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「私の大統領」〜アメリカ人にとってトランプは大統領か否か
「私の大統領」〜アメリカ人にとってトランプは大統領か否か
(初出)インサイト2017年3月号 パワーと多様性の都市をサバイバル〜ニューヨークを生きる第69回 

ドナルド・トランプが第45代アメリカ合衆国大統領に就任以来、アメリカは大混乱に陥っている。就任式当日から連発される大統領令、政治経験皆無者の内閣指名……全米各地で抗議デモが頻発し、「トランプは私の大統領ではない」と宣言する者、「トランプこそ私の大統領だ」と熱烈に支持する者と、アメリカは大統領を巡ってまっぷたつに分断。この現象はアメリカにとって大統領が非常に大きな存在であることに由来する

■オルタナ・ファクト

 日本でもトランプ報道は加熱しているが、日本ではあまり伝えられないトランプおよび政権の言動を元に、アメリカにおける大統領の位置付けを考えてみたい。

 連日の大統領令の中で最も大きな混乱を招いたのが、シリア難民の受け入れ停止とイスラム教7ヶ国民のアメリカ入国禁止令だ。大統領令が出された瞬間にアメリカへ向う機上にいた該当国籍者は空港に到着するや勾留。祖国への里帰りからアメリカに戻ってきた家族の中には米国市民権(アメリカ国籍)、永住権、ビザと滞在資格が異なり、家族離散となったケースもある。大統領令の違法性が問われると同時に人道的にも大きな問題と捉えられ、瞬時に全米各地の空港で抗議デモが起こった。弁護士たちも駆け付け、無償で該当者支援を行った。同時に入国禁止令差し止め訴訟も起こされ、トランプ政権は2日後に「永住権保持者は除外」の通達を出した。文字どおりの朝令暮改となったのである。

 もうひとつの大統領令騒ぎは対メキシコ。トランプは当選前からメキシコとの3,000kmにわたる国境に壁を作り、莫大な建設費用はメキシコに払わせると言い続けてきた。折りも折、メキシコのペニャニエト大統領が訪米してトランプとの会談を行う調整のためにメキシコ政府高官が渡米している最中に「壁を造り、費用はメキシコ」とする大統領令に署名。メキシコ側は侮辱と受け取り、訪米をキャンセル。トランプは「メキシコからの輸入品に20%の関税をかけ、その歳入で壁を造る」と発言。

 こうした騒ぎも冷めやらぬ2月1日にトランプは“黒人史月間”を祝う談話を発した。その内容から黒人史にまつわる常識範囲の知識も持ち合わせていないことが露見した。1800年代に奴隷の身から奴隷解放運動家となったフレデリック・ダグラスの名を出しながらその功績内容には一切触れず、「素晴らしい活動を行ってきた」と、まるで生存する人物であるかのように結んだ。瞬く間に「ダグラスが誰で何をしたのか知らないのだろう」「もう死んでるって気付いてないよね」といった書き込みがSNS溢れた。

 政権チームの言動もメディアで大きく取り沙汰され続けている。ホワイトハウス報道官は就任式の一般参加者の数を史上最大と言い、事実ではないと批判されるとホワイトハウス顧問が「これはオルタナ・ファクト(別の事実)である」と釈明。その顧問がムスリム禁止令への批判に対して「オバマ大統領もボーリンググリーン虐殺後に同様のことをした」と架空の虐殺事件を使って反論。

 こうしたエピソードから分かるのは大統領と政権に他者への無関心と敬意の欠落、非難に対して即時に報復、または捏造で反論するパターンがあることである。

■マイ・プレジデント

 アメリカに於ける大統領の存在感には圧倒的なものがある。大統領は頻繁にメディアに登場する。重要な問題が起こればゴールデンタイムに演説を行い、全主要チャンネルが生中継する。他国の首脳を迎えた際には華麗な晩餐会を主宰し、春のイースターにはホワイトハウスにたくさんの子どもを招いて一緒に遊ぶ。ホリデーシーズンには貧者へのボランティア活動を行い、毎年恒例の特派員晩餐会ではジョーク演説で全米を笑わせる。その一方、メモリアルデイなど軍事関連の催事では軍人に囲まれ、大統領自身も敬礼を行い、大統領は“米軍最高司令官”でもあることを再認識させられる。

 歴代大統領はアメリカの歴史を形作ってきた最重要人物として子どもたちにも教えられる。中高生になると“建国の父”について学ぶが、ワシントンやリンカーンなど特に重要な大統領の偉人伝は低学年から読む。歴代大統領を一冊にまとめた児童書も多種出ている。1月には通称プレジデント・デイと呼ばれる祝日がある。4人の大統領の巨大な像が刻まれたラシュモア山もある。

 その一方で失策を犯した大統領には厳しい国でもある。ニクソンは盗聴により弾劾され、クリントンもインターンとの浮気によって弾劾寸前までいった。ジョージ・W・ブッシュは政策のマズさだけでなく、うたた寝してイスから転げ落ち、顔に痣を作るといった不注意さが揶揄されることも多かった。こうした大統領の言動は新聞雑誌、トーク番組でパロディにされ、徹底的に笑い者にされる。それでもそこには大統領への敬意から超えてはならない一線がある。国民自身がアメリカを優れた大国と自覚し、非常に篤い愛国心と大きなプライドを抱いていることが理由だ。大統領選が二大政党制ゆえの1対1対決、しかも1年半もの長期にわたることから有権者は否が応でもどちらかを支持せざるを得ない選挙の仕組みもあるだろう。

 ロイヤル・ファミリーへの憧れもある。王族も皇族も持たないアメリカだが、そうした存在への憧れは洋の東西や古今を問わずに共通するのかもしれない。かつてはケネディ一家がその役割を担っていた。今や名の知られた親族は先日まで駐日大使だったキャロライン・ケネディのみだが、今、アメリカでは故ジャッキー・ケネディの伝記映画『Jackie』が公開中であり、主演のナタリー・ポートマンはアカデミー賞主演女優賞にノミネートされている。

 ケネディ家に変ってロイヤル・ファミリー的ポジションにあったのがオバマ前大統領一家だ。若くハンサムな大統領、朗らかで活動的なファーストレディ、娘2人にペットの犬2頭の家族構成に加え、私的なスキャンダルも無く、まさに理想の一家だった。こうした諸々の背景があり、アメリカ人は支持する大統領を「マイ・プレジデント」と呼び、支持できない場合は「ノット・マイ・プレジデント」と言う。大統領との間に個人的な強い繋がりを見い出しているのである。

 最初に記したトランプの言動により、リベラルはトランプを「理論的でない」「人道に反する」として大統領と認めていない。しかしトランプ支持層はトランプの強硬な姿勢を「強い大統領」と受け取る。移民やテロリストの流入、不景気や失業を恐れ、白人種とキリスト教徒の優位性を取り戻したい人々には「頼もしい大統領」なのである。着眼点がまったく異なる2つの層だが、どちらも大統領の存在に非常な重みを置いている点は同じだ。アメリカは良くも悪くも大統領あっての国なのである。

(初出)インサイト2017年3月号 パワーと多様性の都市をサバイバル〜ニューヨークを生きる第69回



ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
ワシントンハイツ・ツアー(スペイン語の街 "In the Heights"はここで生まれた!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

author:堂本かおる, category:オバマ大統領, 16:17
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迫真!マクドナルド・ゴスペルフェスト2017

マクドナルド・ゴスペルフェスト2017についての記事『日本人にゴスペルは歌えるか〜マクドナルド・ゴスペルフェスト2017』を書きました。以下はフェストの写真です。この盛り上がり! 記事と合わせてご覧下さい。

コンテスト出場クワイア、ソロシンガー、ダンサー








 

ゴスペル・ラッパー

 

NY在住日本人シンガー

 

ロックやレゲエとゴスペルのマッシュアップ

 

救世主キリスト

 

審査員

 

巨大アリーナ、ほぼ満席


バックステージ:出番待ち

 

パフォーマンス後の休憩

 

レッドカーペット




会場ロビーのベンダー

 

チャーチハット


ファンテイジア








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author:堂本かおる, category:音楽, 17:44
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オバマ元大統領:演説で4,000万円稼ぎ、若者支援に2億円寄付〜ヒューマン・バラク・オバマ第16回
オバマ元大統領:演説で4,000万円稼ぎ、若者支援に2億円寄付
〜ヒューマン・バラク・オバマ第16回


■人間としてのバラク・オバマと、彼がアメリカに与えた影響を描く連載■

 8年間の任期を終えたオバマ元大統領は南洋のパラダイスでのバケーションを存分に堪能し、その後はワシントンD.C.のギャラリーやマンハッタンのレストランに「GQマガジンのモデル」のような出で立ちで現れては、トランプ政権に打ちのめされているアメリカ人民にひと時の幻想を与えた。バラクとミシェルの笑顔を見ると、つい、「あぁ!なんだか良いことが起こりそう!」と錯覚してしまうのである。

 しかし今、バラク・オバマの挙動に若干の批判が起こっている。オバマ氏が9月にウォールストリートの投資銀行カンター・フィッツジェラルド主宰のヘルスケア・カンファレンスで講演し、その演説料が40万ドル(4,400万円)と報じられたためだ。

 さっそく共和党のチャフェツという鬱陶しい下院議員が「稼ぎ過ぎ!大統領の年金を削る!」などと言い出している。大統領時代のサラリーは今回の講演料と同じ額の年40万ドル(※)である。あの激務でこの金額ではまったくもって釣り合わない。さらに年金を削るなど、どれほど嫌がらせがしたいのか。
※他に年5万ドルの経費、10万ドルの旅行費用、1.9万ドルの娯楽費が付く

 共和党のみならず、民主党のバーニー・サンダースやエリザベス・ウォーレン上院議員も「ウォール・ストリートからそれほどの大金を貰うのはいかがなものか」と異議を唱えている。


■若者に200万ドルの寄付

 オバマ夫妻はどんどん稼ぐべきである。贔屓の引倒しと言われるかもしれないが、あのオバマ元大統領が私腹肥やしに執着するとは思えないのだ。ミシェルはかつて、政治家になることに夢中で家庭の経済状態をまるで顧みない夫にため息を付いていたという。(そう言えば、ヒラリーも同じことを言っていた。)

 そんなバラク・オバマは大統領時代にすでにマイノリティ青少年支援のNPOを立ち上げ、「一生続ける」と宣言している。ミシェルはつい先日、ファーストレディ時代に始めた開発途上国の女子教育支援プログラム「Let Girls Learn」を共和党に「廃止する」と発表され、その2日後には新たに建てるオバマ大統領センターで同じプログラムを続けるとツイートしている。貧しい若者や子供を救うための活動資金はいくらあってもあり過ぎることはないのだ。

 そもそも40万ドルの演説で騒いでどうする。バラクとミシェルはそれぞれ来年あたりにホワイトハウス時代の伝記本を出版するが、契約金は2人で6,500万ドル(71.5億円)と伝えられている。出版契約の一部として、出版社は貧しい子供に本の供給を行っているNPOに100万冊の本を寄付することとなっている。

 また、オバマ夫妻は今夏、地元シカゴの「サマー・ジョブ・プログラム」に200万ドル(2.2億円)の寄付を行う。サマー・ジョブ・プログラムとは夏休みの間、14 〜24歳の若者に仕事を斡旋提供する半ば公的な仕組みだ。アメリカの都市部では特にマイノリティの青少年が夏期だけのアルバイトを見つけることは難しい。若者はサマー・ジョブ・プログラムによって仕事を見つけて現金収入を得られるだけでなく、このプログラムに参加したこと自体が「真面目に将来を考えている」ことの証しと捉えられるので履歴書に書ける。また、ここでの仕事=未知の体験が将来のキャリアへのきっかけになることも有り得る。オバマ夫妻の寄付金の多くは若者への賃金として、一部は団体の運営費として使われるはずだ。


■警備の経費

 元大統領および元ファーストレディとして、オバマ夫妻には大きな出費が必要であることも事実だ。次期大統領の就任式1月20日をもってホワイトハウスを出たオバマ一家は、二女サーシャが高校を卒業するまでの2年間、ワシントンD.C.に留まることとした。D.C.の高級住宅地区にある邸宅は白亜の寝室が9つもある豪華かつ歴史ある建物で市場価格は600万ドル(6.6億円)だが、月22,000ドル(240万円)で賃貸している。単なる贅沢ではなく、警備のしやすさを条件に探した結果と伝えられている。

 現行法では元大統領夫妻にはシークレットサービスによる警備が生涯にわたって付く。実は1997年にそれまでの終身警備から引退後10年に変えられていたものを、オバマ大統領が終身制に戻したのだ。

 アメリカの大統領は引退後も何かしらの攻撃のターゲットに成り得るので10年に縮めたのは非常なナンセンスだった。特にオバマ大統領は米国史上初の黒人大統領である。オバマ氏の政治家としての資質、政策、人格ではなく、「黒人である」ことに信じられないレベルの怒りを抱えた人種差別主義者がどれほどいた(いる)かを考えると、夫妻には終身警備が必要である。しかし、この法は将来、また変えられる可能性もある。そうなればオバマ夫妻は自費で警備を賄わなければならない。(過去8年間にオバマ夫妻が受け取った脅迫の類いをホワイトハウスは一切公表していない。アメリカの史実資料としての公開を望む。)

 さらに現行法でも元大統領の子供たちは16歳までしか警備が付かず、すでに18歳で今年の9月からハーヴァード大生となる長女のマリアには公費警備が付かない。この件についてオバマ家からの発表はないが、なにかしらの警備を私費で付けるのではないだろうか。

 いずれにせよ、いわゆる1%のスーパーリッチ企業から多額な講演料や本の出版契約金を受け取り、それをマイノリティの青少年のために使うのである。その活動のためにオバマ一家には少々の警備費と備えが必要なのである。(さらに有り体に言えば、アメリカは黒人奴隷の終身無給強制重労働により経済発展した国である。その結果生まれた1%から得たギャラでマイノリティ支援をするのである。)

 一体、何がいけないと言うのだ?










連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」
第15回「オバマ大統領が書いた絵本『きみたちにおくるうた―むすめたちへの手紙』 」+(バックナンバー)






ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
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author:堂本かおる, category:オバマ大統領, 16:52
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何故、セリーナ・ウィリアムスは「ミルク入りチョコレート」に憤ったか。
何故、セリーナ・ウィリアムスは「ミルク入りチョコレート」に憤ったか。

 「どんな色になるか見ものだな。ミルク入りのチョコレートか?」

 テニスのスーパースター、セリーナ・ウィリアムスが妊娠を発表するや、テニス界の大物、ルーマニアのイリ・ナスターゼが発したセリフである。セリーナは黒人、フィアンセのアレクシス・オハニアンは白人だ。

 セリーナは瞬時に反撃に出た。以下のコメントをインスタグラムにアップしたのだ。

 イリ・ナスターゼのような人間がこんな人種差別発言を私や、まだ生まれてもいない子に、そしてセクシストな言葉を私の仲間に投げ付ける社会に生きているなんてガッカリ。

(中略)世界はここまで来た。けれどまだ先に行かねばばらない。イエス、私たちはたくさんのバリアを打ち壊してきた。けれどバリアはまだまだある(中略)

 あんたみたいに私は恐れてなんかいない。分かると思うけど、私は卑怯者ではない。私の無礼さが気に障る?どうしてその根暗さで人を悩ませるの? その言葉で私を撃てるかもだけど、憎悪で私を殺そうとするのかもだけど、私は空気みたいに立ち昇ってみせる。




フィアンセのアレクシス・オハニアンのインスタグラム


 ナスターゼは1970年代に活躍したテニス・プレーヤーだ。グランドスラムを2度達成し、ルーマニアでは体操のナディア・コマネチと並ぶ伝説的アスリートとなった。しかし現役当時から口と態度の悪さで「バッド・ボーイ」と呼ばれていた。

 現在70歳のナスターゼは今年のフェドカップのルーマニア・チーム・キャプテンだったが、わずか数日の間に試合中の女子選手を「ファッキン・ビッチ」と呼び、セリーナに対して上記の発言を行い、女性ジャーナリストに「スチューピッド」を繰り返した。さらにイギリス・チームの女子選手(アジア系英国人)が既婚で妊娠中であるにもかかわらず「ホテルの部屋番号を教えろ」と迫った。あまりにも酷い素行が祟り、ナスターゼはフェドカップから既に放り出されている。


■肌の色のバラエティ

 黒人自身は肌の色をさまざまに例える。人によって色合いと濃淡にかなりの幅があり、それぞれオートミール、ハニー、キャラメル、カフェラテ、ブラウンシュガー、チョコレートなどと呼ぶ。

 アメリカの黒人の肌の色に幅があるのは、奴隷制時代に黒人女性が白人にレイプされたためだ。その後、多くの逃亡奴隷がネイティブ・アメリカンに匿われた時代があった。さらに時代が進むと白人、ヒスパニック、アジア系など他人種・他民族との異人種カップルも出始めた。その結果の肌の色のバラエティなのである。

 そもそもは奴隷制という悲劇に基づき、今も肌の色が濃いほど社会的なスティグマがある。だからこそ自らの美を意図的に自覚し、同時に自分とは異なる色の同胞の美も肯定する。そのためにあらゆる色を讃える。実際、それぞれの色がそれぞれに美しいのである。

■ミルク入りチョコレート

 セリーナ・ウィリアムスの赤ちゃんが生まれた時、もし本当にミルク・チョコレートのような肌の色であれば、周囲は「なんときれいなミルク・チョコレートのような色!」と言えたはずだった。しかし、セリーナの赤ちゃんにこのフレーズを使う人はもういないだろう。明らかな人種差別主義者であるナスターゼがこのフレーズを口にしたからだ。

 ナスターゼは自身もテニス選手でありながら時代を切り開いたテニス・プレーヤー、セリーナへの敬意はなく、人間としてのセリーナへの敬意もなく、何より出自は一切関係なく、誰からも祝福されて生まれてくるべき赤ちゃんを、生まれる前から単なる色の混合物として「ミルク入りチョコレート」と呼んだ。さらにナスターゼは後日、ルーマニアのメディアに対し、以下のコメントを発した。

 「赤ん坊がミルク・チョコレートだと言ったのがレイシズムなのか?もしセリーナが醜く黒い子を生むと言ったら、それがレイシズムだろう」

 テニス界の風土には全く疎いが、ナスターゼは永久追放されてしかるべきだろう。

 しかしセリーナの赤ちゃんについては心配ない。皆、とてもクリエイティブだ。赤ちゃんを可愛いと思い、美しいと思い、最大級に褒める言葉なら、両親はもとより家族親戚友人たちから無限に繰り出されるに違いない。-end-


連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」
第15回「オバマ大統領が書いた絵本『きみたちにおくるうた―むすめたちへの手紙』 」+(バックナンバー)






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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 17:10
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書評『禁断の英語塾 WORD is YOURS』押野素子(著)
書評『禁断の英語塾 WORD is YOURS』押野素子(著) 丸屋九兵衛(編集)

 先日、押野素子氏がツイッターで「Nワード」に触れていた。ネットフリックス『The Get Down』の1シーンの画像が使われていた。白人エリート青年たちが図に乗って黒人をNワードで呼び、トイレでボコボコにされるシーンだ。

(『The Get Down』は1970年代のブロンクスを舞台にヒップホップ誕生の瞬間を再現した、非常に貴重かつおもしろいドラマ。ヒップホップやブラックミュージックに関心ある人はぜひ。)

 素子さんはブラックミュージック関連の翻訳が本業であり、スラングの達人だが、だからこそ日本人に対してNワードの使用を戒めている。そういえば素子さんの本『禁断の英語塾 WORD is YOURS』でもNワードについて書いていたなと思い出し、久々にパラパラとめくってみた。

 うん、面白いのだな、この本。



 本書は黒人音楽雑誌『bmr』(ブラックミュージックレビュー)に2006年から2011年にかけて素子さんが連載した「WORD is YOURS」68回分を一冊にまとめたものだ。連載時のキャッチコピーは「歌やラップで耳にする気になるフレーズを徹底解剖」。ブラックミュージック・ファンが歌詞を聞いても、読んでも、なんとも理解し難いフレーズや単語、スラングを文化的背景まで含めて解説する内容だ。

 例えば、こんな項目がある。それぞれの項目におもしろく&納得の解説がみっちり書き込まれている。

16) R Kelly's Word Greatest - Chapter 1
この男なしに、この講義は成立しない。
アメリカ音楽界が誇る性の巨人の軌跡!

02)Laffy Taffy
日本人よ、現実を直視せよ(いろんな意味で)。
「胸より尻」が、この世界の常識だ!

03)Fiend
フレンドじゃないよ、フィーンドだよ。
映画字幕でも混同される要注意単語について

↑ブラックミュージックに「セックス」「ドラッグ」は欠かせない。音楽ファンにはこうした項目は有り難い

05)Going Down
ダウンなのに盛り上がるのがパーティの掟。
思わぬベッドルーム用法にも開眼せよ!

09)Give It Up, Part 2
「一線を超える」だけでなく。
非ベッドルーム用語も伝授しよう

↑単語自体は基本中の基本。でもフレーズになると意味がさっぱり分からない。日本人には、これが結構ツラいのだ

19) Got Your Back
黒い同士愛、ここに開花!
背後をかばいあうのが仲間ってもんよ

↑おぉ、私が好きなフレーズもある! これを聞いたり、言われたりすると、じわっとくる

27) Run One's Mouth
「トークはチープ」が世界の真理。
おしゃべり野郎には鉄拳制裁だっ!

↑これってスラングだったのか! ひたすら喋り続ける息子を「Stop running your mouth!」と叱っていたよ……。非ネイティヴ英語話者の弱点。標準語とスラングの違いを知らずに耳で覚えたものを使ってしまう

18) How to deal with slang
若者たちよ、押野先生の経験から学べ。
黒人英語、そしてスラングとの接しかたを

68) The N-Word
最終回に収まり切らない超難題!
数百年のアメリカ黒人史が生んだ、あの言葉。

↑素子先生、実は真面目なのだ

 こうした言葉を日本人が用法ばかりか微妙なニュアンスまで理解し、日本語で解説するのがどれほど骨の折れる仕事か、素子さんと同様にアメリカに暮らす私にはよく分かる。いや、素子さんは日本で英検1級、TOEFLとTOEICほぼ満点を取った上でワシントンD.C.の名門黒人大学、ハワード大学に留学し、そのままD.C.に暮しながら翻訳業を続けている英語の専門家だ。加えてブラックミュージックへの愛情はそれこそ海よりも深い。『WORD is YOURS』はこうした背景を持つ素子さんだからこそ書き得た連載なのだ。かつ、素子さんは英語やスラングに関して強い信念を持っている。

 Nワードを含むスラングを日本人がどう使うか、あるいは使うべきでないかに関し、私は素子さんと近い考えを持っているが、異なる部分もある。各人考えが違うことは素子さんも本書の中で述べている。それは読者も同じだ。この本を読む人は素子さんならではの可笑しいエロ話に大笑いしながら知らずしらずのうちに黒人文化の背景も学んでしまえる。そこには黒人社会に於けるスラングの存在の意味・意義も含まれる。そこからブラックミュージック・ファンとして、非英語話者として、個々の人がそれぞれにスラングについての考えを巡らせてみてほしい。

※最後に出版社へのクレーム:68のフレーズの索引が無いのは何故だ!



以下は押野素子さんが翻訳を手掛けた本










連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」
第15回「オバマ大統領が書いた絵本『きみたちにおくるうた―むすめたちへの手紙』 」+(バックナンバー)






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author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 13:08
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書評:黒人ハイスクールの歴史社会学 アフリカ系アメリカ人の闘い 1940-1980
書評『黒人ハイスクールの歴史社会学 アフリカ系アメリカ人の闘い 1940-1980』

初出:週刊読書人2017年1月13日号

 本書はまず、21ページもある「訳者あとがき」から読むといいかもしれない。本文はタイトルが語るように、アメリカに於ける黒人ハイスクールの1940年代から1980年代にかけての歴史と社会事象との関係であり、理解には多少のアメリカ史が必要となる。

 言うまでもなく、アメリカの黒人は400年前に奴隷としてアフリカから強制連行された人々であり、奴隷解放から150年経つ今も人種差別の対象のままだ。差別には直接的なもの以外に“社会構造的分離”も含まれ、これがハイスクール事情と密接にかかわっている。したがって黒人史や当時のアメリカの事象にあまり詳しくない読者はあとがきを先に読むことにより、本書の内容の背景が掴めるはずだ。

 ただし、3人の訳者のうち本書の邦訳版出版を企画したメインの訳者、石倉一郎氏によるあとがきは単なる背景解説ではない。本文はカンザス大学の教育学部および歴史学部のジョン・L・ルーリー教授と、社会学部のシェリー・A・ヒル教授の共著による、当時者へのインタビューやデータからなる緻密な研究書だ。訳者は教授たちの黒人教育問題への真摯な取り組みと驚くべき当時の事情をひたすら忠実に訳している。

 しかし京都大学大学院の人間・環境学研究家准教授である石倉氏もまた、日本で長年、部落や在日といったマイノリティへの教育問題にひとかたならぬ情熱を傾けてきた人物である。訳文では抑えていた自身の知識と熱意があとがきに満ち満ちている。このあとがきを読むことによって、マイノリティ教育の専門家である石倉氏が本書をどれほど高く評価しているかが分かる。

 1940年代当初、多くの黒人は南部諸州の田舎に暮しており、ハイスクールへのアクセスが無かった。やがて白人の学校とは比べ物にならないほどつつましいながらも黒人用のハイスクールが徐々に作られ、通学する生徒も増えた。後に多くの黒人が都市部に移り、貧しいマイノリティ・コミュニティを形成。都市部でも白人と黒人の学校はきっぱりと分かれていたが、黒人のハイスクール進学率は格段に上がった。学歴を得たことによって収入が上がり、その後も白人と黒人の格差は相変わらず存在するものの、学校の人種統合も進み、1980年代までに格差は驚くほどに縮小した。



 本書はこの50年間に亘る一連の流れを生徒の性別、親の職業や学歴、持ち家の有無、母子家庭か否かなど数多くのデータと、黒人が白人の学校に通おうとすると激烈な反対運動が起り、連邦部隊が出動しなければならなかった事例、黒人が平等の権利を求めて繰り広げた公民権運動など、数値からは知る由もない当時の人種事情を付き合わせ、最終的にはハイスクール教育の浸透が黒人の生活向上にいかに貢献したかを解明していく。

 ニューヨークの黒人地区ハーレムに暮し、7年生(中学2年生に相当)の息子を持つ筆者には非常にリアリティのある内容だった。現在の黒人の生活環境は本書の終末1980年代に比べてもさらに向上しているが、白人と黒人の生徒の学力、親の経済力にはまだ大きな格差がある。

 ニューヨーク市では改善しない学校を閉校し、小規模校を開校して生徒を分散させるなど大胆な策も採られたが、それでも縮まらない学力格差を縮めるために、今はチャータースクールという壮大な実験のまっただ中だ。公立として授業料は無料、入試もないが、カリキュラムを民間に任せる半官半民の学校だ。従来の公立校より長い授業時間と厳しい規律で生徒を大学まで進学させることを目的としている。また、ある地域では隣接する公立校の一校は黒人とヒスパニックの生徒のみ、他校はほぼ白人となっており、成績格差が凄まじい。そこで二校の生徒を混ぜる策が発表されたが、今、白人の学校の保護者が強硬な反対運動を繰り広げている最中である。

 人種が原因のこうした事象はアメリカ特有に見えるかもしれないが、人種を「所得」に置き換えると日本でもすでに起きていることだ。したがって数十年前の黒人ハイスクールの成功を綿密に研究した本書は、今の日本の教育者の必読書と言えるのである。




連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」
第15回「オバマ大統領が書いた絵本『きみたちにおくるうた―むすめたちへの手紙』 」+(バックナンバー)






ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
ワシントンハイツ・ツアー(スペイン語の街 "In the Heights"はここで生まれた!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

author:堂本かおる, category:ブラックカルチャー, 10:16
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『ワイルド・スピード』〜世界最大のエスニック映画

世界最大のエスニック映画『ワイルド・スピード』

 アメリカではいよいよい4月14日に待望のワイルド・スピード・シリーズ第8弾『The Fate of the Furious』が公開される。(邦題『ワイルド・スピード ICE BREAK』4/28公開)



 今回はニューヨークが舞台とあってハーレム民はこれまで以上に待ち切れない様子だ。とはいえ運転免許すら持たない私がこの作品を語るのは、あまりにおこがましい。(ちなみに "非運転免許証" というシロモノは持っているが、アメリカ特有の事情ゆえ、ここでは説明を省く)

 しかしながら『ワイルド・スピード』シリーズは、今や世界最大の “エスニック映画” なのだ。主役の9割がマイノリティでありながらシリーズが延々8作も作られ、興行収入も飛び抜けている。挙げ句にユニバーサル・スタジオにアトラクションまで作られてしまった。カーアクション映画だけに俳優のマイノリティ性が語られることは少ないが、以下に驚きのリスト挙げてみる。

1) ワイルド・スピード (2000年)
2) ワイルド・スピードX2 (2003年)
3) ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT (2006年)
4) ワイルド・スピード MAX (2009年)
5) ワイルド・スピード MEGA MAX (2011年)
6) ワイルド・スピード EURO MISSION (2013年)
7) ワイルド・スピード SKY MISSION (2015年)
8) ワイルド・スピード ICE BREAK (2017年)

1-6 の公式トレイラーを繋いだビデオ



7) ワイルド・スピード SKY MISSION (2015年)公式トレイラー



8) ワイルド・スピード ICE BREAK (2017年)公式トレイラー





●俳優名(役名)【出演作番号】
俳優のエスニック・バックグラウンド

●ポール・ウォーカー(ブライアン・オコナー)【1,2,4,5,6,7】
 アメリカ人(白人)R.I.P.

●ジョルダナ・ブリュスター(ミア・トレット)【1,4,5,6,7】
 パナマ生まれ。母=ブラジル人 父=アメリカ白人
 生後すぐにロンドンに移り、6歳でブラジル、10歳で米国に移住


●ヴィン・ディーゼル(ドミニク・トレット)【1,3,4,5,6,7,8】
 アメリカ人。母=白人、義父=黒人。
 実父については語らず、「オレは多義・曖昧なエスニックだ」と発言

●ミシェル・ロドリゲス(レティ・オルティス)【1,4,6,7,8】
 アメリカ人。ヒスパニック。母=ドミニカ系 父=プエルトリコ系
 米国生まれ。8〜17歳をドミニカ共和国とプエルトリコで過ごし、米国に戻る


●ドウェイン・ジョンソン(ルーク・ホブス)【5,6,7,8】
 アメリカ人。母=サモア系 父=アフリカ系アメリカ人

●エルサ・パタキー(エレナ・ネヴェス)【5,6,7,8】
 スペイン人


●サン・カン(ハン・ルー)【3,4,5,6】
 韓国系アメリカ人

●ガル・ガドット(ジゼル・ヤシャー)【4,5,6】
 イスラエル人


●タイリース・ギブソン(ローマン・ピアース)【2,5,6,7,8】
 アフリカ系アメリカ人

●クリス・リュダクリス・ブリッジス(テズ・パーカー)【2,5,6,7,8】
 アフリカ系アメリカ人


●ナタリー・エマニュエル(ラムジー)【7,8】
 イギリス人。母=ドミニカ系 父=セントルシア(カリブ海)と英国(おそらく白人)のミックス


 以上が「ファミリー」ことコア・メンバー。

 ラッパーやラテン・シンガーがゲスト参加することも多く、過去にジャ・ルール、バウワウ、リタ・オラ、イギー・アゼリア、ロメオ・サントスなどが顔を出している。最新作には【4,5】に出ていたプエルトリコのミュージシャン・コンビ、ドン・オマー(リコ・サントス)とテゴ・カルデロン(レオ・テゴ)も再登場らしい。


■黒人女性キャラクターの不在という問題

 これほどの大ヒット・シリーズになるとは誰も思わなかったであろう第1作目。主役は当然のように白人のポール・ウォーカー。第3作『トーキョー・ドリフト』のみ主役交代するも、やはり白人のルーカス・ブラック。脇をマイノリティ俳優のみが固めてもそこは譲れなかったわけで。

 しかし、ヴィン・ディーゼルの存在感が凄まじく、いつしかディーゼル演じるドミニクが主人公になってしまう。それを補うためか第4作から白人女性のガル・ガドット(ジゼル・ヤシャー)、第5作からエルサ・パタキー(エレナ・ネヴェス)が加わるが、それぞれスペイン人、イスラエル人である。

 そして第6作、ついに強敵としてイギリスのバッドガイ、ジェイソン・ステイサム(白人)が登場し、第7作にも出演。しかしながら、なんとポール・ウォーカーが事故死してしまう。ファンにとっては涙無くして語れない出来事だが、ここではこのまま人種キャスティングの話を進める。

 ポール・ウォーカー不在となった最新作に白人主人公は追加されなかった。ヴィン・ディーゼルと、第5作から出ているドウェイン・ジョンソン(ザ・ロック)で突っ走っている。この2人はそれぞれ黒人と白人、黒人と南太平洋系のミックスであり、どの人種の観客にも人種的違和感、距離感を持たれない稀な存在なのである。

 それでもポール・ウォーカーのいない最新作では人種的バランスを取る必要があったと見え、最強最悪の敵を白人のシャーリーズ・セロンが演じている。もちろん金髪だ。前作から “ファミリー”に加わったナタリー・エマニュエル(ラムジー)のアフロヘアとのコントラストに気付く。ちなみにシャーリーズ・セロンは白人だが南アフリカ共和国出身、前作で悪役を演じたジャイモン・フンスーはアフリカのダホメ共和国(現ベナン)出身であった。

 残念なのは第6作を最後にサン・カン(ハン・ルー)が居なくなってしまい、アジア系が消えてしまったこと。なにより全8作を通してアフリカン・アメリカン女性の主要キャストがいないのはいかがなものか。

 黒人女性キャラクターの不在は以前より深刻な問題だ。黒人男優が主役でありながら黒人以外もターゲットとする映画では黒人色を強め過ぎないために、相手役の女優を非黒人とするケースがある。今、イギリスもこの問題で炎上中だ。イドリス・エルバが出演し、エグゼクティブ・プロデュースも務める英国の公民権運動を描いたTVミニシリーズ『Guerrilla』で、黒人男性の主人公の恋人で共に闘うヒロインがインド系なのだ。




■ハリウッドは現実の反映に

 『ワイルド・スピード』の生みの親は、第1作目を監督したロブ・コーエン(ユダヤ系アメリカ人)だ。しかし第2作の監督は『ボーイズン・ザ・フッド』『ハッスル&フロウ』のジョン・シングルトン(アフリカ系アメリカ人)に。第3作『トーキョー・ドリフト』から第6作までは『Better Luck Tomorrow』『スタートレックBEYOND』のジャスティン・リン(台湾生まれのアメリカ人)、第7作は『ソウSaw』シリーズの製作総指揮者ジェームズ・ワン(マレーシア生まれのオーストラリア人)、そして最新作は『フライデー』『ストレイト・アウタ・コンプトン』のF・ゲイリー・グレイ(アフリカ系アメリカ人)だ。

 どの監督も幅広く活躍し、自身が属するエスニックの映画に拘りはあっても固執はしていない。それでもマイノリティ監督の作品はキャスティングから細かい部分に至るまで、マイノリティでなければ出せないフレーバーが必ず滲み出る。

 アメリカでは黒人、アジア系、ラティーノなどそれぞれのエスニック性を深く追求した作品が必要不可欠であると同時に、観客の人種を問わないハリウッド大作にもマイノリティのさらなる進出が必要だ。日常生活で大量に目にするマイノリティがスクリーン上でもあらゆる職種に「普通」に存在する姿こそがナチュラルかつ現実の反映だからだ。マイノリティには犯罪者もいるが、警察官もいる。教師もいる。エンジニアもいる。ホームレスもいる。画家もいる。会計士もいる。デザイナーもいる。主婦もいる。人事課勤務もいる。商店主もいる。子供もいる。中高生もいる。年金暮しもいる。そして、大統領すら、いたのであるから。

 『ワイルド・スピード』第1作からすでに17年。当時20代だった主要キャストはすでに30代後半から40代だ。ポール・ウォーカーのためにも、全米はもとより世界中のマイノリティのためにも、全員元気でこのまま還暦を迎えるまで、ぜひとも車をナナメにぶっ飛ばし続けていただきたい。-end-



連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」
第15回「オバマ大統領が書いた絵本『きみたちにおくるうた―むすめたちへの手紙』 」+(バックナンバー)






ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
ワシントンハイツ・ツアー(スペイン語の街 "In the Heights"はここで生まれた!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

author:堂本かおる, category:映画, 00:23
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メラニア・トランプ:ファーストレディ公式写真を大公開
メラニア・トランプ:ファーストレディ公式写真を大公開

 メラニア・トランプがファーストレディとしての初の公式写真を公開した。その直前に息子バロンの学校終了を待ってホワイトハウスに移るという報道もあった。4月に開催されるホワイトハウス恒例のイースター・エッグロールと呼ばれるイースター(感謝祭)のイベントにも出席するらしい。


メラニア・トランプ、ファーストレディとしての初公式写真


 というか、膨大な数の親子連れをホワイトハウスに招待し、大統領夫妻が子供たちと遊んだり、絵本の朗読をしたりするイースター・エッグロールは代々ファーストレディが主宰してきた。けれど当初メラニアはホワイトハウスに移る気配がなく、本来ならとっくに始めていなければならない準備も進んでおらず、今年、イースター・エッグロールは果たして開催されるのだろうかと訝っていた。

 それはさておき。

 メラニアはいろいろ言われているけれど、個人的には特にネガティブな思いはない。きっとそもそもの性格や、外国出身で英語にハンデがあり、公式イベントでの他国のファーストレディとの会話や、米国内でのファーストレディ主宰イベントの仕切りなど、考えただけでウンザリしているだけではないだろうか。

 そう考えると大統領に立候補する者は自身の適正だけでなく、パートナーの適正も考慮しなければならないことになる。ミシェル・オバマは夫バラクがイリノイ州の上院議員に立候補した時点で自分のキャリアに支障が出ることを憂えた。まして大統領に立候補など、それこそ「勘弁してよ」だったらしい。それでもなってしまったからにはファーストレディ業に全力を尽くし、自分も楽しんでしまった。これは凄い能力だと思う。

 でも、それはミシェルの性分というか、能力であって、それをメラニアにも求めるのは気の毒な気がする。

 逆に言えば、大統領の妻はファーストレディという名の在宅専業主婦にならなければならない暗黙の掟をメラニアは打ち破るかもしれないと、少々の期待はあった。

 しかし、メラニアと息子バロンがニューヨークに留まると天文学的な警備費用をニューヨーク市が払わなければならず、ニューヨーク在住納税者として、そこには反対の署名をさせていただいた。(50万人ほどの署名が集まった)


 ■メラニア・ファンはいい加減にしろ

 メラニアではなく、メラニアの「ファン」には言いたいことが結構ある。まずは、トランプ当選の瞬間も、今回の公式写真の公開に際しても「これでホワイトハウスに気品が戻った」という書き込みが散見されたことだ。言わずもがな、「黒人のファーストレディなんてとんでもない!」の婉曲表現だ。当選時には勢いに乗ってミシェルを「猿」呼ばわりする者もいた。黒人=猿という古典的なステレオタイプだ。


ミシェル・オバマ第2期2013の公式写真(ノースリーブ。当然)


 ファーストレディに「気品」を求めるメラニア・ファンが大統領には気品のカケラも求めない不思議もある。そもそもメラニアが昔、移民として不法就労していた疑い、さらにモデルとしてヌードグラビアを撮影していた件も放置し、まるで無かったことのように振る舞っている。もし「黒人」のミシェル・オバマが同じことをしていたら、それこそ袋叩きだったはずだ。

 というわけで、メラニアのファーストレディ公式写真、フォトショだの(セレブは皆されてるし)、巨大なダイヤモンドの指輪の向きだの(笑えるけど)、まあ、そんなことはどうでもいいではないか。

 (現在、とんでもなく話題になっているミシェル・オバマの「ナチュラル・ヘア」写真については、今週のmess-y.comに書きます)



連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」
第15回「オバマ大統領が書いた絵本『きみたちにおくるうた―むすめたちへの手紙』 」+(バックナンバー)






ハーレム・ツアー(ブラックカルチャー100%体感!)
ゴスペル・ツアー(迫力の歌声を全身にあびる!)
スパニッシュハーレム・ツアー(ラテンカルチャー炸裂!)
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author:堂本かおる, category:トランプ, 19:53
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NY市のヘイトクライム、去年の2倍に。
NY市のヘイトクライム、去年の2倍に。

ニューヨーク市警(NYPD)によると、今年1〜3月のヘイトクライムは128件。昨年同時期62件の2倍となっている。

ヘイトクライムの対象と件数

ユダヤ系 ----------65
LGBT --------------17
黒人 --------------12
ムスリム -----------6
アジア系 -----------3
ヒスパニック -------3
白人 ---------------3
エスニック ---------3
宗教 ---------------3
障害者 -------------0
性別 ---------------0
他 -----------------13
ーーーーーーーーーーーー
計 128

ビンで頭部を殴る、素手で顔を殴る、ナイフをちらつかせるなど身体的な攻撃は27件。うち殺人は1件。他州から黒人殺害を目的にやってきた白人至上主義者による黒人殺害事件。(2017年アメリカ「黒人」であるという理由で殺される)

ニューヨークはユダヤ系の人口が多く、以前よりユダヤ系へのヘイトクライムは多い。多くはハーケンクロイツの落書きだが、昨年の26件から65件へ急増。

LGBTへのヘイトクライムは昨年も15件と多く、今年は17件と微増。
黒人へのヘイトクライムは昨年の5件から12件に急増。
黒人LGBTがヘイトクライムの対象になりやすいことが分かる。


dnainfo.com



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author:堂本かおる, category:ニューヨーク, 13:53
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『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』渡辺由佳里(著)を読む。
『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』渡辺由佳里(著)を読む。

 日本の人がとっくにトランプに飽きているのは承知だが、トランプは今後もいろいろと騒動を起こすと断言できる。しかも、次のアメリカ大統領選はすぐにやってくる。というか、もう始まっている。すでに何人か、立候補するつもりだろうと思える政治家がいる。彼らはまだはっきりと立候補宣言はしていない。時期尚早だ。しかし、読めないトランプの動向、混乱の極みにある共和党内部の動向、政権奪回を賭けた民主党の動向、今回の選挙で思わぬ動きを見せた有権者の動向、そして立候補しそうな他の政治家の動向を無理矢理に読みつつ、日々戦術を練っているはずだ。


『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』渡辺由佳里(晶文社)

 『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』は米国マサチューセッツ州在住のエッセイスト/洋書レビュアー/翻訳家の渡辺由佳里氏が2016年の大統領選を描いた一冊だ。とはいえ、トランプのことのみが書かれているわけではない。

 前半はアメリカ大統領選の複雑な仕組み、過去の大統領と大統領選時の出来事が分かりやすく書かれており、今回のトランプ vs. ヒラリー戦に興味を持った人には次回2020年大統領選をより深く理解する助けになるだろう。

 著者はマサチューセッツ州レキシントンという歴史あるリベラルな街に暮しており、そこで一般の人々が自宅の「リビングルーム」で民主主義を大切に育んでいる様子を、住人ならではの体験談として描いている。まさにアメリカン・デモクラシーの根っこの描写であり、日本の民主主義との違いが分かって興味深い。

 同時に、著者も書いているようにアメリカは人種、所得、政党、思想などの組み合せが非常に複雑で、かつ似た背景を持つ者が固まって暮す国ゆえ、高学歴・高所得の白人が多いレキシントンの事情と、他の州、他の都市の事情はまったく異なる。

 だからこそ著者はトランプの政治集会に足を運び、数千人の中低所得白人支持者に囲まれ、トランプ熱に浮かされての攻撃的な態度に居心地の悪い思いを敢えてする。予備選期間中はサンダースの集会にも飛び、そこでは「バーニー・ブロ」と呼ばれた若い白人男性の革命熱を目の当たりにしている。良くも悪くも強烈な個性を放つトランプとサンダースに挟まれ、ヒラリーの選挙キャンペーンはどれほど波瀾万丈となったことか。

 そして、派手な選挙選の陰にはコーク兄弟やウィキリークスのアサンジが暗躍していた。

 後半は著者がそれそれの候補者と社会背景を分析し、良く言えば「多様性」、悪く言えば「分断」が進むアメリカの未来を占う。

 つまり本書に書かれているのは「すでに終った話」ではない。もうすぐそこ、目の前に迫っている2020年大統領選の本格的なスタートを迎える前に「準備」として読めば、きっと役立つ一冊である。





同作の中で紹介されているアメリカのベストセラー『ヒルビリー・エレジー〜アメリカの繁栄から取り残された白人たち』J.D.ヴァンス

連載「ヒューマン・バラク・オバマ・シリーズ」
第15回「オバマ大統領が書いた絵本『きみたちにおくるうた―むすめたちへの手紙』 」+(バックナンバー)






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author:堂本かおる, category:トランプ, 19:35
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