私学」と呼ばれる所以だ。PTAがここまで出来るのは豊かな生徒の保護者から多額の寄付を集められることに加え、PTAメンバー自身も富裕層であるため、資金集めのコネクションや管理運営のスキルを持っていることを意味する。

 また、同じ地区にある他の学校のPTAは生徒の保護者に一律1,300ドル(14万円)の寄付を依頼する。全500家庭が拠出すると65万ドル(7,100万円)だ。この地区の私学の学費は年間5万ドルをやや下回る程度(500万円前後)だが、無料の公立校に通いながら14万円の寄付で非常に充実した教育が受けられることになる。他方、低所得者が多いA校のPTAが昨年集めることができたのは数千ドルに過ぎず、A校の80万ドルとは雲泥の差。J校から編入することになる生徒の親は、校舎こそ新築高層マンションであっても備品や教職員の数や質がJ校とは比較にならないと予測している。

 公の場では決して話し合われない「人種問題」も絡んでいる。校区変更反対の理由としてJ校の親は「成績格差」「資産価値の減少」「コミュニティの消滅」を挙げ、「黒人やヒスパニックと一緒になりたくない」と口にする者はいない。現在のアメリカ、特にニューヨークのようなリベラルな都市部では絶対的なダブーだからだ。

■富める者がさらに富む「構造的差別」

 アメリカではかつて黒人と白人は同じ学校に通えず、1954年にようやく人種によって学校を分けることが違憲とされた。しかし、その後も黒人が白人の学校に通おうとすると強硬な反対運動が起き、州兵隊が出動して黒人の生徒を守らなければならないことすらあった。当時「黒人はこの学校に来るな」と叫んでいた白人たちは、黒人との共学は自分の子にとって不利益であり、人は不利益から自分を守る権利を有すると固く信じていたのだ。

 今、裕福で優秀な自分の子と貧しく低成績の黒人やヒスパニックの生徒が混じることに反対する親は、自分の子の利益を守ろうとしている。親が子の教育に心血と資金を注ぐのは当然であり、だからこそJ校の親はPTAで80万ドルを集め、公立とは到底思えない豊かな教育環境を自分の子に与えている。同時にA校の親が校区変更について「声を上げない」ことを批判もする。裕福な層が当たり前に持つ動機やスキルを貧困層が持てないことに気付かないのだ。こうした無意識化の制度化された差別を「構造的差別」と呼ぶ。資本主義と個人主義の国アメリカ、しかもその最たる都市ニューヨークでは構造的差別は大きな所得格差を招き、貧困は低成績に直結する。

 市教育庁は校区変更だけでなく、公立校のPTA資金について何らかのルールを設け、各校の「収入格差」を縮める必要がある。トランプ政権が公教育の民営化をほのめかす今こそ、改めて「公」教育の意味を問い直すべきなのである。

 

 



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author:堂本かおる, category:ニューヨーク, 07:24
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アメリカの絵本「Yo! Yes?」

 

American Picture Book Review #6 『Yo! Yes?』

著・画:Chris Raschka

■アメリカの絵本をとおしてアメリカを知る■

初出:週刊読書人 2017/9/29号



 この絵本はどのページもほぼ1単語のみで書かれている。冒頭、黒人少年が白人の少年に勢いよく「Yo!」(よう!)と声を掛ける。白人少年は振り返って「Yes?」(はい?)と答える。ページをめくると、また黒人少年が「Hey!」(ヘイ!)と言う。白人少年は「Who?」(誰に話しかけてるの?の意)と返す。黒人少年は「You!」(おまえだよ!)と言い、白人少年は「Me?」(ボク?)と、とまどった表情を見せる。

 以後もこの調子で会話が続き、やがて黒人少年は白人少年に友だちがおらず、とても寂しいのだと知る。すると声高らかに「Me!」(オレが友だちになるよ!の意)と、友だち宣言をする。白人少年は「You?」(キミが?)と驚くが、晴れてふたりは友だちとなり、笑顔で歩き出す。お互いに相手のことを知らずに交した「Yo!」「Yes?」が、気心の知れた者同士の掛け合い「Yo!」「Yes!」として繰り返される。

 著者はたったひとつの単語に「?」「!」「.」のいずれかを付けることにより、少年たちの心情を完璧に表している。「Oh! 」と「Oh?」と「Oh.」はまったく異なる意味を持つのだ。

 「Yo!」は偶然にも日本語の「よう!」と同じ使われ方をする。他者への呼びかけ語だが、丁寧な言葉ではない。そもそもはフィラデルフィアの下町のイタリア系アメリカ人が多用したとされる。映画『ロッキー』を観ると、「Yo! エイドリアン!」「Yo! ポーリー!」など、全編で頻繁に使われている。だが、のちに若いアフリカ系アメリカ人が使い始め、ヒップホップの流行とともに広まった。この絵本には2単語からなるごく短い文章も登場するが、そのひとつが「What's up?」(調子どう?)だ。これも本来は黒人スラングだが、「Yo!」と同じく、今では人種を超えて使われている。

 この絵本は内容の素晴らしさとは別の観点で一考すべき点がある。ステレオタイプだ。黒人は明るく物怖じしない性格+服装もカジュアル+スラング「Yo!」を使う。白人はおとなしい性格+保守的な服装+礼儀正しく「Yes?」と答える。ステレオタイプは現実に基づくことも多く、事象の一般化には有効だ。受け手が安心して享受できる表現でもあり、ゆえに多用されるが現実は逆のこともある。とくに幼い子供が読む絵本に、ステレオタイプはどこまで使う/控えるべきなのか。


 

 

 

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author:堂本かおる, category:絵本, 16:48
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アメリカの絵本『ヘイ、ユー!カミヤ〜ポエトリー・スラム』
American Picture Book Review #5
『ヘイ、ユー!カミヤ〜ポエトリー・スラム』
Hey You! C'mere! A Poetry Slam


著:Elizabeth Swados
画:Joe Cepeda

■アメリカの絵本をとおしてアメリカを知る■

初出:週刊読書人 2017/8/25号



 本作のタイトルを訳すと『おい、おまえ!こっち来いよ〜詩の対決』と、非常に活きの良い「詩」の絵本であることがわかる。すべて見開きで全16篇の詩が、カラフルなイラストとともに詰まっている。詩のテーマは友だちとのケンカ、“大人の話”を電話でするお母さん、長い長いスパゲッティ、オバケ、どしゃぶりの天気など、子供のリアルな日常生活を切り取ったものばかりだ。

 多くの詩が擬音語、擬態語であふれている。アイクスクームを舐める音は「Slurp, slurp(スラープ、スラープ)」、溶けてしたたり落ちる音は「Drip, drip(ドリップ、ドリップ)」、それを犬が舐める音は「Lick, lick(リック、リック)」、コーンを齧る音は「Crunch, crunch(クランチ、クランチ)」。子供たちが真夏の日差しの中でアイクスリームを楽しそうに舐め、犬にもおすそ分けしている風景がシンプルな言葉で見事に表されている。

 いじめっ子のセリフは日常会話の発音どおりのスペルで書かれている。タイトルにもなっている「C'mere(カミヤ)」は"Come here."、「Whatsa matter withcah(ワツァ・マタ・ウィチャ)」は"What's the matter with you?"(なんか問題あんのかよ?)という具合。

 アメリカでは詩が子供にとっても文学の1ジャンルとして確立しており、筆者の息子も小学1年生から国語(=英語)の授業で詩を学んでいる。幼い子供にとって詩は文法をそれほど気にする必要がなく、長文である必要もなく、なにより想像力に満ちた思考があちこちに飛んでも構わないために書きやすのかもしれない。

 本作のサブタイトルの「ポエトリー・スラム」とは、「詩の朗読コンテスト」または「詩の朗読対決」を指す。講堂などで開催されるコンテスト形式のものもあれば、ポエトリー・カフェで観客の前に二人の詩人が立ち、詩でバトルするものもある。どちらもアカデミックな詩を朗々と読むのではなく、まさにバトル式に激しく詠み上げる。テーマは社会的なものが多い。その緊張感たるや。そう、詩はまさに生きているのである。しかしこの絵本はバトルではなく、子供のための溌剌とした詩を収めたびっくり箱だ。黙読ではなく、大きな声で元気良く音読すべき絵本なのである。

Hey You! C'mere! A Poetry Slam




 



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author:堂本かおる, category:アメリカの絵本, 15:00
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トランプ:人間性崩壊の大統領〜ハリケーン被災で壊滅状態の米領プエルトリコ島民を放置
トランプ:人間性崩壊の大統領〜ハリケーン被災で壊滅状態の米領プエルトリコ島民を放置

 ドナルド・トランプはもはやアメリカと世界を破滅に追いやろうとしているとしか思えないが、すべての所業をここに並べる代わりに、ハリケーンで壊滅状態となった米領プエルトリコに関する2ツイートと、やはりハリケーン被災したテキサス州についてのツイートを転載する。

 この3つのツイートによってトランプが「金と票」にならない者はたとえ米国市民であっても見捨てること、人種差別主義者であることも含めていかに人格が崩壊しているか、および一国のリーダーになど決してなってはならない人物であることが十分にわかる。


10月12日
... 我々は(最も困難な状況下で)素晴らしい働きをしているFEMA(*)・軍・緊急要員を、プエルトリコに永遠に派遣しておくことはできない!
*米連邦緊急事態管理局




 カリブ海の米領プエルトリコは苛烈なハリケーン・マリアの襲来から3週間経った現在も全島の9割で電力の復旧がなされておらず、携帯電話もほとんどが不通のままだ。水も食料も極端に不足し、伝染病も出始めているが、病院は満足に機能していない。計1,100校ほどある小中高校のうち、開校にこぎつけているのは167校のみ。こうした状態にあるプエルトリコに対し、救援打ち切りの予告ともいえるツイートを大統領がおこなったのだ。

 理由はプエルトリコのかねてからの財政難と、島民には大統領選への投票権がないことに加え、島民が白人ではなく、ヒスパニックであることだ。

Wezzy: トランプが見捨てたハリケーン被災地「米領プエルトリコ」を救え!

 ハリケーンの襲来直後、トランプはプエルトリコにまったく関心を払わず、なんのコメントも発さなかった。それを非難されると「プエルトリコは財政難で負債がある」「復興には予算がかかる」「自分はよくやっている」「それを報じないメディアはフェイクニュースだ」を繰り返した。

 10月12日のツイートもそれを繰り返したに過ぎないが、当然、激しく批判された。すると翌日に以下のツイートをおこなったのである。


10月13日
比類なき精神を持つプエルトリコの素晴らしい人々は、ハリケーン以前(の島の状況)がいかに酷かったかを知っている。私は常に彼らと共にある!




 批判をかわすためとは言え、前日のツイートからの一転振りが逆に読む者を「ジキルとハイドか!」と驚愕させ、さらなる不信感を募らせたに過ぎないが、そこに気付かないところにトランプの恐ろしさがある。

 そして、以下は8月末にハリケーン・ハービーがテキサス州に甚大な被害をもたらした際のトランプのツイートである。


9月2日
テキサス:今日、我々はあなた方と共にあり、明日も我々はあなた方と共にあり、そして我々は復興、復旧、再建のために毎日どの日もあなた方と共にある!




 言うまでもなく、テキサス州は共和党が圧倒的に強い大票田なのである。






 



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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 13:54
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アメリカの絵本:『ウェン・ゴッド・メイド・ユー』

American Picture Book Review #4
『ウェン・ゴッド・メイド・ユー』
 When God Made You


著:Matthew Paul Turnery
画:David Catrow

■アメリカの絵本をとおしてアメリカを知る■

初出:週刊読書人 2017/7/28号



 『When God Made You』(神さまがあなたをお創りになった時)に登場するのは、溢れんばかりの絵の才能を持つ幼い少女と神。少女に名前はなく、絵本の語り手は少女を「You」と呼び、なぜ「God」が少女をこの世に送り出したかを繰り返し語る。

 ある日、自転車で街に出た少女は公園で嘆き悲しむ青年を見掛ける。見知らぬ青年を元気づけるために少女は絵筆を握り、空間を色彩で染め上げてゆく。少女は神から授かった才能を青年のために惜しみなく使い、かつ自身を自然界に解き放ち、どこまでも描き続ける。やがて少女と青年は少女が描いた鳥の背に乗り、空想の旅に出る。

 少女は自分の才能を人にふるまうことに疑問を抱かない。なぜなら人はお互いに愛し合わねばならないと知っているからだ。同時に神に与えられた才能を自覚する少女は自信と確信に満ち、強く、勇敢でもある。神は細心の注意をはらって創り上げた創造物を所有し、コントロールすることは目的とせず、少女が少女自身であることこそが望みなのだ。

 冒頭には少女の自宅シーンがあり、まだ赤ん坊の妹やペットの犬や猫がいる。室内のインテリアは温かい色彩だ。少女の両親は登場しないが、少女が両親に慈しまれて育っていることは見て取れる。しかし、この物語は少女を物理的に生み出した両親ではなく、森羅万象を司る神と「You」、つまり読者の子ども一人ひとりの絆の物語なのである。

 アメリカはキリスト教の風土が非常に強い国だ。人口の7割がクリスチャンであり、2割を超える無信仰者や無神論者も多くはキリスト教家庭で育ち、のちに信仰を止めた層とみていいだろう。続くユダヤ教徒は2%、イスラム教徒は1%にも満たない。歴代大統領は全員がクリスチャンであり、政教分離も建前と言える。近年、子どもを学校に通わせず、自宅で親が教育するホームスクール人口が200万人に届こうとしているが、信仰が理由のケースも少なくない。信仰熱心な若者は信仰のメッセージをロックやラップにして歌う。外観は一般の若者たちとなんら変わらないが、歌詞には「God」がちりばめられている。

 こうしたキリスト教国アメリカを理解するにはやはりキリスト教の基礎知識が必要となるわけだが、アメリカに暮らすとなると日常で接するクリスチャンの思考法や信条を知ることがより必須となる。この絵本のテーマである神と個人の強い繋がりは、まさにその筆頭なのである。

 

 

 

 



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author:堂本かおる, category:アメリカの絵本, 10:10
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大阪とハーレムが育んだ2冊の本「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」&「よい謝罪」
大阪とハーレムが育んだ2冊の本「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」&「よい謝罪
著:竹中功(吉本興業元広報、よしもとクリエイティブエージェンシー元専務取締役)


 友人の竹中功さんがまたニューヨークにやってきた。一緒に北インドのカレーを食べ、最近、出版した2冊の本をいただいた。「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す〜自分を愛するコミュニケーション」「よい謝罪〜仕事の危機を乗り切るための謝る技術」というタイトルだ。



 2冊目はビジネス・マナーのハウツー本のようなタイトルだが、後書きには竹中さんが2年前の夏を過ごしたハーレムのことが書かれている。竹中さんは熱心なジャズ・ファンなのだ。

 "私は友人の紹介でアパートの一部屋を借りて世話になっていたのだが、トイレとテレビが壊れていても、黒人の家主は「すぐ直すわ」。インターネットがつながらなくなっていると、「今から料金、払ろてくるわ」。魚釣りに行くので約束通り早起きすると、「眠たいから今度にしようや」などなど、家族か兄弟みたいに気楽に返事をしておいて、残念ながら約束はだいたい守らない。実現したとしても、いつも何日も時間がかかった。
 このエエ加減な対応と許さざるを得ない陽気な人柄はどこから来るのかと思って、家主や同じアパートの住人に聞いてみると、軽い口調で「わてらは400年前、何代も前のじいさんがアメリカに奴隷として連れてこられてん。今日も元気に生きてられることを、わしはホンマに先祖や神さんに感謝してるねん。生きてさえおったら、明日はまたエエことが起こるねん」"


 冒頭のアパートを紹介した友人とは私のことで、黒人の大家とは私の友人ケヴィンのことだ。ケヴィンほど気のよい人間はほかにいないが、竹中さんが書いているように細かいことにはかなりテキトーでもある。しかし竹中さんは、そんなケヴィンとハーレムから良いところだけをエキスのように抽出し、吸収して、少々の(かなりの)不便をものともせず、ハーレム暮らしを300%満喫した。それができたのは、竹中さんが実はそうとうな "他者とのコミュニケーションの達人" だからである。


■「よい謝罪」

 竹中さんは吉本興業で広報、雑誌編集、芸人育成、劇場オープン、映画プロデュースなど、芸人としてステージに立つ以外はほとんど全てを手掛けてきた人だ。吉本総合芸能学院(よしもとNSC)を立ち上げたのも竹中さんだ。「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」に出てくるが、入学申し込みにやってきた若き日の松ちゃん・浜ちゃんを見初めて入学させたのも竹中さんだった。(竹中さんがいなければ、ダウンタウンは世に出なかったかもしれないのだ!)

 そんな竹中さんの重要な仕事のひとつが、不祥事を起こした芸人の謝罪記者会見の仕切りだった。正直、日本の芸能人の謝罪記者会見のありように私自身は疑問を抱くことも多いのだが、ああした会見も背後での仕切り方によって成果がまったく異なることを「よい謝罪」で知った。

 ハーレムで明るく正直でテキトーなケヴィンと親友になれた竹中さんも、明るく、正直な人だ(テキトーではなく、緻密で論理的なことは本書を読めば分かる)。謝罪も小手先ではなく、正直に誠心誠意おこなう。最も重要なポイントは、被害をこうむった相手に心から謝ることだと言う。そこは絶対に譲らない前提とした上で、プロならではのコミュニケーション術を駆使し、プロならではの仕切りをおこなうのである。そしてこの謝罪スキルは、芸人ではない一般人にも応用できるのである。


■「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」

 一流のプロだからこそのさりげなさゆえに、逆にプロとは思わせないナチュラルなコミュニケーション・スキル。今、竹中さんはそれを意外な場所で活用している。刑務所だ。出所を控えた収容者たちに出所後のコミュニケーション法を伝授しているのだ。根っからの人間好きゆえ、収容者だけでなく刑務官にまで適正な距離を保った上で人としての眼差しを向けているが、そこにはやはりプロのノウハウがある。それをかなり具体的に綴ったのが「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」で、これも塀の外にいる私たちにも応用できる。

 加えて竹中さんはそもそもは凝り性らしく、日本の刑務所の実態や歴史をリサーチし、それも丹念に書き込んである。だから刑務所を知るための読み物としても楽しめる。合間合間に吉本興業の裏話や日本のお笑いの歴史が挟まれている。通読すると、あちこちに網走番外地高倉健、エリック・クラプトン、桂春団治、ブルース・リー、渡辺直美といった古今東西のセレブの名が現れ、やや「え?え?え?」となるが、「よしもとで学んだ『お笑い』を刑務所で話す」は一粒で三度、もしくは四度おいしい内容といえるのかもしれない。


■「あれ」も「これ」も「それ」も。

 2冊併せての散漫な書評となったが、要は竹中さんは多才かつ好奇心旺盛で、あれもこれもそれもやりたくなる人なのだ。そして、一見つながりのない「あれ」と「これ」と「それ」が本人の中では無理なくスッと一本につながり、そこから人とのコミュニケーションのための新たなアイデアが湧き出、実行に移せてしまうのだろう。まったくもって羨ましい限りである。竹中さん、大阪戻ったらまたおもろい本を書いてください。それでまたハーレム来てください。ケヴィンにも会ってやってください。ほなお元気で。



 

 

 

 



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author:堂本かおる, category:その他, 16:42
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"いずれにせよ、ニガだ" 〜 ジェイ・Z「O.J.シンプソンの物語」

ジェイ・Z「The Story of O.J.」より

Light nigga 肌の色が薄いニガ
dark nigga 肌の色が濃いニガ

faux nigga ヘラヘラしたニガ
real nigga 黒人意識の高いニガ

Rich nigga リッチなニガ
poor nigga プアなニガ

house nigga* 白人にへつらうニガ
field nigga** 野で過酷に働くニガ

Still nigga いずれにせよニガだ
still nigga いずれにせよニガだ

Financial freedom my only hope
俺の唯一の望みは経済的な自由だ

*白人の屋敷で働く奴隷 **戸外で農作業をする奴隷




 



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author:堂本かおる, category:Hip Hop, 22:05
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ハーレムウィーク2017(写真30点)

ハーレムウィーク 2017 (写真集)

 

毎年8月におこなわれるストリート・フェスティバル。

ハーレムの過去・今・未来。

楽しい・美味しい・音楽とダンスだらけ。カラテなんかもあったりする。

来年はぜひ来てください。

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揚げ物屋:白身サカナ、チキンウィングス、エビ、ポテト

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定番コンボ:フライドチキン&ワッフル

 

チキンウィング!

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BBQグリル

 

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レッドヴェルヴェット・カップケーキ

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踊る

踊る

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特設ステージでのコンサート。ほんとうはトリオ。

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 銃がいかにコミュニティを脅かすかについてラップする少年

 

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ハーレム・マザーズ:銃で息子を亡くした女性たちの会


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ラッパーもここまで進化:メタリカのTシャツとダメッジド・ジーンズ

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いつもはメインストリートで叩いているドラマー。ご近所さん

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ラテンで踊る〜前日のドミニカ共和国パレードの勢いでやってきた山車

真似のできないスーパー・コーディネイト

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「ブラック・ライヴズ・マター」

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「サンキュー、オバマ大統領とファーストレディ」(右)

「めっちゃブラック。文句あるか」(左)

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「トランプを弾劾せよ」

 

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「ハーレム:移民の街」 画家もパナマからの移民

これも反トランプ・メッセージ

 

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海兵隊リクルート・トレイラー

(この翌日にアフガン増兵が発表された)

 

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本流から分けられ、しかし米国史を作り上げた黒人たち

黒人野球リーグ:ニグロ・リーグ

黒人飛行隊:タスキージ・エアマン

黒人部隊:バッファロー・ソルジャーズ

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西アフリカ製の生地で作るアクセサリー。お見事

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アフリカ大陸をモチーフにしたイヤリング


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西アフリカの生地で作るドレス、ブラウス

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ジェイ・Z 〜 ラッパー、プロデューサー、実業家(1965 – )

アイダ・B・ウェルズ 〜 黒人女性ジャーナリスト(1862 – 1931)

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アフロピック(アフロヘア専用の櫛)型のヘアバンド

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人種を超えて〜新しいハーレム

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ダンス・シアター・オブ・ハーレム:未来のバレリーナ  ↑

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「ちゃんとつけろよ!」〜NY市が無料配布するコーンドーム

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アポロシアターのテント

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四角いブームボックス。欲しい

 

美味しかったね、楽しかったね。また来年!






 

 



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
ワシントンハイツ・ツアー(スペイン語の街 "In the Heights"はここで生まれた!)

 

 

 

 

 


 

 

 

author:堂本かおる, category:ハーレム, 07:31
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南軍リー将軍の銅像はなぜ撤去されねばならないか〜ヴァージニア州の騒乱と悲劇のルーツ奴隷制

南軍リー将軍の銅像はなぜ撤去されねばならないか〜ヴァージニア州の騒乱と悲劇のルーツ 奴隷制

 先週末にヴァージニア州シャーロッツヴィルで起こった事件(前回の記事へのリンク)の発端は、南北戦争時の南軍の将軍、ロバート・E・リーの銅像だ。市議会で決まった公園からの銅像撤去に反対する白人至上主義者が州外から大挙してシャーロッツヴィルに押しかけ、それに対する抗議グループ(カウンター)との間に非常に暴力的な衝突が繰り返され、死者、重軽傷者が出た。

 この事態を受け、全米各地にあるリー将軍を含む南軍由来の銅像や記念碑などが次々と撤去、または撤去の検討がなされている。理由は奴隷制を旗頭に挙げた南軍を英雄視することへの異議と、シャーロッツヴィルと同様の事態が起こることを避けるためと思われる。


奴隷市場でセリにかけられる奴隷一家(ヴァージニア州)
家族バラバラに売られることもあった



 今となっては到底受け入れることのできない奴隷制だが、アメリカの史実である。史実を象徴する銅像を撤去することへの疑問の声が漏れ聞こえてくる。

 南軍由来の銅像や南軍旗を撤廃しなければならない理由は、奴隷制が実はまだ終わっていないからだ。

 もちろん奴隷制自体は約150年前に終わっている。(逆に言えば、たかだか150年前までこの国に奴隷が存在していたことに驚かされるわけだが。)しかし、人間性を根底から覆す奴隷制が何世代にもわたって続くと、廃止されても当事者の人間性と社会的な地位を回復することは困難になる。しかも外観から容易に識別できる黒人種に限定されていることが重なり、アメリカの黒人は今も奴隷制の影の中に生きることを強いられている。


1619:ジェームズタウン(ヴァージニア州)に20人のアフリカ人が搬送される

  (↑244年間↓)

1863:奴隷解放宣言 1865:リンカーン暗殺 KKK結成

  (↑101年間↓)

1964:公民権法制定

  (↑53年間↓)

2017:ヴァージニア州シャーロッツヴィルの騒乱



 黒人奴隷制はカリブ海諸島でかなり早い時期に始まっているが、ここでは現在のアメリカ合衆国に限定して話を進める。

 240年間にわたる奴隷制が終わった途端にKKKが結成されているのである。目的は自由人となった黒人を抑圧、加虐し、白人の優位性を保つことだ。以後、黒人たちへの厳しい差別、リンチ、殺害が続き、黒人は差別から派生する貧困にもあえぎ続ける。そのため多くの黒人が南部を出て都市部に大移動。1950年代以降、黒人たちは人種による学校の住み分け、異人種間の婚姻禁止なども含め、黒人へのいわれなき差別を撤廃するための公民権運動を展開する。繰り返されるデモ、収監、嫌がらせ、暗殺などを乗り越え、1964年に公民権法が成立する。奴隷解放宣言から実に100年後のことである。しかし、その後も差別と貧困は解消せず、全米各地で黒人暴動が起こっている。



鞭打たれた奴隷


 以下は奴隷解放宣言から154年、公民権法制定から53年を経た現在の黒人と白人の格差。


大卒率(2年制含む)
白人ー62.0%(2010年に入学した163万人のうち)
黒人ー38.0%(2010年に入学した34万人のうち)



刑務所収監率(人口10万人あたり) 2010
白人ー385人
黒人ー2,304人



世帯年収中央値 2015(貧困率は2010-1011)
白人ー60,325ドル(貧困率10%)
黒人ー35,439ドル(貧困率26%)



 貧しさゆえに良い教育が受けられず、すると進学が難しくなる。学歴がないと良い職に就けず、貧困のままとなり、犯罪率も上がる。そうした若者や大人から生まれた子供たちも貧困の中で育ち……黒人は何世代にもわたって、この負のサイクルにはめ込まれてしまっている。

 鍵となるのは教育だが、教育は文化と直結する。貧困地区に生まれ、教育や勉強の文化も習慣もなく育った子供に、のちになって奨学金を与えても手遅れなことが多い。「家庭の貧富の差により、3歳までに耳にする単語の総数に3000万語の違い」が発表され、教育界に衝撃を与えたが、4歳でPre-K(幼稚園)に入園した時点ですでに存在するこの違いを克服することがいかに困難か。白人と黒人の小中学生の読み書き能力には4学年分の差があるとも言われている。

 また、人種別に居住区が分かれるため、黒人地区に生まれ育った子供が通う学校の生徒はほぼ黒人のみである。白人の大人も黒人居住区を訪れる必然性がないため、黒人社会の実情を知る機会はほとんどない。

 現在、黒人の全米人口比率は13%(4,300万人)。国家的にみて決して少なくない人口の年収が白人の6割に満たず、4人にひとりが貧困。貧困率は子供に限定するとさらに高くなる。この事態は当事者の黒人だけでなく、白人もふくめて国全体にマイナスの影響を及ぼしている。しかし人種間の断絶から、その実態はなかなか理解されずにいる。

 断絶、無理解は警官や政治家、司法制度にも及ぶ。だからこそ今も黒人が警官に射殺され続けている。警官は無罪となり続けている。そしてまた、警官による新たな黒人射殺事件が起こる。

 それを見て高揚しているのが白人至上主義者だ。今回のヴァージニア州の事件を時系列でまとめた以下の映像を見ると、白人至上主義者は「必要とあれば俺たちはファッキン・ピープル(黒人、ユダヤ系、移民など)を殺す」「俺たちがコトを成し遂げるまでに、さらに人が死ぬだろう」と語っている。


Charlottesville: Race and Terror – VICE News Tonight on HBO




 こうした現状の根にあるのが奴隷制だ。奴隷制が大国アメリカの経済基盤を作ったことは事実だが、修復しようのない大きな禍根を残した。アメリカは今も過去の奴隷制ゆえに揺らぎ続け、市民がお互いを傷付けあっている。だからこそ南軍由来の銅像は公共の場から撤去されるべきなのだ。人々が平和に集う公園に置かれるべきではない。博物館と教科書の中にのみ存在すべきものなのである。

 

 

 

 



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ワシントンハイツ・ツアー(スペイン語の街 "In the Heights"はここで生まれた!)

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 09:43
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ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』オフ・ブロードウェイ版〜移民の街とラテンのリズム

ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』オフ・ブロードウェイ版〜移民の街とラテンのリズム

 ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』を観た。昨年、歴史ヒップホップ・ミュージカル『ハミルトン』を大ヒットさせたリン-マニュエル・ミランダのデビュー作だ。ただしブロードウェイ版はかなり以前に終了しており、今回観たのはイースト・ハーレムにある小劇場 ハーレム・レパートリー・シアター でのオフ・ブロードウェイ版だ。


ブロードウェイ・オリジナル版のポスター


 『イン・ザ・ハイツ』はマンハッタンの北部、ハーレムのさらに北に広がるワシントン・ハイツという街を舞台としている。カリブ海ドミニカ共和国からの移民の街だが、プエルトリコなど他の島や国からのヒスパニックが混じって暮らしている。

 ここは移民たちが必死に働く街だ。住人の多くは貧しく、犯罪も起こる。けれど早口のスペイン語と、心踊るラテン音楽と、カラフルな色彩にあふれた街でもある。

 主人公のウスナビ(オリジナル版では原作者のリン-マニュエル・ミランダが演じた)は小さな「ボデガ」を経営している。ボデガとは、ダウンタウンでは「デリ」と呼ばれる小さな食料雑貨屋だ。毎朝、地元の人々に朗らかにコーヒーを売るウスナビは、幼い頃に両親とともにドミニカからニューヨークに移民としてやってきた若者だ。島のことはあまり覚えていない。両親はもう亡くなってしまった。身寄りはおばあちゃんだけ。生まれ故郷の島に戻ることを夢見ているが、美容師のヴァネッサに夢中でもある。

 ウスナビのボデガの隣りにはヴァネッサが働く美容院と、ヴァネッサの友人ニーナの両親が経営する小さなタクシー会社がある。それぞれの店が、それぞれに経営上の問題を抱えている。それぞれの店で働く人々はウスナビにとって家族のような存在だが、皆、やはりそれぞれに人生の問題を抱えている。

 こんなワシントン・ハイツの様相が、ヒップホップ/ラテン音楽/ソウルミュージック/ブロードウェイ音楽を掛け合わせた歌と踊り、涙あり、笑いありの会話によって活き活きと描かれる。



ハーレム・レパートリー・シアターのバナー


 『イン・ザ・ハイツ』のクリエイター兼オリジナル版の主役をつとめたリン-マニュエル・ミランダはワシントン・ハイツで生まれている。周囲から常にラテン音楽が聴こえてくる街で暮らし、父親はミュージカル・ファン。リン-マニュエル自身はヒップホップ世代。3種の音楽を掛け合わせたミュージカルを作ることはリン-マニュエルにとって自然の成り行きだった。キャストにアフリカン・アメリカンの俳優が加わったことから、R&Bも歌われることとなった。

 しかし当時のブロードウェイで「ヒップホップ・ミュージカル」は斬新過ぎた。ヒットするとは誰も思わなかった。なのに大当たりしてしまった。2008年、本作はトニー賞、グラミー賞を獲得し、翌年にはピューリッツアー賞をも受賞している。

 以後、リン-マニュエルはミュージカルや映画への出演、制作、脚本、作曲などで多彩な活躍を続けている。同時に『イン・ザ・ハイツ』は世界各国での上演が今も続いている。日本では2014年に日本人キャストによって上演され、昨年は韓国ヴァージョンも日本公演をおこなっている。



2008トニー賞でのパフォーマンス


 『イン・ザ・ハイツ』の主人公はワシントン・ハイツという街なのである。貧しい街だからこそ住人は脱出を夢見る。しかし、ここには家族が、友人が、そして自分を育んでくれたすべてがある。だが、住人たちは移民か二世だ。移民にとって、二世にとって、故郷とは島なのか、ハイツなのか。

 ニューヨークならではの移民の物語を、これもニューヨークならではの異なる音楽のミックスによって織り上げた作品が『イン・ザ・ハイツ』なのである。





ワシントンハイツ・ウォーキング・ツアー
『イン・ザ・ハイツ』はここで生まれた!


 

author:堂本かおる, category:ラティーノ, 17:36
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